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2024年03月04日 10:31 更新

三児の父 笑い飯・哲夫さんが地元に帰って子育てする理由/インタビュー【1】

2010年にM-1グランプリで優勝を果たしたお笑い芸人「笑い飯」の哲夫さん。芸人として活躍するかたわら、教育分野にも興味関心が高く、大阪にて学習塾を経営。私生活では昨年、第三子が誕生した哲夫さんに、子育てについて聞いてみました。

「去年、3人目が生まれたんです。まだまだがんばらなあかん」

笑い飯 哲夫
三児の父に!

——哲夫さんは芸人としてステージに立ちながら、テレビやラジオ出演、学習塾「寺子屋こやや」の運営、農業、そして子育てと非常に多忙です。現在はどのようなスケジュールで活動されているのでしょうか。

哲夫さん(以下、哲夫) 芸人としては主に劇場や営業、ラジオやテレビで活動していて、お寺巡りのロケなんかもあります。吉本の劇場はあちこちにあるので、いろんな場所で漫才をやっています。特に決まったスケジュールはないのですが、子どもたちの保育園の送り迎えやお風呂はできるだけやるようにしていて、寝る前にカルタやトランプで遊んだりもします。

——お子さんの年齢はおいくつですか?

哲夫 一番上の子が6歳、次が3歳。そして昨年の9月に3人目が誕生しました。奥さんは赤ちゃんに付きっきりなので、とにかく自分が家のこともやらないと回らないですね。

——第三子が! おめでとうございます。それは毎日にぎやかですね。

哲夫 そうなんです。3人目が生まれてさらに責任感が増しました。49歳ですがまだまだがんばらなあかんなって思っています。最近は上の2人の子をラジオの仕事現場に連れていって、収録中、現場のスタッフさんにお世話になりました。そんなに長い時間じゃなかったのに、終わって戻ると子どもたちがスタッフさんにあだなを付けたりして、すぐに仲良くなっていてびっくりしました。

——お父さんと一緒に仕事をしている人など、親や保育施設の人だけでないいろんな大人に触れることも、お子さんにとって良い影響がありそうです。

哲夫 まさにそうで、子どもだからといって子どもだけの世界にいるのではなく、多くの大人に会っていろんな考え方があるということに触れることは社会勉強になると思います。僕自身も小さいころから、両親以外に祖父母や近所の人など、さまざまな大人に触れてきました。子どもながらに「ここではこれを言うたらあかん」など、場の空気を読んで言ってはいけないことをほどよく理解しながら子ども時代を過ごしていたんじゃないかと思います。

春から故郷・奈良に家族で移住

笑い飯 哲夫
自分が育った環境で子どもたちを育ててあげたい、という哲夫さん。

——子育てに関して奥様と衝突することはないのですか?

哲夫 僕も妻も奈良の田舎で育って、比較的同じような感覚で子育てをしているので、衝突するようなことはないですね。お互い、子どもにはYouTubeを見せない、遊びと言ったら川遊び・土いじり・虫とりというような感覚が一致していて、ともすれば古臭いかもしれません。でも我が子にはそうした自然との触れ合い経験をある程度積んでほしいと思っています。この春から、故郷の奈良に移住して子育てをする予定なんです。

——新生活が楽しみですね。

哲夫 自分の育った環境で子育てができることは本当にありがたいです。両親もすぐ近くにいるので、子どもたちにとっておじいちゃん、おばあちゃんがすぐそばにいる環境はすごくいいと思います。ご近所さんも昔から知っている方ばかり。僕が東京や大阪で仕事がある時も安心です。

——慣れ親しんだ環境での子育てはリラックスできそうでいいですね。いろんな大人に触れる、自然と遊ぶ……お子さんたちを育てるうえで哲夫さんが大事にしていることは他にもありますか?

