尊敬してやまない母の強さ。「でも、妻にそういう母親像は求めません」/おばたのお兄さんインタビュー【4】
フジテレビアナウンサー・山﨑夕貴さんと結婚し、昨年長男が誕生したおばたのお兄さん。スポーツで培ったメンタルコントロール術は育児にも役立っているようですが、パワフルな母親の存在も大きいといいます。
夫を亡くし、きょうだいを亡くしても前を向いていた母
ーーおばたのお兄さんはブログでもたびたびメンタルコントロールについて書かれていますよね。長くスポーツを続けてきて、精神力が鍛えられたのでしょうか。
おばたのお兄さん(以下、おばた) それもあるかもしれませんが、もともとは母親の影響かもしれません。母はすごい苦労人で、夫を亡くし、自分の弟と妹も亡くして、それでもすごく前向きでパワフルな人なんです。宮沢りえさん主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』という映画があるじゃないですか。
ーー余命宣告を受ける主人公の物語で、さまざまな映画祭でいくつもの賞を受賞した作品ですね。
おばた あの作品のレビューを読むと、「実際にあんなに強い人はいない」という意見が多かったんですが、僕は「いやいや、うちの母ちゃん強いけどな」と思うくらいの母親でした。
おばた 中学生のときに父親が亡くなって、葬式は僕の14歳の誕生日だったんです。僕は当時から人前でモノマネとかをして笑かすタイプだったので、葬儀屋さんをめちゃめちゃイジったりして、家族を笑わせていました。ちょっとでもしんみりとした空気を吹き飛ばしたくて。僕がそういうふうになったのは、母の前向きな姿勢を肌で感じていたからだと思います。
ーーそういった影響力の強いお母さんがいると、自分の妻にもそのイメージを求めたくなりませんか?
おばた それはまったく別です。べつに母ちゃんと結婚するわけじゃないし、そんなことを妻に求めないですね。むしろ母の背中から教わったことはちゃんと自分の身になっているので、妻に求める必要がないように思います。
経験にないことは絶対に言わない
ーーお父さんが亡くなったとき、おばたのお兄さんはまだ中学生で。2人のお兄さんと妹さんもいらっしゃるんですよね。
おばた 当時、兄は大学生で「大学を辞めて働こうかな」と言ったら、母は「絶対に大学を卒業しろ」とつっぱねて。次男が「専門学校に行きたい」と言えば「行きなさい」と後押しして。
ーー急にシングルマザーになったのに、とても気丈ですね。
おばた パワフルですよね。父が死んだあと、母は父の会社を畳んで、そこで培ったコネクションを元に清掃会社を立ち上げるんです。身を粉にして働いている姿を見て、「俺は負担になっちゃいけないな」と。野球部だったんですが、泥だらけのユニフォームを手洗いしたり。洗濯機に入れる前に予洗いするだけでも、汚れ落ちが全然ちがうじゃないですか。そんなことも知って、おかげで家事スキルが身につきました。
ーー10代のうちからそんなふうに家事をやっていたんですね。
おばた それまでは僕はジャイアン気質で、野球部でも「なんで今のボールが取れないんだよ!」なんて言うタイプだったんです。でも母の頑張る姿を見ていて、徐々に「ごめん、俺がちゃんと投げなきゃいけなかったんだな」という意識に変わっていきました。
ーースポーツから得る精神力は変えがたいものだと思います。おばたのお兄さんは「メンタルトレーニングスペシャリスト」という資格も持っていますよね。
おばた スポーツの経験は、今、育児や結婚生活を送る上でめちゃくちゃ生きていますね。そういった経験があると、いろんな子育てアドバイスを請われることもあるのですが、僕は自分が経験していないことは絶対に言わないようにしているんですよ。
「5歳の子どもを育てているんですが、どうすれば」という話をいただいても、「いやいや! あなたのほうが親として絶対に先輩だから、僕は言えないです!」って思います。経験にないことを偉そうに言わない、これはポリシーとしてありますね。
まだ父親1年生なので、これからも精進していきます。
おばたのお兄さん/芸人・俳優
1988年6月5日生まれ、新潟県出身。2017年、『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』(フジテレビ系)で披露した小栗旬のモノマネでブレイク。日本体育大学出身で芸能界屈指の運動神経を誇り、芸人草野球チームやスキーの大会で活躍、『SASUKE』(TBS系)の常連でもある。SNSでは『もののけ姫』のアシタカなどジブリ映画の登場人物モノマネで人気を博しているが、2022年より舞台『千と千尋の神隠し』の青蛙役に抜擢。ミュージカル俳優としても頭角をあらわす。2018年に山﨑夕貴さんと結婚、2023年8月に第一子が誕生した。
(撮影:松野葉子 取材・文:有山千春)