【山本ゆりさんインタビュー後編】料理以外の家事はすべて苦手、仕事と育児の両立も行き当たりばったりだった
多くの人たちの支持を集める山本ゆりさんのレシピ。飾らないキャラクターも愛される理由の一つです。「面倒くさがり」な山本さんが教えてくれるレシピなら、自分にもできるかも!と思わせてくれます。仕事に家事に育児と、忙しいなかでも元気いっぱいに過ごす、山本さんの日々ついてうがかった、インタビュー後編をお届けします。
お話をしてくださった方
山本ゆりさん(料理コラムニスト)
「何を作ったらいいかわらかん」時はやっぱりめんどくさい!
―――山本さんはインタビュー記事や『syunkonカフェごはんシリーズ』などでよくご自分のことを「面倒くさがり」「不器用」とおっしゃっています。その一方で、ご家庭で料理を毎日作られてネットも更新されています。山本さんが料理を面倒にならず、子どもの頃から続けてこられたのはなぜでしょうか?
山本ゆりさん(以下、山本) まず、食べることが大好き、食いしん坊というのがあると思います。それから、母が何を作っても「美味しい」と褒めてくれましたし、学生時代には女子バスケットボール部の友達がみんな褒め上手で、何か作っていくと取り合いをしてくれたんです。そうしたことが嬉しくて作り続けてきたんだと思います。
逆に、作ったものに対して反応がなかったり、文句を言われたら、絶対に作らなくなります‼(笑)
でも、毎日のご飯はやっぱり面倒で、土日は昼夜のどっちかは外食ですし、お惣菜とかも買いまくってます。ほんとに外食率が高い家です(笑)。
――山本さんでも料理が面倒なことがあると聞くと励まされます。料理をしていて特に「めんどくさい」「不便」と感じるのはどんな点でしょうか?
山本 何を作ったらいいかわからん……っていう時。子どもたちがみんなそれぞれ嫌いなものがあるんで、全員が満足する献立を考えるのがまずめんどくさい!
あと、冷凍肉を解凍するのとか。そこから、冷凍肉をそのまま調理するレシピが生まれました。
下ごしらえが多い、洗い物が多いのも嫌ですね。「巻く」「包む」「パン粉をつけて揚げる」みたいな料理も、ものすごくやる気がある時しか作れないです(笑)。
――『syunkonカフェごはん8』には「不器用・おおざっぱ・面倒くさがり、でもおいしいものが大好きな人間が自分でも作れる、作る気になる料理だけを集めたレシピ本」と書かれています。不器用だったり面倒でも、料理を買うのではなくて「作る」ことの良さとは何だと思いますか?
山本 自分好みの味にできること、自分が好きなものを食べられること、でしょうか。好きな時に好きなものを食べられるのって幸せだなと思います。
それに、塩分とか油の量など、健康面を考えるとやっぱり自炊に軍配があがります。外食やお惣菜は本当に美味しいし大好きなんですけど、そればかりだと舌が疲れるというか、どこかで野菜がめっちゃ食べたくなるし、家の味に戻りたくなります。
あとは金銭面。短い期間だったら、あれこれ材料を揃えるよりもお惣菜や外食のほうが安くつきますが、長期的に食費を抑えようと思ったら、やっぱり自炊のほうがいいと思います。
それから気持ちがなんとなく豊かになる。ちゃんと作った日のほうが、逆に気持ちに余裕ができたり、穏やかになれることが多い気がします。自分えらい!みたいな(笑)
ただこれはあくまでも自分は、の話で、最近は外食や宅配で、安くて健康も考えられているものも増えてますし、自炊が苦手な方、しんどい方はどんどん利用していいと思います!
家事と育児は行き当たりばったり!爆発する前に夫に頼るように
――毎日お忙しい一方で、3人のお子さんのことや家事のこともブログに書かれています。子育てと仕事を両立させるために、心がけていることは何でしょうか?
山本 全然両立できてなくて、常に行き当たりばったりの生活が続いています!
