パパは「困ったことがあったら言って」じゃなくて……日常から妻の話を聞いてほしい。くわばたりえさん×犬山紙子さんに聞く【小1の壁】
小学校に入ると、親子ともにさまざまな障壁に直面する「小1の壁」があるかもしれません。現在、中学生の長男、小5次男、小3長女の三児を育てるクワバタオハラのくわばたりえさんと、昨年「小1の壁」を実感したばかりで小2のお子さんを育てる犬山紙子さんに、「小1の壁」にともなう夫婦関係について聞きました。【全4回】の4回めです
困ったときだけではなく、日常的な会話を
ーー「小1の壁」では父親もフル稼働するご家庭、そうではなく母親にばかり負担がかかるご家庭、さまざまありますが、おふたりはいかがでしょうか。
くわばたりえ(以下、くわばた) うちは「小1の壁」に限らず平日はほとんどいなくて、ずっとワンオペでやっています。
犬山紙子(以下、犬山) 3人ワンオペで育てたんですか! こんなにお仕事忙しいのに。
くわばた めちゃくちゃですよ、ほんまに。ごはん作ってお風呂入れて寝かしつけて、家事やって。全部ひとりでやってたから。よう頑張っていたなと思います。だから全員が小学校上がってほんとうに楽になった。でも、夫はそのかわりに週末はめっちゃ家のことをやってくれます。遊んでくれるし、家のこと全部やってくれるのはありがたいですね。
くわばた 今回ね、「小1の壁」に関する対談をしてほしいとお話をいただいたとき、まず思ったのが「パパに読んでほしい」ということなんです。
犬山 そうですよね。
くわばた 日頃から妻の話を聞いてほしい。困ったときじゃなくて、日常的に。普段から何気ない会話をしておかないと、いざ困ったときに寄り添えないというか。だから「『小1の壁』に向けて困ったことがあったらいつでもパパに言ってこい!」じゃなくて、困ってなくても会話が大切かなと思います。
犬山 くわばたさんパートナーは仕事がないときはフルコミットするんですね。
くわばた めちゃくちゃありがたいですよ。夫は土日のほうが忙しいと思うもん。朝早く起きて洗濯物を何回も回して全部やってくれて。子どもと遊んで。
犬山 仕事が忙しいときは物理的にできないけど、「仕事がないときはやります!」という姿勢は、仲間だって思えますよね。
予防接種や年間行事を把握する=関心がある
ーー「平日は仕事が忙しいから、土日くらい休ませて」というパパもいますが、くわばた家は真逆ですね。第一子の小さな頃から、そういう役割分担だったのでしょうか。
くわばた いや、気づけばそうなってましたね。ありがたいですよ。「土日にソファでスマホをずっと見ている夫がイヤだ」という話をよく聞くけど、そんなのうちは考えれへん。ソファで横になっている姿なんて見たことないんですよ。今まで1、2回くらいかな。ずっと子どもと遊ぶか家のことをやっているか。あんまり献身的だから「浮気してんのかな?」って思ったくらい。
ーー罪滅ぼしというか、取り繕っているのかと思ったんですか(笑)。
くわばた そう、浮気がバレへんように一生懸命尽くしてくれてるのかなって思うくらい、やってくれています(笑)。
犬山 でも、そもそもはくわばたさんが平日の5日間をすごくがんばっていらっしゃっているわけで。その姿を見ているからこそ、パートナーもがんばれるんですかね。
くわばた でも普段もね、たとえば子どものスケジュールを把握してくれている。保育園の頃、予防接種とか全部私が連れていっていたんですが、夫は帰宅すると「今日、予防接種の日だったよね。行ってくれてありがとう」と言ってくれるんですよ。カレンダーに書き込んであるのを、ちゃんとチェックしているんです。
犬山 忙しいとおろそかにしがちなことをきちんと!
くわばた 把握していないと「今日、注射行ってきたんだ」「あっそう」で終わっちゃうじゃないですか。年間行事表も把握していて、子どもに「もうすぐ文化祭だね」「今日は身体測定があるんだ」とか言うんです。そういうことをパパが知ってくれてるのって、いいと思うんですよね。
逆に、関心を持たないパパはなんでなんですかね。自分の子どもなのに。かわいいのに。
ーーそうしたことに関心を持って「やるぞ!」というやる気のあるパパも増えてきていますよね。
くわばた そうなんですよ。これを読んでくれる人は特にそうでしょうね。読まない人が子どものスケジュールを把握しないパパなんだろうけど、そういうパパにこそこの記事を読んでほしい!
