義父が私の歯ブラシを!義実家との「当たり前」の違いから考えるパートナーとしての在り方#渡邊大地の令和的ワーパパ道 Vol.33
『産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』『夫婦のミゾが埋まらない 産後にすれ違う男女を変えるパートナーシップ学』(ともにKADOKAWA)など、夫婦のパートナーシップをテーマにした著書が話題の渡邊大地さんによる新連載! 令和における新たなワーパパ像を、読者のみなさんとともに考えます。
6月に最新の「男女共同参画白書」が公表され、「20代男性の4割がデート経験なし!」と大々的に報じられました。「政府関係者は危機感をあらわにする」などと書かれていました。そこで、我が家の良識の府こと“長女”(小4)に、この件の見解を求めてみました。
開口一番、「デートってなに?」とのこと。「デート知らないの?」と尋ねると、「なんかキスしたりするやつ?」と、いやらしい目で睨まれました。
「別にキスしてもしなくてもいいんだけどさ、好きな子と会う約束して遊びにいくやつ」
「遊ぶだけ?」
「……遊んだって勉強したっていいよ」
「それなら“遊びに行く”とか“勉強する”って言えばいいじゃん」
「そういう、好きな子と一緒に過ごすことをまとめて“デート”って言うんじゃんかよ」
「知らないよ、アタシは別に言わないもん」
「ああ、そうか……」
……「デート」そのものの存在が危うい。
果たして、男女共同参画白書のアンケートは、対象者全年代に「デート」を同じ意味で捉えさせていたのか疑わしくなってきました。そもそも、娘は「カップル」という言葉を知りません(当然「アベック」も知りません)。「恋人」について尋ねたら、「なにそれ?“カレカノ”のこと?」と言われました。娘のクラスでは、いわゆるカップルを「カレカノ」(男女のペアの場合、“彼”と“彼女”の意味)と呼んでいます。内閣府ご担当者様、お含みおきくださいませm(__)m
皆さん、こんにちは。渡邊大地です。今回も、「ワーパパ」とは何たるかを一緒に考えていきましょう!
初めて彼女の家に行き、取り残される
ぼくが妻と付き合い始めて、初めて実家にご挨拶に行ったときのことです。ケーキなんぞ手土産に持って緊張して伺いまして、お義母さん、お義姉さん、お義兄さん、お義姉さんの旦那さんに迎えられました(お義父さんは単身赴任で不在でした)。
自己紹介をして、リビングでケーキとコーヒーで談笑したりして、みんなでテレビを見たりしていると、なんとなくひとり部屋を出て、またひとり部屋を出て……とご家族が減っていき、気づいたら部屋にぼくひとりになっていました。妻(当時はカノジョ)さえもいないのです!
トイレにしては誰ひとりいなくなるのはおかしいし、これは一体どうしたことかと。とは言っても、初めて訪れたカノジョの家を探索するわけにもいきませんから、そのまましばらくリビングでひとりぼっちで過ごしました。
1時間くらい経ってようやくひとり、またひとりと部屋に戻ってきました。戻った妻に小声でどこにいたのか尋ねると「寝てた」と言います。なんと妻の実家では、客人がいようと、寝たいときに昼寝するという文化があり、家族全員が思い思いに昼寝していたのです。それ、カレシを家に招いたときもするかね!?
このほかにも、妻の実家の独自のル―ルには驚かされることしきりです。
今回は、そんな義理の実家や義父母のカルチャーショック、「普通」「当たり前」に対する認識の違いを紹介していきたいと思います。
ところで、今の妻の実家の話は、ぼくの本『夫婦のミゾが埋まらない』(KADOKAWA)の中で紹介しているエピソードなんですが、当然この中で、妻が感じたぼくの実家のカルチャーショックも描かれています。自分は「当たり前」に生まれ育ってきたものが、他人からしたらまったく理解できないということもあるわけで、家庭というのは本当に千差万別ですよね。
義父母との「当たり前」に驚愕! ギャップ3選
まずは、先ほど紹介した例のような、「ウチではこれが普通」というものに驚かされた例を紹介していきますね。
●「食事はそれぞれが勝手に……」K太さんの場合
妻とまだ付き合っていたころに、彼女の実家に行ったら、リビングで談笑している途中で、突然お義父さんがひとりで食事を始めました。「このあと、出かける用事でもあるのかな?」と思っていると、しばらくしてお義母さんもひとりで食事を始めました。少しお腹が空いてきたので、自分たちの分も用意してもらえないかなと期待しましたが、一向に出てくる気配はありません。そのまま夜になり、帰宅することに。あとで彼女に聞いたところ、彼女の実家では家族で食卓を囲む習慣はないらしく、それぞれお腹がすいたら自分で準備して食べるのだそうです。ぼくは結婚するときに、「ご飯は一緒に食べたい」とお願いしました。
●「お義父さんが私の歯ブラシを……」N子さんの場合
結婚後しばらくして、彼のご両親が我が家に遊びにきました。遠方から来てくれたので、一泊してもらうことになりました。夜、歯を磨こうと思ったら、私の歯ブラシが使われたような形跡があります。「おかしいな?」と思いましたが、気のせいだろうと思い、歯を磨きました。翌朝、お義父さんが平然と私の歯ブラシで歯を磨いているのを発見し、思わず叫んでしまいました。なんと夫の実家では、歯ブラシは共用だそうです。ショックでしばらく胃のムカムカが収まりませんでした。
●「保険金の受取人はまさかの……」T美さんの場合