哲夫 実家が農家をしていたので、僕は子どものころから「ご飯粒は残さない」ということを厳しくしつけられてきました。これは我が子にも徹底しています。そして、叱るときと叱る、褒めるときはしっかり褒めます。

——「褒め方が難しい」という声もよく聞きます。子どもを褒めるときのコツはありますか?

哲夫 よその子と比較するのではなく、その子自身の成長をしっかり褒めてあげてほしいです。たとえば、うちの3歳の子は動作が遅いことがありますが、そんな時は「1,2,3……」ゆっくりカウントするんです。先月までは靴を履くのに5秒ほどかかっていましたが、今月になって3秒で履けるようになりました。「めっちゃ早なってるやん!」と褒めまくると、得意満面の顔を見せてくれました。ちょっとしたことでもいいんです。その子の変化を褒めることは本当に大事だと思います。

駆けていく我が子の後ろ姿を久しぶりに見た

笑い飯 哲夫
「子どもの考えることは、面白い!」

——昨年発売された哲夫さんの新刊『がんばらない教育』(扶桑社)ではさまざまな質問に答えていますが、人のお悩みに回答するときはどんなことに気をつけていますか?

哲夫 目線を配ることを大事にしています。これは相談を受けるときに限らず、漫才をするときも一緒なんですが、相方にしか目線を向けない芸人がたまにいるんです。そういう人を見るとがっかりします。自分はいま誰に向けて話しているのか、ということを意識すると、おのずと相手の目を見て話すと思うんです。でも、それができていない人が最近多いように思います。

——言葉を伝えたい相手をしっかり見るということは、親子の関係でも同じかもしれません。

哲夫 それに加えてお悩み相談の場合は、相手が求めていることは何なのかを判断し、適切な提案することを意識しています。でも芸人なので面白いこと、相手が笑顔になってくれるような話を無意識にしたくなってしまうんですよね(笑)。

——パパとして、ご自身のお子さんから質問されることもありますか?

哲夫 真ん中の3歳の子が最近は「なんで? なんで?期」なんでしょうね、どんなことでも質問してきます。たとえばこのあいだ、「どうして車は動くの?」と聞いてきたので、僕は「エンジンがあるから」と答えました。すると次は「エンジンがあるとなんで動くの?」と聞いてきました。しばらくは子どもが質問する、僕が答えるのやり取りを続けましたが、僕も八方塞がりになってくるので(笑)、最後は「自分で考えてみ」と提案すると、3歳なりの面白い答えを出してくるんですね。こういうやりとりの時間も大事にしたいなと思います。

——0歳児もいて、哲夫さんはまだまだ子育て世代ど真ん中ですね。

哲夫 よく「40代での子育ては大変でしょう」と声をかけられますが、僕自身は大変だとは思っていません。体力的にもまだ問題ないので、子どもの送り迎えも楽しんでいます。
 先日、保育園の帰りに子どもが自転車を降りて走りたいと言うので「車に気を付けて走るんやで」と言って自転車からおろしました。すると、しっかりとした足取りで走っていました。ここのところ我が子の走る姿を後ろから見ることがなかったので、「ああ、大きくなったな」と成長をつくづく感じました。
 人によっては、子どものやることに先回りしてなんでも「ダメ」と言ってしまう人もいるかもしれません。自転車から降りて走るなんて危ないし、早く帰りたいのに時間もかかるし、って。でも、しっかり注意してからやらせてみると、子どもの意外な一面が見えることもあるんですよね。

笑い飯 哲夫(わらいめし・てつお)

1974年奈良県生まれ。2000年に西田幸治さんと漫才コンビ「笑い飯」を結成し、2010年には『M-1グランプリ』で優勝。2014年より小・中学生に向けた格安補習塾「寺子屋こやや」の運営をスタートし、教育分野にも積極的に関わっている。著書に『がんばらない教育』(扶桑社)、『えてこでもわかる 笑い飯哲夫・訳 般若心経』(ワニブックス)など。0歳、3歳、6歳の3児のお父さん。

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(取材・文=安田ナナ)

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