マインクラフトは子どもを伸ばす!? 高校でも導入「無限のブロック」で行う課題解決型学習|子どもの能力が伸びるマイクラ#2
男女問わず子どもに支持されているゲームの一つに「マインクラフト」があります。最近では「マイクラ」を教材に採用している学校も。なぜゲームが子どもの学習になるのでしょうか?
今回は、「マイクラおじさん」こと、日本初のプロマインクラフター・タツナミシュウイチ氏による初の著書『子どもの能力が伸びるマインクラフトの使い方』(ポプラ新書)より、子どもの能力向上とマイクラの関係についての解説をお届けします。
この記事の著者
タツナミシュウイチ さん
(プロマインクラフター/東京大学大学院客員研究員/常葉大学客員教授)
「マイクラおじさん」とは何者?
おばんでございます!
マイクラおじさん、タツナミでございます!
1976年に青森県弘前市に生まれ、とにかく何かを作っていないと気がすまない子どもでした。
大人になってもそれは変わらず、作ることを仕事として20代を過ごし、30歳ころに遅まきながら上京。そのあたりで私と同じくゲームが大好きな妻と一緒に始めたマインクラフト。あれから早いもので14年が経ちました。
マインクラフトでワールド(マインクラフトにおいてプレイヤーが活動をする3Dデジタル空間のことを「ワールド」と呼称する)を制作し多くのユーザーの皆さんにサーバーを開放したり、自分自身が作ったワールドやチームで制作したワールドを世界に向けて販売するビジネスを始めたり、マインクラフトを使う学校教材の開発をしたり国内の教育機関の先生とゲーム教育の研究を行ったり。30代後半から40代は仕事のすべてにおいてとにかくマインクラフトが必要不可欠な時間を過ごしてきました。
そして「マイクラが大好きだ!」と自分なりに世間に言い続けてきた私が、全国放送の『情熱大陸』や『マツコの知らない世界』といった素晴らしいテレビ番組に出演させていただいたり、東京大学大学院の客員研究員としてマインクラフトを使った平和学習の研究を教授や大学院生の皆さんと一緒に実践したり、常葉大学で客員教授になり日本で初めて大学の正規の授業でマインクラフトを教材とした「マインクラフト造形学」という新しい学問を立ち上げたり。
そして今、子どもたちにとっては楽しいゲームであるマインクラフトを上手に使い、大人が子どもたちに学習させたいと思っている教科につなげてもらう「マインクラフト教育」を、真剣に大学で研究し全国に出張して講演する「マイクラおじさん」として日々最前線で挑戦しています。もちろん根拠のある教育効果とエデュテインメント(エデュケーション×エンターテインメント)効果について研究に努め、講演で広く世間に発信と啓蒙をさせていただいています。
私自身、二児の親でもあり、日本や世界の子どもたちに少しでも質の高い教育の環境を提供する社会になるよう、一人の父親として、またマインクラフターとして今後の日本の教育事業への社会貢献を目指して日々活動しています。
知っていますか? 子どもの能力向上につながるマインクラフト
自由なプラットフォームが育む豊かな想像力
マインクラフトというプラットフォームはプレイヤーの好奇心を刺激します。
クリエイティブモードには「こんな風に遊んでください」というお手本がないので「どんな風に遊ぼうか」から、考えることになるためです。
マインクラフトというプラットフォームは、“白い画用紙”にも似ています。
白い画用紙を前にして、何を描くかを考えてから描き始めるようなものです。じっくり頭の中で構想を練ってからでも、とりあえず手を動かしてみても、別の紙に下描きをしても、どんな風に始めるのも自由です。
お手本の真似をして遊ぶことに慣れている子どもたちは、「ご自由に」と言われると戸惑ってしまうかもしれません。でも、戸惑ってしまう子どもにクリエイティビティがないわけではありません。それまでクリエイティビティを発揮する機会に恵まれなかったか、そうしていたころのことを忘れてしまっているか、どちらかです。そんな子どもたちには、まずは思いつくまま、マインクラフトで一歩を踏み出してもらいましょう。
自由に遊んでいると、もっとこうできたらいいな、今度はこうしてみたいなという気持ちが生まれてきます。それは現実の世界でも同じです。
たとえば私は自分の住環境や仕事場を使いやすいように改造するのが大好きです。
この傾向は子どものころから片鱗がありました。小学五年生のころ学習机に棚が欲しくて板切れで小さな棚を作ったり、集めてきた水晶や蛍石などを飾っておく箱をプラ板で作ってみたり、自分の部屋のドアを自動ドアにしたくて滑車とおもりを使って自動で閉まる機構を作ってみたり(柱や天井に穴を開けまくったので後々親にとんでもなく怒られましたが)。
「ないものや欲しいものは自分で作る」という自由な思想はあのころから今でもまったく変わらずに私の中で生きています。そしてそれこそがマインクラフトの遊び方そのものであり、それこそがクリエイティブなのです。
もし皆さんのお子さんが、かつての私と同じように今マインクラフトで本棚を作り、コレクションボックスを作り、回路で自動ドアを作っているとしたら。数十年後、大人になったときに彼らは何を作っているでしょう。考えるだけでワクワクしませんか?
