芸能人への誹謗中傷をした人の6割が「正当な批判・論評」だと思い、「誹謗中傷だと認識していなかった」
子どもも大人もSNSを使うのが当たり前の現代。便利なコミュニケーションツールである反面、SNSでの誹謗中傷が社会問題となっています。特に芸能人や有名人に対する誹謗中傷はたびたびニュースに。子どもがSNSでそうした投稿を目にすることもあるでしょう。そこで今回は、弁護士ドットコムが行った調査をもとにその実態を見ていきます。
人々と専門家をつなぐポータルサイトを運営する弁護士ドットコム株式会社が発表した「誹謗中傷に関する実態調査:2023年版」では、芸能人や有名人への誹謗中傷をしたことがある人にアンケートを行っています。その結果、誹謗中傷をSNSなどで投稿する人は、それが「正しい」と思っている場合が多いという実態が見えてきました。
誹謗中傷コメントを投稿したことがある人は3.5%
「SNS等で芸能人・有名人の誹謗中傷を投稿したことがあるか」を尋ねたところ、「ある」と回答した人は3.5%でした。数字だけ見ると少ないですが、たとえ1つの投稿でもそれが他の人によって拡散されることを考えると、決してその影響を低く見積もることはできないでしょう。
半数以上がX(旧Twitter)で誹謗中傷を投稿
では、そうした誹謗中傷はどのソーシャルメディアで投稿されているのかというと、主に「X(旧Twitter)」であることがわかりました。52.1%と圧倒的な割合を占めます。
そのほか、「匿名掲示板」が20.8%、「Instagram」と「ニュースメディアのコメント欄(Yahoo!ニュースなど)」が12.5%で上位となっています。
6割の人が「正当な批判だと思って」投稿
では、誹謗中傷をするのはなぜなのでしょうか? その動機について尋ねたところ、60.4%の人が「正当な批判・論評だと思ったから(誹謗中傷と認識していなかった)」と回答しました。次いで、「その人物が事件、不祥事を起こしたから」(41.7%)、「元々その人物が嫌いだったから」(33.3%)、「その人物の間違いを指摘しようとする正義感から」(29.2%)となっています。
多くの人は自分の投稿の暴力性に無自覚であり、むしろ、「正しいこと」「正義」だと思って投稿していることがうかがえる結果でした。
誹謗中傷の内容は「容姿や性格、人格」が8割超
誹謗中傷の内容はどのようなものだったのか、4つの選択肢を設けて尋ねた結果、圧倒的多数を占めたのは、「容姿や性格、人格に関する悪口」でした。83.3%に上っています。その他の選択肢の結果は、「虚偽または真偽不明情報を流す」が12.5%、「プライバシー情報の暴露」と「脅迫」が同数で10.4%でした。
具体的な投稿内容の一例
また、具体的な誹謗中傷の投稿としては、以下のような回答がありました。
✅「元アイドルの番組での態度や、顔の変化や体型について」(40代・女性)
✅「女優の不倫に絡めて人格を否定するようなコメントをしてしまった」(30代・女性)
✅YouTuberの生配信にて、臭いとコメントしてしまったこと。元々視聴者でそういったノリができていたため、しても問題ないと思った(10代・男性)
✅アイドル事務所の性加害問題で、事務所擁護をした女性タレントの発言が腹立たしく過去の経歴、素性など書き込みした(60代・女性)
✅女性タレントについて頭が悪い、図々しいと書いた(50代・女性)
✅違法薬物を使用して逮捕された女優の悪口を書いた(30代・その他)
こうして見ると、その場のノリや一時の感情、偏った正義感などで誹謗中傷を投稿してしまうことがわかります。
まとめ
投稿前に「面と向かって言えるか」を考える
SNSでの誹謗中傷が社会問題になっている昨今。とくに相手が芸能人や有名人の場合には、その投稿に共感する人(「いいね」をする人)がいることで承認欲求が満たされやすいという側面もあると考えられます。誹謗中傷には法的な定義などがありませんが、他人を傷つけたり勝手な思い込みやデマを流すことは、倫理にもとる行為にほかなりません。今回の調査結果によると、投稿者はあくまでもそれが正当な批判だと思って投稿している場合が多いようです。実際に誹謗中傷を行ったことがある人は3.5%とわずかでしたが、自分が意識せずに誹謗中傷を行ってしまう可能性はゼロではありません。投稿する前に「同じな内容を、面と向かって相手に言うことができるかどうか」を冷静に考えることが求められます。また、誰かの誹謗中傷を目にしたときに安易にリアクションしないことも大切でしょう。
(マイナビ子育て編集部)
調査概要
■誹謗中傷に関する実態調査:2023年版/弁護士ドットコム
調査対象:弁護士ドットコム®の一般会員1355名
調査時期:2023年11月22日~12月5日