パパの抱っこでギャン泣き、ママだと泣きやむのはママが好きだから?『ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』#4
3歳児神話や母性愛神話のような古い価値観に基づく情報ではなく、最新の科学的知見に基づいた育児情報を知りたい人へ。漫画コウノドリの取材協力医師であり、Twitterで最新の医療情報を発信する「ふらいと先生」こと今西洋介先生の書籍『ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)の試し読み連載をお届けします。
お母さんの抱っこでしか泣きやまないのは、お母さんが好きだから?
いいえ
お世話している時間が長い人の抱っこで泣きやむのでしょう。お互いの慣れが必要なのです。
お父さんの抱っこで泣きやまないのは、慣れが大きく影響していると推測できます。日ごろお世話をしているのがお母さんであれば、泣いているときの対応に慣れていますし、赤ちゃんもお母さんに慣れているでしょう。NICU(小児救急治療室)でも、新人の看護師さんは対応に慣れておらず、赤ちゃんがいつまでも泣きやまない光景をよく見ます。
いっぽうで、だれが抱っこしても泣きやまないときは泣きやまないということも覚えておきましょう。抱っこする人を好きとか嫌いとかいうことは関係ありません。だからお父さんが抱っこをして泣きやまないから「やっぱりお母さんが好きなんだよ」と赤ちゃんを受け渡すのは理にかなっていませんし、これを多くの人が知っていれば、赤ちゃんが公共交通機関などで泣き出したときに、迷惑そうな目を向けられることも減ると思います。
抱っこの慣れについて話を戻すと、お父さんが当事者意識をもって育児をしているか否かも関係しています。育児をしたい男性は増えていますが、それを阻むものが数多く残っているのが現在の日本社会です。とくに、長時間労働は問題です。6歳未満の子をもつ男性が1日150分の家事・育児時間を確保するには、仕事と通勤にかかる時間を9.5時間未満に収める必要があることを*1明らかにした調査もあります。男性が家事、育児に十分な時間を費やせる社会になれば、きっとお母さんと同じようにスムーズに抱っこできるようになるでしょう。
(答えた人 今西 洋介 新生児科医・小児科医)
https://www.ncchd.go.jp/press/2022/211018.html
(今西洋介・監修『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)
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書籍『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』について
ネットの掲示板やSNSで見かけたあの育児情報。
ママ&パパの親や近所の方など上の世代からの育児アドバイス。
育児界隈にはいつだって、「これってほんと?」と思うような情報があふれています。
その情報は正しいのか、いったい何が本当なのか……。
根拠のない育児情報にふりまわされて悩むのはもう終わりにしましょう!
Twitterフォロワー10万人強、正確な医療知識の発信に奮闘する”ふらいと先生”こと今西洋介先生待望の書籍が登場しました。
本書は、巷で言われる育児のうわさ・神話・迷信に対して、今西洋介先生をはじめとした医療、教育、社会福祉等の専門家たちが、最新の知見に基づいて科学的に答えていく本です。
・赤ちゃんは親を選んで生まれてくる
・産めば自動的に母性が湧き上がる
・帝王切開で生まれた子は体が弱い
・お父さんの出番は3歳から
・離乳食は手づくりがいちばん …
思えば、多くのうわさ・神話・迷信は、お母さんだけに育児の負担や責任を押しつけるもの。
本書の心強いのは、そのひとつひとつを「これってほんと?」と問い直し、専門家が「はい」「いいえ」と明朗回答、その理由もくわしく説明してくれることです。
苦しむお母さんを救いたい、と社会への問題提起を続ける今西洋介先生の思いが伝わります。
最新の科学的知見に基づいて育児をしたいママ&パパはもちろん、育児情報をアップデートしたい祖父母など、赤ちゃんや子どもに関わるすべての人におすすめの1冊です。
今西洋介先生(ふらいと先生)のプロフィール
新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師。作中の今橋先生のモデルでもある。NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会課題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。
Twitter:@doctor_nw
*1 国立成育医療研究センター
父親が家事・育児をする時間を確保するには、仕事関連時間を9.5 時間以内にすることが必要
https://www.ncchd.go.jp/press/2022/211018.html