明日からはちゃんと生活しよう、来週からは、来月からは、この本が完成したら……と思い続けながら、一度も改善されないままで13年を過ごし、このままでは子どもが反抗期でグレたり家出したりされて後悔しそうだとビクビクしてます(笑)。
でも、夫に家事も育児もめちゃくちゃ協力してもらうようになり、保育園の送迎もお願いするようになって、すごくラクになりました。自分だけで家事や育児を抱え込むと爆発するので、夫に頼りまくってます。
あとは、泊まりの仕事は基本的に入れないようにしています。別にもう夫が見てくれるし、ご飯もお風呂もなんでも自分たちでやってくれるからいいんですけど、なんとなく家族の負担が大きい気がして。
――お子さんが3人いらっしゃいますが、一人ひとりと過ごすこともありますか?
山本 寝る前に漫画を読んだり、たまに2人でご飯にいったり、カラオケにいったり…少しでもどこかで2人だけの時間を作るようにしています。あとは、参観日とや発表会は必ず優先するとか、誕生日は特別にお祝いするとか、そのぐらいしかできてないです。本当は毎日をちゃんと過ごしたいんですけどね……。
――2022年からはTV番組「DAIGOも台所〜きょうの献立 何にする?〜」のレギュラー参加も始まりました。ご家族はテレビ番組やご著書を見ていますか?
山本 テレビに出ると子どもたちはすごく喜んでくれますね。ただ、いまだに動いてる自分が恥ずかしくて、「DAIGOも台所」は、私はたまに観るくらいです……。
著書の方は、長女が読み物ページを見て笑ってることがあります。夫はブログも本も1回も読んだことないです!「読まれたら自由に書かれへんから、見んといて」って言ってます(笑)。
料理以外はすべて苦手!頑張りすぎずにサボってみてもいい
――料理はお好きだそうですが、料理以外にも色々な家事があります。山本さんが苦手な家事はありますか?
山本 洗濯、掃除、名もなき家事……料理以外すべて苦手です!! 料理も、下ごしらえとかは楽しくなくて、お酒を飲みつつ炒めたり、盛り付けるとこが一番好きです(笑)。
嫌な家事は、最近は夫に投げてます(笑)。あとは音楽を聴きながらハイテンションでやったり、「できるだけ早く洗濯物をたたむ!」みたいに心の中でゲーム化したり。
――楽しくこなす工夫ですね。旦那さんも家事をこなせるのはいいですね!
山本 結婚当初はゴミ出しとお風呂掃除以外ほぼ私でしたが、今は夫がめちゃくちゃやってくれます。時間的に無理になったこと、私も図太くなったことで、どんどん遠慮なく頼むようになっていきました。
夫は結婚前の一人暮らしが長かったですし、洗濯も掃除も洗い物も、圧倒的に私よりも器用で早いし、きっちりしてるし、向いています(笑)。私みたいに洗濯機に入れっぱなしのまま夕方に思い出すとか、雨のなか干し続けて一周回って乾くまで放置している、とかが絶対ない。何分ぐらいで掃除が終わるから、その間に洗濯機を回して、間に買い物にも行って、とかを計画的にやれるタイプ。もう全部やってほしいわ。
――家事がたまってきたらどうしたらいいと思いますか? 山本さんならではの解決方法、乗り切り方を教えてください。
山本 これ難しいですよね。家族に協力を仰ぐのも、逆に手間っていう方もいると思いますし、外部に頼るにはお金がかかるし。
たぶん私はあまりちゃんと家事をしてなくて、布団カバーとかとんでもなく替えないし、掃除も毎日はしないからホコリ溜まりまくってるし、カーテンとか洗ったことないし、玄関も砂だらけやし。
なので解決法でもなんでもないんですけど、頑張りすぎている方は、やらなあかんと思っている家事の中で、もしかしたらやらなくても大丈夫なこともあるかも、と見直して、サボってみてもいいかもしれません(笑)
――サボれるかどうか見直す、って大事ですね!
