育休を経て仕事の勘を戻すまでは大変。それでも圧倒的にメリットの方が大きかった! #男性育休取ったらどうなった?
育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は世間的に男性育休が一般的ではなかった時代に、2回の育休を取得したパパとパートナーのママにお話を聞きました。
パパが育休を2回取得した石川さんファミリー
今回のパパ
石川剛司さん/38歳/株式会社ファンケル
●ご家族
妻:朋恵さん/38歳/幼稚園教諭(パート)
長女:知菜ちゃん/6歳
長男:太一くん/3歳
※お子さんの名前は仮名です。
●石川家のパパ育休
長女誕生時の2017年8月に1カ月の育児休業を取得。その後、長男誕生時の2021年4月から9月末にかけて2回目の育休を半年取得して、復帰した。
剛司さんの現在のタイムスケジュール
2017年に率先して男性育休を取得した社内のパイオニア
――剛司さんは2回育休を取得されたそうですね。一度目は2017年、そのころは周囲にも取得者がいなかったのではありませんか?
剛司さん そうですね。弊社は女性社員の割合が多く、女性社員の産休・育休はほとんどが取得して復帰し、仕事を継続する仕組みが早くに出来上がった企業です。一方男性社員には、子どもが生まれたら付与される配偶者支援のための有給休暇があり、その仕組みは多くの社員が活用していましたが、男性の「育児休業」に関しては、僕が取る10年程前に1人いたくらい。申請書のフォーマットもすべて女性社員向けが前提という状況でした。
現在は会社としても男性育休の取得目標があったり、経営層が推進する方向で何をしていくかという話をしたりしていて、その変化をすごく肌で感じていますが、2017年当時は会社としても特に目立った取り組みをしていたわけではなかったんです。
ただ、僕自身はもともと家庭や子育てを大事にしたいという想いを持っていたことに加え、新入社員研修時の説明会で「男性でも育休取得が可能」と説明を受けたことが頭に残っていて、子どもができたときは育休を取ろうと自然と考えていました。また、第一子の育休がとてもいい経験になったので、第二子以降も必ず取ろうという気持ちでしたね。
――初めての育休を取得する際は、夫婦で話し合いをしましたか?
朋恵さん とくになかったです。私から育休の取得をお願いしたわけでもありません。突然「育休を取る!」と夫から話があって、「取れるんだなぁ」と思った覚えがあります。
剛司さん 僕の中では早くから決めていたので! 上司にも妻が安定期に入って、その報告をする際に一緒に育休のことも相談しました。
――どのような反応でしたか?
剛司さん ありがたいことに前向きな回答でした。1回目は1カ月取得しているのですが、「1カ月で足りるの?」と上司に聞かれたくらい。お子さんのいる女性上司だったので、自分の経験からそう声をかけてくれたようでした。当時の僕は育休取得の意向を伝えるのに少なからず緊張していたので、その言葉にとてもホッとしましたね。同じ部署のほかのメンバーもお子さんのいる年上の方が多く、引き継ぎなどもとても協力的に応じてもらえました。
――うれしいですね。2回目は半年と長期間の取得ですが、そのときも同じような反応だったのでしょうか?
剛司さん はい。同じく反対などはまったくなく、ポジティブな反応でした。相談したのは今でも上司の、年下の男性ですが、半年という長期間の申し出にも「世の中的な働き方の流れからしたら当然のことだし、いいね!」という感じでしたね。
育休を通して得た経験が、仕事面でもプラスに!
――育休取得を伝えたときの上司の反応はよかったということですが、それでも仕事を離れることに不安はありましたか?
剛司さん ありました。ただ、1回目は育休自体が初で、仕事から離れることも初めてだったので、具体的にどう業務に影響が出るのかは想像しきれず、感じていた不安もなんとなく漠然としたものだったと思います。
2人目のときは長期で仕事から離れる分、評価などにも影響が出ないか心配していましたね。結局、その心配は杞憂となり、評価的なところでの不利益はまったく被りませんでした。
一方で仕事の勘を戻すのにはそれ相応の時間がかかったなと思います。もともと僕は経営企画部という部署に所属していて、主に会社全体の数字面を見るのが仕事です。各部署の動向やその動きが業績にどう影響するかなど、さまざまなことを把握しておかないといけない立場なのですが、復帰直後は半年分の情報がすっぽりと抜けていたので、一から追わないといけない。これがまあまあ大変で……。
完全に仕事の勘を戻すには、だいたい休んだ分の半分の時間が必要だと感じました。僕の場合は1回目に1カ月休んだので、そのときは元のペースに戻るのに半月、2回目は半年休んだので、戻るのに3カ月くらいかかった気がしますね。
――それでも育休を取得したことはよかったですか?
