「蚊に刺された時は、なるべく早く薬を塗ればかゆくなりにくい!」小児科医が教える虫刺され対策
夏に困ることの一つが、蚊に刺されること。特に子供はかゆいだけで機嫌が悪くなりがちですし、掻きむしって傷になってしまうこともあります。小児科医の森戸先生に対応策を聞きました。
かゆみどめを塗るのはできるだけ早い段階で
夏は、子供の虫刺されが気になりますね。日本で「虫刺され」というと、ほとんどは蚊に刺された場合のこと。一般的によく見られるのがヒトスジシマカとアカイエカで、どちらもメスが吸血します。
特に子供は外遊びが多いために日常的に蚊に刺されやすく、かゆいからと手で掻きむしって皮膚に傷ができたり、そこに黄色ブドウ球菌などが入り込んで「とびひ」になったりしがちです。とにかく、蚊に刺されると、かゆくなるのが困りものですね。
乳児期には刺されて1〜2日後に症状が出る「遅延型反応」なので、すぐにはかゆがらない(かゆみも少ない)ことが多いでしょう。一方、個人差はありますが、幼児期から青年期にかけては、遅延型反応だけでなく、すぐにかゆくなる「即時型反応」も出ます。なお、青年期から壮年期には即時型反応のみ、老年期になると両方はっきりしなくなっていくことが多いでしょう。
このかゆみは、私たちの体が蚊の唾液成分に反応し、マスト細胞や白血球からヒスタミンやセロトニンなどの物質を放出することで起こります。ですから、かゆみどめを塗る場合は、これらの物質が放出される前に塗ることが大切です。手でたくさん掻いたり、時間が経ったりしてから薬を塗るのでは、あまり効果がありません。
虫刺されの薬は、市販薬で大丈夫です。子供の場合、メントール成分の強くない低刺激のクリームまたはローションタイプの塗り薬だとしみにくく使いやすいでしょう。皮膚を掻きこわしてしまうのが心配な場合は、パッチを貼ってもいいかもしれません。ただし、あまり小さな子だと、自分で剥がして口に入れてしまうことがあるので注意が必要です。
まれに蚊に刺された部分が大きく腫れ、熱を持つ場合があります。0歳児にはあまりなく、1〜2歳でよくみられます。大きく腫れた場合は、布で包んだ保冷剤などで冷やしたり、小児科または皮膚科を受診してステロイド外用薬を塗るとよくなります。また、必要に応じて抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方されることもあります。
そのほかのブヨやハチなどの虫に刺されたり、それらによって皮膚が大きく腫れたりかぶれたりした場合は、皮膚科を受診しましょう。虫刺されの対処法は、基本的に冷やすこと、ステロイド外用薬を塗ることですが、皮膚科の医師に診てもらったほうが安心です。
虫刺されの対処法にはデマも多いので要注意
蚊に刺された時の対処法については、毎年夏になるとSNSなどでデマが流れてしまいます。代表的なのは以下のものです。
・虫に刺された部分に爪先を押し付けてバッテンの跡をつけるといい
・50度のお湯やドライヤーで温めるといい
・セロハンテープを貼るといい
・塩で揉みだすといい
・石鹸を塗ると中和できる
これらはどれも何の根拠もありませんが、特に50度のお湯やドライヤーで温める方法は火傷をしかねないので危険です。決して実践しないようにしましょう。
そして、虫刺されには予防が大切です。虫の多いところでは白っぽい色の長袖・長ズボンを着て、虫除け剤を使いましょう。日本で認可され、効果が確かめられているのは、ディートとイカリジンという成分を配合した虫除けです。
ただし、ディートは生後6カ月までは使用しない、6カ月〜2歳未満は1日1回、2〜12歳未満は1日1〜3回までの使用と決まっています。イカリジンは、使用制限がありません。
一方、蚊取り線香などの殺虫成分は、防虫菊(シロバナムシヨケギク)に含まれている天然のピレスロイド、または類似成分です、ピレスロイドはあらゆる昆虫にとって有害なので、他の虫も避けられます。ただし、飼育しているカブトムシやスズムシ、金魚などがいる部屋では焚かないようにしましょう。