「夫とは仲良くなる一方です」
ーー犬山さんの家も劔さんがいろいろと家事をやっているんですよね。
犬山 そうですね。家事はどちらかというと夫のほうがやっていて、できるだけ「お互いの仕事量」を同じくらいにするようにします。外で働いている時間と、家で家事をやる時間、原稿を書く時間、全部ひっくるめての「仕事量」で、お互いに同じくらい寝られて、同じくらい自分の時間が持てるーーみたいなのを指標にしています。
毎日そこを合わせるのは難しいので、一週間を通して同じくらいちゃんと休めていたら、お互いにいいかな、と。そんなふうに生活していると、夫とは仲良くなる一方なんです。恋愛のドキドキではない「好き&信頼」がグングン上がっている感じです。
今日も保護者会があって夫が出席しているんですが、むしろ私が「あ! 今日だっけ!」という感じのことも。親は「子どもの友達の名前を2人言えるか」がひとつのバロメーターだというのを見てから、なるほど、と思って参考にしています。それはつまり、子どもの話をちゃんと聞いているか、ということにつながるんです。
くわばた なるほど、たしかにな。
犬山 保育園はクラスがずっと一緒だけど、小学校は学年ごとに変わるから、新しい名前が出てきたことに気付けるかどうかって、子どもに関心を持って子どもの話を聞いているのかにかかっているんですよね。だから妻の話を聞く、というのも同じことだと思います。
ーー犬山さんのお宅では、いつから分担の取り決めをしていたんでしょうか。
犬山 お互いフリーランスだから、取り決めがないとわちゃわちゃなっちゃうかなと思って決めました。彼はそもそも「女性が家事育児をするものだ」とは思っていないので、結婚当初は「私が家賃や生活費を全部出すから、家事をお願いします」と分けていました。だけど、子どもが生まれてからもそれが続くと、夫にめちゃくちゃ負担がかかると思ったんです。それで一度取り決めを見直して、「お互い同じくらいに休むという“トントン”がいいかもね」となりました。
くわばた ほんとうにいろんなやり方がありますね。いまは仲良くなる一方やねんな?
犬山 そうですね。もちろんまったくぶつからないわけではないですが、土日に一緒に自転車ででかけるのがめっちゃ楽しい! みたいな状態です。
「尊重して傾聴する」が、危機を乗り越える秘訣
ーーくわばたさんの家はどうですか?
くわばた 365日あれば仲が悪い時期もいい時期もありますね。1年間ずっと「大好き!」というのはないです。「なんか腹立つな!」というときもあるし。
犬山 うちは私のほうがそう思われていそう(笑)。ずっと「最高!」というのはないですからね。
ーー離婚することが悪いことではありませんが、ボタンのかけ違いで離婚に向かう夫婦とそうでない夫婦、どこに岐路があるのでしょう。
犬山 私の友達の中には離婚してからめちゃくちゃイキイキしている子がたくさんいて、離婚は悪いものではないし、「バツイチ」という呼び方も違うような気がしていますが、私自身はいまのところ、夫が私のことを尊重してくれる人なのでずっと仲良くやっていきたいなと思っていて。でも、夫婦に壁は絶対現れるとも思うんです。だから、いろいろな人にどうやって壁を乗り越えたのか聞きまくったんですよ。たとえば、不倫騒動を経験したご家庭や、家事分担を全然しないご家庭とか。
ーー『週刊SPA!』(扶桑社)の連載企画「他人円満」ですね。『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』として書籍化もされていますよね。
犬山 それです。連載の中でいろいろ聞いて、結局、さっきくわばたさんがおっしゃったように「ちゃんと話ができるかどうか」なのかなと。しかも単に話すだけじゃなく、相手を尊重していなければ、いくら話をしても、それは話をしているうちには入らないんですよね。
だから、ちゃんと自分たちはチーム・味方同士だと思って情報が共有されていて、お互いに相手の話を最後まで傾聴するかどうか、お互いにどうしたらいい感じになるのかーーを、考えられることができるふたりは、危機的ななにかがあったとしてもふたりで一緒に乗り越えられるような気がします。逆に、どちらかが意見を尊重しない夫婦は、たいした何かがなくても離れるか、逃げたほうがいい場合が多くあると思います。
くわばたりえさん/お笑い芸人
1976年3月24日生まれ、大阪府出身。2000年に相方の小原正子さんとお笑いコンビ「クワバタオハラ」を結成。2009年に会社員男性と結婚。4月から中学2年生の長男、小学5年生の次男、小学3年生の長女の3児の母。ただただしゃべりながら料理を作り、子どもとの食卓を映す公式YouTubeチャンネル『バタやんちゃんねる』が登録者数40万人を越えた。東野幸治さんが「芸能事務所を開くなら、ママタレの筆頭としてくわばたをスカウトしたい」と絶賛。
犬山紙子さん/イラストエッセイスト
1981年12月28日生まれ、大阪府出身。2011年、女友達の恋愛模様をイラストとエッセイで書き始めたところネット上で話題になり、マガジンハウスからブログ本を出版。
『ドデスカ!+』(メ〜テレ)、『ピタニュー』(広島ホームテレビ)、『newsランナー』(関西テレビ)などでテレビコメンテーターとしても活動。『プレバト!!』(TBS系)では俳句などで才能を発揮。2014年にミュージシャンで漫画家の劔樹人さんと結婚。4月から小学2年生の長女を育てる。2018年にボランティアチーム「#こどものいのちはこどものもの」を発足した。
(撮影:松野葉子 取材・文:有山千春)