剛司さん もちろんです! 家族面ではもちろんですが、仕事にもいい影響がありました。最初に言いましたが、弊社は女性社員が多い会社なんですね。時間の制約がある中で働きながら子育てをしている方がたくさんいます。 そういった社員の苦労を自分ごとのように共感できるようになったのがまず第一によかったですね。
また、メンタルが強くなったとも思います。育休中、赤ちゃんに対応していると、理不尽なことがたくさん起きるんですよ。明らかに眠そうでグズグズ泣いているのに、全然寝ないとか。苦労して離乳食を用意したのにまったく食べないとか。話しても通じるわけもなく、育児は思い通りに行かないことばかり。その苦労に比べると、仕事は理不尽なことが起きても、まだ大人と話して通じ合える分だけましだなと(笑)。そう思える環境を経験できたのは、育休を取得してよかったことの一つですね。
パパが家にいることが、上の子の安心感につながった
――仕事面での育休の成果を聞きましたが、家族面ではどのようなことが具体的によかったでしょうか?
剛司さん 「子育ては2人でするもの」という感覚が最初に得られたのは大きかったですね。育休中にしっかり経験値が詰めたおかげで、今は妻とお互いが求めるものが自然とわかる、いわゆる阿吽の呼吸ができるようになりました。例えば、片方がおむつ替えのタイミングに気づくと、もう片方が紙おむつやおしりふきを持ってくるとか。これが育児に慣れていないと、簡単なお願いごとをしたときでも一から説明してもらわないといけないので、依頼するほうは大変ですよね。
――朋恵さんはいかがですか?
朋恵さん 授乳以外のことは家事・育児ともにすべて任せる事ができたので、助かりましたね。赤ちゃんの寝かしつけなんて、夫がコツをつかむのが早くて、私よりも上手だったくらい。
それにちょうど2人目の男性育休は4月スタートで、上の子が幼稚園に通い出したばかりのタイミングだったんですよ。当時の娘は初めての幼稚園、初めてのお友達との関わりといったところで、不安が強くなってしまったようで、幼稚園ではうるうると涙を浮かべていたという話を先生から聞きました。
次第に落ち着いたのですが、そういった娘が不安定なタイミングで夫婦がそろってサポートできたことは本当によかったと思います。今もですが、子ども達は2人ともパパが大好きで、いてくれるだけですごくうれしいんですよね。当時の娘もパパがいつもいる安心感があったんじゃないかな。
――きっとそうでしょうね。ちなみに娘さんは弟くんが生まれたことに対してはどのような反応でしたか?
朋恵さん 幸い「親を取られた」って方向にはいかなかったですね。とても可愛がってくれました。
剛司さん お世話も進んでやってくれていましたね。ミルクをあげたりとか、紙おむつを替えたりもしたかな。親としてもそれは子どもの成長を感じ、とても嬉しかったですね。
パパの作る唐揚げが最高においしい!
――「先ほど育休中に家事も育児も積極的にやって助かった」という話を朋恵さんがされていましたが、お子さんが生まれる前から剛司さんは積極的に家事をしていましたか?
朋恵さん 実はそういうわけでもなく…。もともと私が家事をするのが好きなほうなので、先にやっちゃうんです。だから出番がなくて……。だけど当時から唐揚げとかハンバーグとか、得意料理をふるまってくれることはありました。
――唐揚げがお得意なんですね! でも普段、朋恵さんが家事をメインでやっていたら、育休中の剛司さんの働きぶりにはとても驚いたのでは?
朋恵さん それも驚きはさほどなかったかも? 事前にすごく張り切っているのを見て感じていたので。ただただよくやってくれているな、ありがとうという気持ちが大きかったです。とくに私は寝不足だとダメなタイプなんですよ。夜中に起きていると朝が起きられないし、日中急に眠気が襲って来ることも。私が眠いときに赤ちゃんを見てくれる人がいるというのは、すごく安心しましたし、夫のおかげで気兼ねなく休めました。
――現在の家事・育児分担はいかがですか?
剛司さん 出社の日はどうしても時間がない分、妻に任せることが多いですね。その分、週1くらいの在宅勤務の日は子どもの送り迎えなど、できることをするようにしています。休日の育児は半分半分です。
朋恵さん 休日は頼んだら、料理も作ってくれますね。まあ、唐揚げですけど……!
――そこはやっぱり唐揚げなんですね(笑)。
朋恵さん 揚げ方がうまいんですよ。頼むと夫も「いいよ〜」と必ず作ってくれるし!
剛司さん ねぇ、さっきから唐揚げの話ばっかり! 作る料理は唐揚げだけじゃないはずだけど???
朋恵さん あはは! ほかも上手ですよ(笑)。でも、唐揚げがね。とくにおいしいんです!
(取材・文:江原めぐみ、イラスト:ぺぷり)