こんなの欲しかった！ 子育てのありのままを肯定する『世界一役に立たない育児書』制作秘話

2020年から2021年にかけてウェブメディアで連載された「世界一役に立たない育児書」。子育て中のお父さんお母さんが、クスッと笑えて心を解きほぐされるような“育児のトリセツ”が、連載中からSNSで話題になりました。

著者は、自身も子育て中の漫画家・かねもとさん。育児書なのに【世界一役に立たない】というコンセプトはどのように誕生したのでしょうか？ 制作秘話を聞きました！

――かねもとさんが育児で「思い通りにいかないなー」と思ったのは、どんな時ですか？　特に印象に残っていることを教えてください。

かねもと　やっぱり子供の夜泣きがいちばん印象的で、最初にぶつかった壁でした。出産前に聞いていた寝かしつけ方法、背中スイッチの回避方法とか、何を試してもぜんぜんダメで……。結果的には成長を待つしかありませんでした。育児には、時期を待つしかないこともありますよね。

――「世界一役に立たない育児書」の原案を考え出して、Twitterに掲載されたのは、そういう体験からなんですね！

かねもと　そうなんです。育児書やネットで見るアドバイスを実践してみても、その通りにいかなくて落ち込んでいた頃、SNS上で同じような声を多く見かけました。「そうか。私だけじゃないんだ。育児は、なかなか思い通りにいかないよね」と納得。そして、いっそありのままの育児を描いただけの「世界一役に立たない育児書がほしい」と思いつき、画像を作ってツイートしたところ、たくさんの方に共感していただいて、とてもびっくりしました。

――これが最初だったんですね。その後、少し経ってからウェブマガジンでの連載を経て、今回、書籍が発売されたということですね。

かねもと　そうなんです。その後も「世界一役に立たない育児書」について少しツイートはしていたのですが、忙しかったこともあって、ほったらかしになっていました。それでも「〇〇しない子はダメになる」「将来〇〇な大人にするために親がやるべきこと」といったタイトルの育児書や記事を見かけるたびに脅しのように感じていて、「世界一役に立たない育児書」みたいな本もあればいいのにと思っていました。「いつかは自費出版したいな」と思っていたときに担当編集さんが声をかけてくれ、wezzyでの連載がスタートしたんです。同じ頃に白泉社の雑誌『kodomoe』でも同タイトルで記事を書かせてもらったことがあって、今回の出版にもつながりました。

――すごく多彩な内容で楽しく拝読しましたが、特に工夫されたことがあれば、教えてください。

かねもと　育児のあり方も、親子の個性も、みんなそれぞれに違います。だから、すべての人を傷つけない、すべての人に受け入れてもらえる表現を考えるというのは難しいことですが、できる限り誰が読んでも安心してもらえるようなテーマ探しを心がけました。

――最後に、「世界一役に立たない育児書」は、特にどんな方におすすめでしょうか？

かねもと　育児書と我が子・自分の育児をつい比較して「私の育児はダメなんじゃないか」「これでいいのかな」と思ったり不安になったりしている方に、ぜひ読んでいただけたら。また、子育て世代に厳しい風潮、また周囲からの価値観の押し付けに苦しんでいる人にも一度手に取ってもらえたらと思っています。こんなタイトルですが、小児科医の森戸やすみ先生に監修していただいていますから、安心してお読みいただけるのではないでしょうか。よろしくお願いいたします！

（マイナビ子育て編集部）