「職場でも育児の話をオープンにしています」2カ月の育休から復帰したパパの働き方#男性育休取ったらどうなった?
育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は里帰りなしで1人目の産後も2人目の産後も2人で乗り切ったご夫婦にお話を聞きました。
パパが2カ月の育休を取得した高橋さんファミリー
今回のパパ
高橋貞行さん/37歳/株式会社電通デジタル勤務
●ご家族
妻:好美さん/36歳/看護師
長男:佳志くん/5歳
長女:花瑠ちゃん/8カ月
●高橋家のパパ育休
2023年8月に長女が誕生。出産直後から2カ月の男性育休を取得(うち出産前日は有給休暇、出産当日を含む3日間は企業の出産時休暇を利用)。ママは育休中で、取材日の翌週から復帰の予定。貞行さんは普段、在宅勤務が多い。
貞行さんの現在のタイムスケジュール
1人目のときも2人目のときも実家のサポートはなし。夫婦2人で乗りきった
――貞行さんは2人目の花瑠ちゃんが生まれたタイミングで育休を取得されたそうですね。
貞行さん はい。出産日から約2ヶ月間の育休を取得しました。娘は帝王切開での出産だったため、妻の入院期間が1週間以上ありました。その間の息子の世話や家のこと、いろいろな手続きをするのに、出産のタイミングからお休みが欲しかったんです。
さらに、退院後の妻の体調を考えると不安がありましたし、何よりいちばん大変と言われる新生児期を家で見るのが初めてで、備えたくて。というのも、息子のときは予定日より2カ月早く生まれ、しばらくはNICU(新生児集中治療室)での入院生活が続きました。なので、生まれてすぐの新生児期間は家でお世話することがなかったんです。
――そんなことがあったんですね。息子さんが生まれた当時もすごく大変だったのでは?
貞行さん そうですね。実は早く生まれたことに加えて、当時、引っ越しも重なってしまって……。
好美さん もともとは私が産休に入って転居する予定だったのが、産休入りの直前に破水をして出産になったんです。
――それは大変でしたね。
貞行さん この家に引っ越して来たのが妻の退院の翌日。僕の仕事もあったし、転入出の届け出や出生届など、役所に行く回数も多くて。もちろん、出産した妻はとても大変だったのですが、僕もバタバタで当時の記憶がほとんどありません(苦笑)。
――最初の出産も2回目の出産も里帰りは予定になかったのですか?
好美さん はい。我が家は夫婦ともに地方出身で、親も高齢なので、頼ろうとは考えなかったです。こちらでの生活に慣れていますし、こちらに友人もいますから。一度目も今回も里帰りは考えませんでした。
――息子さんの出産のとき、男性育休の取得は……?
貞行さん していません。息子が生まれたのが2018年ですが、当時は世の中的に男性が育休取得するのは珍しかったと思います。一応、妻に「どうする?」と聞いた気がしますが、「取らなくていいね」という話になりました。
好美さん 私の職場など、医療関係者ではすでに取得する人もいましたが、そのほかの職種ではあまり聞いたことがなく、夫が育休取得するイメージがあまりわかなかったですね。
――今は男性の育休取得者がだいぶ増えましたよね! 息子さんが生まれた2018年と娘さんが生まれた2023年で時代の変化を感じますね。
子育てのことはオープンに。育児をブラックボックスにしない
――今回の男性育休はいつ会社に伝えたんでしょうか?
貞行さん 妻が妊娠して比較的すぐに伝えました。ちょうど同じタイミングで部署異動の話が出まして、異動前のマネージャーとの最後の会話と異動後のマネージャーとの最初の会話が育休の話でした。
前の部署のマネージャーは息子が早く生まれたことや、普段から僕が親に頼れず夫婦2人で育児をしていることも知っていたんですね。なので「2人目が生まれるならそれは休まないとね」とポジティブに声をかけてもらいました。
また、新しい部署のマネージャーも育休取得に対してとても好意的でした。僕が休むことでどうしても業務に影響が出てしまうので、少し申し訳ない気持ちで伝えたのですが「新しい部署のメンバーの中にも子育て中の人はいるし、ガンガン取っちゃってください。子どもとの時間を大切にしてね」と言ってもらえて。ありがたいことに仕事の引き継ぎをお願いできる方もすぐに見つかり、スムーズにバトンタッチすることができました。
ーー現在は子育てと仕事を両立しているわけですが、仕事を進める上で大切にしていることはありますか?
