子どもの車内置き去り事故を防ぐためには? 対策を講じていない人は8割に上る
車内に置き去りにされた子どもが命を落とすという痛ましいニュースがたびたび報じられます。そうした事故は幼稚園や保育園の送迎バスだけでなく、保護者が子どもを乗せた乗用車においても起こり得るものです。置き去り事故に関するアンケート調査をもとに、どうしたらこのような事故を防げるかを考えてみましょう。
9月9日、岡山県津山市で2歳の男児が車内に取り残されて死亡するということが起きました。車を運転していた祖母は保育園に男児を送迎するはずだったが、男児を乗せていることを忘れて勤務先に出勤してしまったといいます。また、8月には福岡県北九州市の商業施設の駐車場で0歳の男児が車内に置き去りとなり、死亡しています。両親は別々に買い物中で、お互いに相手が男児を連れていると思っていたと報じられています。
このような事故はなぜ起きてしまうのか――、ドライバーを対象にした意識調査から浮かび上がってきたものがあります。
「子どもだけ車内」の実態
三菱貿易が行った「子どもの車内置き去り実態調査 2023」によると、一般ドライバーの91.6%が子どもの車内放置による熱中症が毎年のように発生していることを「知っている」と回答しました。事故の危険性の認知は広まっていることがうかがえます。では、子どもを車内に残した経験がある人は、果たしてどのくらいなのでしょうか。
子どもを残して車を離れたことはある?
質問:1年以内で子どもを残したまま車を離れたことがある(車内に子どもだけにした)
1年以内に子どもを残したまま車を離れたことがある人の割合は20.4%でした。また、そのうち1.9%の人が無意識的に子どもを置き去りにしていたこともわかりました。一歩間違えれば重大な事故につながっていた可能性があります。
子どもを車内に残してヒヤリとしたことは?
質問:車内に子どもを残してヒヤリとした(泣いていたり、具合が悪くなったりした)ことはありますか。その際にどのような状態になりましたか。
では、実際にヒヤリとした経験のある人はどのくらいでしょうか。
1年以内に子どもを残して車を離れたことがある人に尋ねたところ、「特にヒヤリとしたことはない」が60.9%、「子どもに気になる様子・症状はなかった」が21.7%で、子どもの体調に何事もなかった人が大半でした。
しかしその一方で、子どもに熱中症が疑われる症状があったという人が5.1%存在していることにも注目が必要です。事故に「絶対」はなく、以前は大丈夫だったからといって、次も大丈夫とはかぎりません。「大丈夫だった」という記憶が防止対策への意識の低下につながらないよう、注意が必要といえます。
置き去り事故はなぜ起こるのか
自身が子どもを車に残した経験のある人は一定数いることが先の質問でわかりましたが、「車内に子どもだけが残されることは、今後も発生する」と答えた人は80.8%に上りました。では、なぜそう思うのでしょうか。
車内に子どもだけ残されるのはなぜだと思うか?
質問:車内に子どもだけ残されることは、なぜ起こると思いますか。(複数回答)
一般ドライバーが考える子どもの置き去りが起きる理由の上位3つは、「保護者の意識が低いから」(60.5%)、「用事を済ませる間に子どもを見てくれる人がいないから」(35.9%)、「他のことに気を取られて子どもが車内にいることを忘れてしまうから」(22.3%)でした。
車内に子どもだけ残される状況としては、意識的に子どもを残した場合と、無意識的に子どもを残した場合の両方が考えられます。
「保護者の意識が低いから」と「用事を済ませる間に子どもを見てくれる人がいないから」は、意識的に子どもを車内に残す理由として挙げられているといえるでしょう。一方、「他のことに気を取られて子どもが車内にいることを忘れてしまうから」は意図せずに子どもを残してしまう原因として挙げられています。
無意識の置き去りに対して何か対策している?
質問:子どもを無意識に車内に残してしまうことを防止するための対策を行っていますか。
無意識に子どもを車に残してしまうリスクがあるなか、実際に対策をとっているという人は少ないこともわかりました。無意識の置き去りに対して、78.9%が「特に防止するために行ったことはない」と回答しています。
なお、行った対策として最も多いのは「子どもにクラクションの鳴らし方を教えた」でした。
「人は誰でも間違う」という考えで対策することが重要
本調査においては、「有識者からのコメント」として、NPO 法人 Safe Kids Japan 理事長 山中龍宏氏のコメントが掲載されています。
大きな事故が起こり話題になっても、人はほんの数年間しか覚えていることができません。また、保護者にとって子どもが小さく注意が必要な期間もそう⾧くはないために、子どもが成⾧すれば事故の危険性を忘れてしまいます。
だからこそ、保護者や保育者の注意を促すのみでは子どもの事故を完全になくすことはできません。人の不注意や無責任を非難することに終始せず、「人は誰でも間違う」という考え方に基づいて、社会や企業が基準づくりや製品開発を行い、事故が起きないように仕組み化することが重要です。(抜粋)
まとめ
車内に残された子どもが熱中症になるリスクは多くのドライバーに認識されている一方で、1年以内に子どもを車に残した経験のある人も2割に上りました。実際の事故にはつながらなかったものの、熱中症が疑われる症状が子どもに見られたという人もあり、「自分(たち)は大丈夫」という過信に陥らないようにすることが大切でしょう。
無意識に子どもを残してしまうということもあり得ます。「人は誰でも間違う」という前提に立って防止策を考え、子どもにクラクションの鳴らし方を教える、万が一、子どもを乗せていることを忘れても降りるときに気付けるよう、子どもの近くに荷物や貴重品を置くようにする、置き去り防止機能のある車に乗るなど、できる対策を実践しましょう。
(マイナビ子育て編集部)
<調査概要>
■子どもの車内置き去り実態調査 2023/三洋貿易株式会社
<子どもを乗せる乗用車運転者編>
調査方法:オンライン定量調査(人口構成比に合わせてウェイトバック集計)
調査時期:2023年5月26日(金)~5月31日(水)
調査対象:小学生以下の子どもを乗せて自動車を運転する全国の20~69歳のドライバー3377名