様々な制限がある現実世界ですらできることはたくさんあるのですから、自由なマインクラフトの世界ではその気持ちはより強くなるでしょう。
その気持ちは、自由から生まれる好奇心です。自由から生まれる探究心です。与えられた条件の中で遊んでいるだけでは湧いてこないその気持ちは、自由なプラットフォームであるマインクラフトでは“クリエイティビティ”として呼び覚まされます。
ブロックを積むトライ&エラーが課題解決型学習につながる
マインクラフトと比べられることの多いレゴでは、なんでも作れる基本ブロックのセットもありますが、具体的な乗物や建物など作るべき作品が示されていて、その完成のために必要なパーツがそろっているキットも人気です。自分が選んだ課題に向かって黙々と手を動かすのも、それはそれでハマッてしまう作業ではあるのですが「ここをとがらせたらかっこいいのにな」と思っても、とがらせるためのパーツがなければ、「ここは別の色がいいな」と思っても別の色のブロックがなければ、内側からふつふつと湧いたせっかくのクリエイティビティを活かせません。
もったいないなと思います。私が子どものころに「レゴクラシック」のようなバラバラのブロックのほうが楽しめたのも、理由はそこにあったのかもしれません。
でも、そこに「無限のブロック」があったらどうでしょうか。
いくらでも自分好みに改変できます。改変しているうちに、最初は自動車を作っていたつもりが、潜水艦になってしまったということもあるかもしれません。予定変更、でも、それこそがクリエイティビティだと思います。水陸両用の自動車潜水艦、面白いじゃないですか! 自動車を作り始めたその子が、予定変更を重ねなければできなかった世界で一つの作品が、そこに生まれます。
マインクラフトであれば、そうやって世界で一つの作品を作ることができます。なぜなら、ブロックは無限に集め放題、使い放題だからです。
すでにある材料だけで何かを作るのと、素材集めからスタートするもの作りでは、大きく違います。その違いは、与えられた課題に取り組むのか、自ら課した課題に取り組むのかの違い、それこそがPBL(Project Based Learning)、課題解決型学習そのものなのです。
そして、マインクラフトであれば、与えられた課題に取り組んでいるうちに、自らに課題を課しそれに取り組むというシフトが、自然と発生します。
東京都にある大森学園高等学校では、マインクラフトを使用した課題解決型学習を実践した事例があります。これは情報の授業の中でマインクラフトを使用して実践したというもので、これまでにない何か新しいものを創造していく力の醸成、問題を発見しそれを解決するための課題を自ら明らかにし取り組んでいくというもので、点数などで評価できない問題発見力や課題解決能力が育まれる授業ということで注目を浴びました。
このような考え方のシフトが、マインクラフトの魅力の一つだと思います。
※『子どもの能力が伸びるマインクラフトの使い方』(タツナミシュウイチ著、ポプラ新書)より一部抜粋・再編集
※本書はMinecraft公式書籍ではありません。MINECRAFT利用ガイドラインに則って独自に刊行したもので、Mojang社およびMicrosoftは本書の内容に関係ありません。