山本 ただ、サボりを自分が許せるようになるのが一番難しいんですよね。わかります。汚い家とか嫌ですもんね。でも周りに頼る、もしくは便利家電にお金を使うとかはありだと思いますよ!
ブログやSNSのコメントが1日の楽しみ
――13年前に始められたブログが山本さんの原点だと思いますが、X、Instagram、ブログの中でいま一番大事だと思うのはどれでしょうか?
山本 ブログでしょうか。やっぱりここから始まったということがありますし、料理以外の個人的な話も多いですし。長文だから読む人は少ないしフォロワー数も一番少ないですけど、そのぶん密ですし、ここがあるから他に行っても大丈夫みたいな、安心できる場所です。
でも何かを拡散、宣伝したいときはXが一番。インスタとかブログで自分をフォローしてくださっている層とはまったく違うところにも飛んでいくので。
そしてコメントと観てくれている人が一番多いのはInstagram。そう考えると、やっぱりどれも大事ですね(笑)。
――子育てやレシピ開発のかたわら、ほぼ毎日SNSやブログを続けてこられたのはすごいことだと思います。ずっと続けられた秘訣はありますか?
山本 やっぱり感想とか反響があるからです。ブログのコメント欄を読むのが1日の楽しみで、コメントを読みたいがためにブログを書いてきました。
ブログやSNSはもちろん仕事でもありますが、圧倒的に趣味と楽しさの面が多いです。読者さんが優しい方ばっかりで、SNSで嫌な思いをしたこともほぼないので、ただただ楽しみでやってます。書きたいことがいっぱいで間に合わないぐらいです。
――ブログやSNSごとに雰囲気や特徴は違いますが、媒体ごとに人気の出やすいレシピは違いますか?
山本 基本的には同じです。あえて違いを言うとすれば、ブログは毎日作れるようなフライパンの家庭料理、Xは1人分のサッと作れる簡単料理、インスタは見た目がキレイで美味しそうなものが人気な傾向はあるかもしれません。
――ブログを拝見すると、コメント欄がいつもにぎやかで楽しそうですね! 関西弁で書き込みされる方がちょこちょこいらっしゃるので関西の読者さんが多いんでしょうか?
山本 関西の方は多いです!! あと、なぜか北海道の方、愛知県の方も多くて。一度みんなどこに住んでるのか調べてみたいですね。
落ち込むことはなんぼでもある!落ち込んだ時には寝るのが大事
――いつも明るく元気な山本さんですが、落ち込む時はあるんでしょうか?
山本 落ち込むことはなんぼでもあります! そういう時は本を読むか、友達に話を聞いてもらったり、編集さんに愚痴るとか(笑)、飲みに行くとか。
SNSに落ち込んだ様子を出すことは絶対ないですね。ブログの読者さんだけなら優しいですけど、不特定多数の目に入るんで、辛辣な意見ももちろんあるやろうし、落ち込んだことを書くとあとで自己嫌悪が襲ってきて、さらに落ち込む負のループに陥るのが目に見えてるんで。
あと落ち込んだ時こそ寝る! 睡眠はほんまに大事やな、と年々思うようになりました。
――最後に、マイナビ子育ての読者にメッセージをお願いいたします。
山本 何ひとつ役に立てる話がなかったのが申し訳ないんですけど、読んでくださってありがとうございました。毎日の生活で自分を一番後回しにしている方も多いと思うんですけど、無理しないで、ヘルプは早めに出してくださいね。
自分で自分を許せたら、世界は意外と優しかったりします。とか言いつつもいつも私もいっぱいいっぱいやし部屋グチャグチャなんで、マイナビ子育てをみて色々勉強します。もしよかったらブログにも遊びにきてください!
(解説:山本ゆり、取材・文:大崎典子)
『syunkonカフェごはん8 読むとやる気が出る簡単絶品レシピ』(宝島社)
山本ゆりさんにとって11冊目となる本書は、4年間の人気レシピがたくさん掲載されています。手に取るとその分厚さに驚くかも!? ページ数もレシピ数もシリーズ最大、切り離して使える特別付録もある、豪華な一冊です。