前の旦那の家族の話。結婚したら旦那の実家でご両親と一緒に住むことになり、早速同居を始めました。すると、彼の実家で長らくお世話になっている保険屋さんがあり、そこの保険に入ってほしいと言われました。当時私はほかの保険に入っていたので「面倒だな」と思いましたが、仕方がないので契約していた保険を解約し、紹介された保険会社で新たに契約することにしました。驚いたのはそのあとで、旦那の実家では、保険金の受取人を必ず「家長」にするというルールがあり、私の保険も受取人がお義父さんになると言います。子どもが生まれたら、子どもの保険も同様になると言われました。そのほかにもいろいろと納得できないことがあったため、結局旦那とは別れました。
結婚して初めて気づいた違和感や、結婚してもしばらくは気づかなかったことなど、人の数だけ歴史がありますね。ここまでは、ご両親と接する機会に感じた「当たり前」ギャップを紹介しましたが、次は、ご両親の方から積極的に介入してこられる“厄介な”パターンです。
義父母が子育てに口出ししてきたパターン3選
ぼくの体験談では、子どもが生まれてから驚いたことと言えば、なんせ「初節句」でした。ぼくの実家はもともと、家族の行事に親戚を招くということを冠婚葬祭以外にはしなかったんですけども、妻の実家では、子どもの成長ごとの行事を親戚一同で祝うという習わしがありました。その洗礼が、第一子の初節句です。妻は3人きょうだいの末っ子で、ここでいう親戚一同とは妻の両親と兄家族、姉家族を指します。
さて初節句、親戚一同を食事にご招待し、みんなで我が子の成長を祝う、というものなんですが、食事とはどこかの食事処の懐石料理、または自宅でやるなら相応のパーティ仕様が求められます。
初節句の時期なんて、妻もまだ産後の回復途上だったので、無理はできません。でも、初節句は譲れないというわけで決行です。なにしろ、十人程度の食事ですから出費も激しい。子育てを始めてただでさえ出費の多さに驚いていたときにこれなので、しんどいな……と思ったものです(コロナ禍以降、この風習もなくなりましたが)。
このように、義理の両親が子育てについて一家言ある例を次に紹介していきます。
●「男子は祖父が命名」S子さんの場合
夫の家系は、男子が生まれると祖父が命名するという風習があります。しかも、代々決まった漢字一字を必ず入れることになっているので、夫も、夫の父も、祖父も、みんな同じ漢字が入っています。息子が生まれたときも、早々にお義父さんが名前を決めてしまい、夫や夫の親族は絶賛していましたが、我が子の名前は自分たちで決めたかったなと未だに恨んでいます。
●「雛人形は人数分買うように」C男さんの場合
妻の両親は何かと「子どもにはこうさせるべきだ」と口出ししてきます。最近困ったのは、雛人形についてです。我が家は娘が二人いて、長女が生まれたときに小さな雛人形を買いました。狭いマンションなので、これひとつで十分だと思っていたら、なんと次女が生まれたときに義理の母が「次女の分もお雛様を買いなさい」と言ってきました。場所もないし、お金もかかるので一度断ったのですが、「ひとりの子どもに一セットずつ雛人形を与えるのが当たり前だ」と言い張り、妻も根負けして2個目を購入しました。飾るのも仕舞うのも2倍場所をとるので、とてもストレスです。
●「子どもができたら共働きは認めない」A代さんの場合
夫の母は、「共働きゼッタイ反対」論者です。理由は「お母さんがいないと子どもがかわいそうだから」だそうです。妊娠がわかった時点で仕事を辞めるように言われ、根負けして退職しました。今は子どもを幼稚園に通わせていますが、私自身保育士の仕事をしていたので、近所の公園に保育士と保育園児が遊びに来ている姿を見かけると、保育士の仕事をしている先生たちがうらやましいなと思います。
「我が家の当たり前」を意見交換してみては
前回紹介した「パートナーの“当たり前”」と違って、義理の実家の当たり前については、話し合いで妥協点を見つけるというのは難しいですよね。保険金の受取人のエピソードを語ってくれたT美さんも、それを含む面倒ごとに疲れ、結果離婚していますので、義父母との付き合いがいかに大きなストレスを産む可能性があるか、よくわかるエピソードです。N子さんの歯ブラシの件や、S子さんの子どもの命名の件、A代さんの仕事に関わる件なども、尾を引きそうです。
最初に書いたとおり、我が家の当たり前と、パートナーの実家の当たり前は、「違って当たり前」。すべて我慢するのも違いますし、すべてに反発するのもしんどいですよね。
歯ブラシの件のように、突発的に起きてしまったことはいかんともしがたいのですが、不満の芽を小さいうちに刈り取るためには、我が家のように「お互いの実家でカルチャーショックを受けたこと」というテーマを設けて夫婦で意見交換してみるのがおすすめです。ショックの程度によりますが、パートナーを攻撃するのではなく、「あれは自分の生活の中にない習慣だったからビックリした」「理解してもらえなくて悲しかった」という視点で話す姿勢を忘れないようにしたいものです。
どうしても我慢できないことは、パートナーに相談するのがベストですし、相談された方は真摯に耳を傾けるのが、本当のパートナーというもの。解決はしなくても、お互いにストレスに思っているポイントがわかれば、配慮できる場面もあります。パートナーの実家の「当たり前」に思うことがあるならば、できるだけ芽が小さいうちに夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。
今回のまとめ
(文:渡邊大地、イラスト:村澤 綾香、編集:マイナビ子育て編集部)