弟にわざとからみ、毎日殴り合いのケンカをする小2の長男。親にも逆ギレしてきて……<子育て心理カウンセリングルーム>
子育て中のママ・パパの悩みを臨床心理士・公認心理師に相談する『子育て心理カウンセリングルーム』。今回は、息子の態度についてのお悩みです。「小学校に入ってから親や弟に強く当たるようになり、手に負えない」というその訳は……。
弟にわざとちょっかいを出し、毎日殴り合いのケンカ。注意をすると逆ギレ…
小学校に入学してから、小学2年生の長男の口調や態度が荒々しくなり困っています。
弟に対しての態度もひどく、わざと相手をイラつかせるようなちょっかいをかけ、結果的に殴り合いのケンカになると、「こいつ(弟)が悪い!」と言い出します。明らかに長男の方がケンカの原因を作っているのですが、自分の非は絶対に認めません。それが毎日のこととなっています。
また、私たち親に対しても、注意をすれば逆ギレして「お前らが悪い!」と言ってきます。
学校では頑張っているようで、家ではその反動が出ているのだと思います。どのように長男と関わっていけばいいのかわかりません。
(33歳・女性・専業主婦)
■相談者の家族構成:自分33歳、夫33歳、長男7歳、次男6歳
■お困り度:★★★★★★★★★★
息子さんの気持ちはだいぶ荒れてしまっていますね。口調や態度に穏やかさが減り攻撃的になってしまうのは、もやもやとたまっているものを発散したいというサインかもしれません。
そのもやもやというものは、たいていの場合は疲れやストレスです。大人でも毎日頑張って過ごしていると、理由もわからず誰かに八つ当たりしてしまったり、周囲の人を困らせたりしてしまうでしょう。それと同じです。小学校低学年のお子さんですから、なおさら自分の状態を的確に言葉にするのは難しいでしょう。
相談者さんが素晴らしいのは、「学校では頑張っているようで」と、ちゃんと息子さんのことを認めてあげているところです。攻撃的な態度はその反動だと気付いていらっしゃるのですね。それがとても大切です。
ただ、「親は気付いている」ということが息子さんには伝わっていない可能性があります。ぜひ「あなたの日頃の頑張りはわかっているよ」というメッセージを、しっかり伝えてあげてください。
ポイントをいくつか挙げますね。
1、イライラした様子が見られたときは、とがめる前に「何がそうさせているのか」を想像する
「それはダメ、謝りなさい」という声掛けは、起きてしまったことに対して正そうと思うからですよね。しかしその前に、その理由を考えてあげることが大切です。たとえば、「あれ? そんなにイライラしてどうしたのかな?」「優しい笑顔の〇〇くんは、どこへ行っちゃったのかな」などと話しかけ、通常の様子とは違っていることに気付いているよ、心配してるよ、というメッセージを伝えます。
2、学校であったことなどを何でも話せる時間と雰囲気を作る
小学校での生活は、低学年でも、一日のうちで学習や集団行動の時間が増え、本人も気付かないほど頑張って疲れてしまうこともあるでしょう。テストなどで点数や順位がつくことで、劣等感や優越感といった感情も経験するようになる年頃です。
また、子どもというのは思ったことをストレートに口にしてしまうので、友人関係でも精神的な負担が色々と生じます。頭も心もただただ疲れて、訳もなく怒ったり泣きたかったりすることもあるでしょう。
日々息子さんが何を体験し、どんな気持ちになったのか、どんなことでも関心を向けてあげることが、息子さんの情緒の安定には大切になってきます。
3、兄弟間での葛藤を理解する
上の子は頑張り屋さんな分、下の子に嫉妬心を抱いてしまう傾向があります。自分が疲れていたりストレスを感じていたりすると、無意識のうちに心が“子ども返り”することがあり、年下の子と同等の感覚に戻ってしまう可能性があります。
「下の子は褒められるのに、自分は褒めてもらえない」というようなことが一つひとつ気になってしまい、嫉妬心が大きくなってしまうこともあるでしょう。頑張らなくても安心していられる下のお子さんの状況が、羨ましく感じてしまうのですね。しかしそういった気持ちは、潜在意識で起きていますので、本人にも気付けないことがあります。
攻撃的な行動だけを指摘して正そうとするのではなく、時々は“子ども返り”を許して、甘えさせてあげるとよいでしょう。小さかった頃のように膝の上に座らせて、頭を撫でながら褒めてあげたり、「大好きだよ、そのままでとっても偉いんだよ」などと、気分がよくなるような声掛けをしてあげましょう。
安心に包まれると、誰でも気持ちが穏やかになります。そのままで十分いいんだよ、あなたは悪いことはしていないよ、というメッセージをたくさん伝えてみてくださいね。
(文:臨床心理士 大岡 みほ/うららか相談室)