体罰を必要だと思う人は4割に上る、罰を与えてしまいそうな場面は「子どもに危険が生じる可能性があるとき」がトップ
令和元年に成立した「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」により児童のしつけで体罰を加えてはならないことが明記されました。では、実際に体罰に対する人々の認識はどうなのでしょうか? 厚生労働省が行った「体罰等によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査」をもとに見ていきます。
15~79歳を対象にした体罰の意識調査
「体罰等によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査」は、厚生労働省が体罰を用いない子育てを推進するという目的の下、実際の子育て現場における「体罰」の状況を把握するために行ったものです。全国の15~79歳までの男女、および18歳以下の子どもを現在養育中の親を対象にしたアンケートとなっています。
本記事では「全国の15~79歳までの男女」の回答を紹介していきます。
体罰を容認する人は4割
しつけなどにおいて、ときには体罰が必要だと思うかどうか質問した結果、「あまりそう思わない」と回答した人が最も多く28.1%でした。しかしながら、「ややそう思う」と回答した人も26.3%とその次に多く、「そう思う」(10.4%)、「非常にそう思う」(3.5%)を足すと、子育てにおける体罰を容認している人は全体の40.2%という結果でした。
また、男女で比較すると、女性より男性の方が容認度が高く、年代別で見ると40代以上が高い傾向にあり、30代以下の若い世代では体罰を容認する人の割合は低くなっています。
何らかの罰を与えるのはどのようなとき?
次に、子どもに体罰を含む何らかの罰を与えるのはどのような場面が考えられるかを尋ねた問に対しては、「子どもに危険が生じる可能性があるとき」という回答が最も多く55.9%でした。次いで「ほかの人に迷惑をかけてしまうと感じるとき」(47.2%)、「一度言葉で注意しても、行動が改まらないとき」(28.3%)、「子どもがなかなかいうことを聞かないとき」(16.6%)と続いています。
これらの回答を見ると、やはり子どもの行動を少しでも早く改善させたいと思ったときに、罰を与える場合が多いようです。
また、「イライラしているなど、気持ち的に余裕がないとき」(10.8%)、「親の威厳を示す必要があるとき」(5.9%)など、子どもの行動だけではなく、親の気持ちをそのまま子どもにぶつけてしまう状況もあることが伺える回答も見られました。なお、「どのような場合も当てはまらない」と回答した人は18.1%でした。
半数は体罰は子どもに悪い影響を与えると認識
身近な大人から受ける何らかの行為が子どもの成長と発達にどのような影響があると思うかを尋ねた結果、約半数の49.5%が「お尻や手の甲をたたくなど、子どもに物理的な罰を与えること」が子どもの成長と発達に悪い影響があると考えていることがわかりました(※1)。そのうち、「非常に悪い影響があると思う」と回答した人は23.9%に上っています。
一方で、「どちらとも言えない」と答えた人も36.9%と少なくありません。また、よい影響があると思う人は13.6%(※2)でした。
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※1 「どちらかと言えば悪い影響があると思う」「非常に悪い影響があると思う」の合計
※2 「どちらかと言えばよい影響があると思う」「非常によい影響があると思う」の合計
さらに、物理的な罰以外の罰も含めたしつけのパターンごとに、子どもの成長と発達への影響の認識についても調べています。
その結果、「自室やベランダ、押し入れに閉じ込めるなど、子どもの自由を大きく制限すること」、「怒鳴りつけたり、「だめな子だ」などと子どもが傷つく言葉を言うなど、子どもを否定的な言葉で心理的に追い詰めること」は子どもに悪い影響があると考える人が多く、それぞれ75.6%、81.1%でした。この数字は先ほど見た、体罰は悪い影響があると考える人の割合よりも高くなっています。
まとめ
子どもが言うことを聞かず、言葉だけではどうにも収まらないという場面もしばしば起こりがちです。しかし、体罰は子どもの成長や発達に悪影響を与えることが科学的にも明らかになっています[*1]。実際に今回の調査でも半数近い人が「体罰は子どもに悪い影響を与えると思う」と回答しています。しかしその一方で、体罰を容認する人も一定数見られました。体罰がエスカレートして虐待につながってしまう可能性もあります。子どもの権利が尊重される子育てのために、親への支援も含めて社会全体で取り組むべき意識改革として、国でも取り組みがなされています。
(マイナビ子育て編集部)
※画像はイメージです
調査概要
■体罰等によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査 事業報告書
調査地域:全国
調査対象:15歳~79歳までの男女、18歳以下の子どもを養育する者
調査時期:2020年11月15日~12月1日
有効回答数:各5,000サンプル(総サンプル数:8,823)