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2024年04月01日 07:31 更新

こだわり強めな私が子育てで手に入れた「まいっか」。子どもの存在で世界が広がった/菊池亜希子さんインタビュー

モデル、俳優、文筆業など、幅広いジャンルで活躍する菊池亜希子さん。このたび刊行したエッセイ集『へそまがりな私の、ぐるぐるめぐる日常。』(宝島社)では、2人のお子さんを育てるママのリアルな日常もたくさん綴られています。子育てのこと、夫婦のこと、子育てを通して変化したご自身のことなどを聞きました。

2歳差の娘と息子はイヤイヤ期のタイプも全然違った

菊池亜希子さん

——現在、6歳の長女と4歳の長男のママである菊池さん。これまでの子育てで大変だったことは?

菊池さん(以下、菊池) 娘は言葉が出るのが少しゆっくりだったこともあって、2歳半〜3歳くらいのころ、言葉にして伝えられない感情が爆発することがよくありました。

発作のように地べたに転がってバタバタしてかんしゃくを起こすような場面もあって、「これがイヤイヤ期か!」と思いました。

足をじゅうたんですりむくほど暴れる娘が、何を言いたいのかわかってあげられないもどかしさも感じましたし、そういうときに私ではなく「パパがいい!」と夫を求めることもあって、それもつらかったです。娘が泣いているときには夫ではなく自分を求めてほしい、という自分のエゴに気づいて自己嫌悪になってしまうこともありました。

ちょうどそのくらいの時期に下の子が生まれたから、娘にはそのストレスもあったんだと思います。

菊池亜希子さん

——息子さんのイヤイヤ期はどうでしたか?

菊池 息子はずっと穏やかで育てやすいタイプだったんですが、4歳になった今がイヤイヤ期かもしれないと感じます。

言葉が出るのも早くていつもペラペラ隙間なくお喋りしているのですが、そのぶん自分の気持ちを正しく言葉で伝えたい欲求が強いのか、嫌なことがあると、「だって、こうやって、こうして、こうだったからイヤだったの!」と長い文章で延々と説明するんです。

娘のときは「そうだね、そうだね」と受け止めて共感してあげれば落ち着いていたんですけど、息子には同じようにはいかなくて。息子がなぜそれが嫌だったのかを、的確に理解してもらわないと納得がいかないみたいで、ちょっと面倒くさい(笑)。娘と息子で性格が全然違います。

きょうだいげんかは観察しつつ見守る

菊池亜希子さん

——きょうだいげんかすることはありますか?

菊池 毎日のようにしていますよ。寝る前に絵本を1人1冊ずつ読んであげるんですけど、読んでもらう順番でけんかしています。「どっちが先か」じゃなくて「自分が選んだ絵本を最後に読んでもらって寝たい!」と、1日の締めがどっちかを争っています(笑)。

2歳差だとよく一緒に遊んでくれるのはいいんですけど、けんかはしょっちゅうです。

——菊池さんはけんかの仲裁に入りますか?

菊池 あんまりしないです。私自身も子どものころは3歳上の姉とかなり激しめのけんかをして、すごくかたいものが飛んでくるようなこともあったんですけど(笑)、でも親が仲裁に入った記憶が全然ないです。けんかはたくさんしたけど、今は姉とはすごく仲良し。だから、子どもたちのけんかも見守っています。

むしろ「子どもっておもしろい生き物だなあ」って観察したり。そうするといつの間にか仲直りしているんですよね。でも、自分に余裕がないときには、感情に任せて叱ってしまうこともあります。

イライラをリセットしてくれる『サザエさん』

——親も感情的になってしまうことはありますよね。

菊池 幼少期の子どもがすることって、すごく“悪”みたいなことは何もないと思うんです。

わがままもイヤイヤも、振り返ってみればきっと全部が子どもが育つための種みたいなものじゃないかなって。子どものなかにある、純粋でふわふわしたやわらかい種を大事に育てれば花が開くのに、私の感情に任せて叱ってしまうと、その花がしぼんでしまうような後ろめたさを感じるんです。

完璧にはできないけど、イライラしても子どもにぶつけることはしたくないなと思っています。

菊池亜希子さん

——子育てでイライラしたとき、自分を落ち着けるためにどんなことをしますか?

菊池 いろんなことが重なると、爆発しそうになるときってありますよね。でも子どもに大きい声を出すのは嫌なので、私は鍵がかかるトイレか寝室に閉じこもります。

トイレには好きな本や漫画が何冊か置いてあって、特にどこから読んでもいい『サザエさん』とか『るきさん』のような漫画は一瞬で別の世界に入れるから、気持ちが切り替えられるんです。

イライラしたときに子育ての指南書のような本を読んでしまうと、できない自分に自己嫌悪になるだけでポジティブになれないので、できるだけ好きな音楽とか漫画とか、気分をぱっと切り替えられるものを摂取するようにしています。

夫婦で渡しあう「家事育児のバトン」

菊池亜希子さん

——夫婦がお互い機嫌よく過ごすために心がけていることは?