貞行さん 同僚や上司に子育てをしていることをオープンに話すようにしています。会社側から見たときに子育てをブラックボックスにしないように気をつけないとと思っているんです。
例えば、子どもが保育園を早退しなければいけない場合、病院で働いている妻ではなく、リモート中心の僕のほうがお迎えに行くことが多いです。会議があるのに突然子どもが発熱して保育園から連絡が来ることもありますよね。そうなるとやはり、看病のため、不参加を申し出たりスケジュールを再調整する必要が出てきます。僕が共働きで子育てしていると知らない人や、そもそも発熱時に保育園に子どもを預けられないことを知らないメンバーがいたら、「予定していた会議をリスケって、なんだよ」と不満に思うことがあるかもしれません。
でも、僕の家庭環境を事前に知っておいてもらい、子どもがどういう症状か、「この時間は通院する」「この時間なら稼働できそう」など具体的な情報も伝えると、感じ方が変わってくると考えています。仕事を投げ出したいわけではなく、子どもの体調不良という緊急事態を建設的に乗り切りたいので、周囲の理解を得るために子育てをオープンにすることは大切だと実感します。そのおかげか、急ぎのミーティングを組むときでも、夕方~夜の忙しい時間を避けてもらえたりして、ありがたいですね。
父子2人でのお留守番もスムーズに
――育休の話に戻りますが、貞行さんが育休を取得してよかったことはどんなことですか? まずは好美さんから教えてください。
好美さん 夫が終始関わってくれることはやはり精神的な支えになりました。あと、ごはんを作ってもらえたのがありがたかったです。
――育休を取得して夫婦の関係性は変わりましたか?
好美さん うーん……どうでしょう? 関係性は変わらないかも。普段からある程度言いたいことを言って意思疎通できているほうだと思うので(笑)。
貞行さん そうですね。長男のときの経験が2人ともあるので、育休が夫婦関係に影響を及ぼしたことはないと思います。ただ、僕は家族それぞれをサポートする余裕ができたので、育休を取得できてとてもよかったです。
もしも育休を取得せずに仕事をしていたら、生活が成り立たなかったはず。とくに入院中は息子と2人だったので。もちろん、息子は日中、保育園に行っているんですが、行く前の準備や帰宅後の対応も全部一人でしないといけないですし、息子のいない間に家事をしたり、妻と娘に会いに入院先に行ったりと、思ったより余裕がありませんでしたから。
――息子さん、ママを恋しがって寂しがったりしましたか?
貞行さん それは大丈夫でした! 佳志くん、ママが入院していたとき、パパと2人でどうだった?
佳志くん 楽しかったー!
貞行さん 僕が言うのもなんですが、息子が生まれたときから育児に関わっていますし、息子もパパっこなので、本人は妻の入院もわりと「パパと二人で過ごすイベント」のような感じで受け止めていたと思います。入院先がコロナ対策で面会は頻繁にはできなかったので、息子が久しぶりに妻に会ったときはもじもじしていました(笑)。
育休は「人生の春休み」。復帰後に向けた準備を進めよう
――スムーズにお留守番ができたという息子さんですが、当時、赤ちゃん返りはありましたか?
貞行さん ありました。だけど、そこまでひどくはなかったかな。娘が生まれてからというもの、息子は娘に好意的な対応をしてくれています。それがとても嬉しいのですが、僕たちとしては、息子に対して何事も「お兄ちゃんだから」という対応はしないように気をつけています。その代わり「年齢が上だったり、できることが多い人が、下の子やできないことがある人を助けてあげよう」と日頃から伝えるようにしていますね。そうした中で息子自身が考えて、ときたまですが、自ら妹のお世話のお手伝いをしてくれると、本人の成長を感じてとても嬉しいです。
――お子さんのこと、すごく尊重されていますね。
貞行さん いやいや。やっぱり思ったように動いてくれないこともありますし、協力してほしいときにしてくれないみたいなことももちろんあります。そうなると、やっぱりこちらのストレスも溜まりますし、「子煩悩」という言葉がありますが本当にそうで、僕自身、子どもが生まれてから煩悩=悩みが増えたと思いますね。
普段子育てをしているとつい子どもに言いすぎてしまうこともあって、自分の未熟さ、小ささを感じることも多いんですけど、一方で子どもが何かを頑張っているとか、成長を感じる瞬間を見ると、ストレスや疲れが一気に吹き飛んでしまう。そんな経験をさせてくれる子どもって本当につくづく不思議な存在だと思います。
――子育てって親の方が学ぶことが多いですよね。最後にこれからパパの育休取得を考えているご家庭にメッセージをお願いします。
貞行さん はい。よく「大学は人生の夏休み」だなんて言われますが、育休は子育てパパ・子育てママとしての復帰後業務と育児の両立をスタートさせるための準備期間という意味で、「人生の春休み」だと僕は思います。復帰後の暮らしがスムーズにいくよう、ご夫婦ならではの育児スタイルが見つかるとよいですね。そして、何よりも赤ちゃんとの充実のひと時を健やかに過ごしてほしいなと思います。
(取材・文:江原めぐみ、撮影:尾藤能暢、イラスト:ぺぷり)