菊池 私と夫は2人とも末っ子でおしゃべりでマイペース。お互いになんでも気兼ねなく話せる相手なので、仕事から帰宅するといろんなことをたくさん話します。

子どもも話に入りたがって会話が進まないときは、夫が「パパはママに話したいことがあるからちょっと待ってー!」と子どもを優先しないことも(笑)。それもわが家らしさかなと思っています。

——夫婦で家事や育児の役割分担はありますか?

菊池 育児も家事もとくに分担は決めていません。お互いに両親が遠方で、夫婦2人しかいない状況ということもあり、共有しているカレンダーアプリでお互いの仕事のスケジュールを把握して、もはや言葉をかわさずとも自然と助け合えていると思います。

どっちかがゴミ捨てしつつ子どもを保育園に送るとか、洗濯機を回すから干すのはお願いね、とか、細かくバトンを渡しあっています。たまった洗い物にどっちが気づくか、みたいな攻防戦があったりもして……今日は私は食器を洗わずに出てきました(笑)。

菊池亜希子さん

——夫婦以外に、いざというとき子どもを頼む先はありますか?

菊池 近所に住むママ友をすごく頼りにしています。上の子を預かってくれたり、遊びに連れ出してくれたりして助かります。逆に、彼女の子どもをわが家で預かったりすることもあって、助け合っています。

今住んでいるところの大家さんのおばあちゃんの部屋にも、子どもたちがよく遊びに行かせてもらっていました。おばあちゃんも子どもたちをかわいがってくれて、お礼に子どもたちのフォトブックを渡したら、すごく喜んでくれて。

都心でこんなにあたたかいご近所付き合いができる機会は少ないからとてもありがたいですし、子どもたちにとっても、自分の家以外に居場所があることや、親以外にかかわる大人がいることは、とても豊かな経験になると思います。

子育ての「まいっか」で広がった世界

菊池亜希子さん

——菊池さん自身が子育てを通して変化したと感じるのはどんなことですか?

菊池 私はもともと好きなものに対するこだわりが強いタイプでしたが、子育てをしてみたら、ほとんどのことを「まいっか」と思えるようになったと思います。

以前だったら全然好みじゃなくて買わなかったようなアニメやキャラクターのアイテムも、いつの間にか部屋の棚にたくさん並ぶように。でも子どもと一緒にアニメを見ていると、「あれ、この子はかわいいぞ」という発見もあって、子どもがいるからこそ、私の世界も広がった気がします。子どもと一緒に楽しみを共有できるのもいいですよね。

逆に、子どもにも私の好きなものを見せることも。最近になって、私が大好きだった『アルプスの少女ハイジ』のアニメを娘に見せたら、すごく夢中で見ています。

子ども自身の好きなものを尊重するのも大事だけど、私という人間を作ったもののエッセンスも少し子どもに渡したいな、と思うんです。子どもたちが大きくなったときに「お母さん、これ好きだったな」と記憶の片隅に残しておいてくれたら嬉しいな、と思います。

菊池亜希子さん

——では、菊池さんご自身が機嫌よくいるためにしていることがあったら教えて下さい。

菊池 もともとマイペースなB型で1人が好きなタイプなので、自分1人の時間を持つことを大事にしています。

この間久しぶりに家族旅行に行ったんですが、その宿泊先から少し離れた場所で、早朝に開かれる蚤の市があったんです。どうしてもそこへ行きたくて、夫に子どもたちをお願いして、早起きして電車で出かけました。見知らぬ土地を1人で歩いたとき、なんだか「細胞が全部目を覚ました!」みたいな幸せを感じたんです。自分を取り戻せた、という感覚です。

母親になって四六時中子どもと一緒に過ごしていると、余計に自分1人の時間が貴重ですよね。忙しい日常生活でも、1人で喫茶店に行くなどして自分の時間を作るようにしています。

菊池亜希子さん/モデル・俳優・エッセイスト

1982年、岐阜県生まれ。モデルとしてデビュー後、映画やドラマ、舞台などで俳優として活動の幅を広げる一方、執筆活動にも注力。 主な出演作に映画『ぐるりのこと。』『森崎書店の日々』、『グッド・ストライプス』など。著書に『みちくさ』(小学館)、『またたび』(宝島社)、『好きよ、喫茶店』(マガジンハウス)などがある。2017年10月に第一子、2020年3月に第二子を出産。現在放送中のinterfm「スープのじかん。」(毎週土曜日9:30〜)ではナビゲーターをつとめる。4/9スタートのTBS火曜ドラマ「くるり~誰が私と恋をした?~」第1話にゲスト出演。5/11スタートのNHK土曜ドラマ「パーセント」にも出演する。

『へそまがりな私の、ぐるぐるめぐる日常。 』(宝島社)
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(撮影:松野葉子 取材・文:早川奈緒子)

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