「あの人たち、すげぇー!」小3息子がそれまで知らなかった中小企業に憧れの眼差し♡ そのお仕事体験とは?(東京・練馬区)
息子が将来なりたい職業に出会えるように、できるだけ多くのお仕事体験をさせようと貪欲な筆者。そんな我が家に、職業体験イベント『おしごと体験はどうだい?』の情報が舞い込んできました。出展するのは知らない中小企業ばかりだけど、息子が興味を持つかな? でも、だからこそ新鮮!? 期待と不安を胸に、家族3人で取材に行ってきました!
子どもたちと中小企業をつなぐプロジェクト『おしごと体験はどうだい?』
長年にわたり中小企業を支える生命保険会社【大同生命】は、10月26日(土)に東京都練馬区にて小学生を対象とした職業体験イベントを開催。それが、今回ご紹介する『おしごと体験はどうだい? ~こどもと中小企業をつなぐプロジェクト2024~』です。
近年、中小企業を取り巻く経営環境は複雑化しており、中小企業の認知・理解不足から「人材不足」「後継者不足」といったさまざまな問題が浮上。【大同生命】では、こうした背景を踏まえ、子どもたちに中小企業の仕事やその魅力を知ってもらう場を提供しようと、本イベントの開催を決めました。
会場となったイベントスペース「IKUSA ARENA」には、さまざまな分野で活躍する中小企業16社が集結。「和菓子づくり体験」「有田焼絵付け体験」「カメラマン体験」「左官のお仕事体験」「プログラミング体験」など、小学生を対象に多彩なお仕事体験を提供しました。
お目当ての仕事を求め長蛇の列! 会場は子どもたちの熱気でムンムン
イベント当日は、若干の余裕をもって開始時刻15分前に到着した我が家。事前予約制だったので、時間より早めに行って並ぶ必要はないと思っていたのですが、会場入口にはすでに長蛇の列ができていました。
うわぁー、まるで人気テーマパークの開園を待ちわびるかのような熱気。おそらくお子さんのお目当てのお仕事が体験できるように、早めに訪れた方が多いのでしょうね。「どんなお仕事が体験できるんだろう?」「楽しいかな?」という子どもたちの高揚感が伝わってくるようです。
我が家も急いで受付を済ませ、列に並びます。
と、何やら顔をほころばせる息子。
その理由は、受付でもらった「どうだいくん」のメモホルダー。変わったネーミングだなぁと思ったら、中小企業の経営者が声を掛け合える場所を目指して【大同生命】が開設したWEBサイト『どうだい?』が由来なんだそう。「どうだいくん」はその「どうだい?」のイメージキャラクター。
話をしっかり聞いてくれそうな大きな“お耳”が息子のツボだったようで、愛おしそうに眺めたりにぎったりして楽しんでいました(笑)。
これぞ激レア体験! ペットボトルで伝統の醤油づくり ~湯浅醤油 有限会社~
イベント開始時刻になると、子どもたちは目をキラキラさせながら足早にお目当てのお仕事体験ブースへ。期待いっぱいの子どもたちに続き、息子が向かったのは第一希望の【湯浅醤油】のブースです。
醤油のつくり方を学び、お家で世界にただ1つだけのオリジナル醤油づくりに挑戦します。
まずは、手始めにクイズから。1つ目のお題「醤油は何からできているでしょう?」は想定内でしたが、続くお題「醤油は何県で生まれたでしょうか?」に意表を突かれました。
えっ、どこ? そういえば聞いたことがないかも!? まったく思い浮かばず、密かに焦る筆者。
ヒントが出され、子どもたちは果敢にクイズに挑みます。そしてようやく辿り着いた答えは……
紀州・和歌山県でした!
醤油の起源は、今から800年ほど前の鎌倉時代に、中国に渡った禅僧が和歌山県に持ち帰って製法を伝えた「金山寺(きんざんじ)味噌」にあるのだとか。
金山寺味噌をつくるときに、表面に出てくる液体。これを舐めてみたところ非常に美味しくて、和歌山県湯浅町の人々がもっといっぱいつくろうといろいろ試して生まれたのが、現在の醤油だと言われているそうですよ。
【湯浅醤油】は、そんな日本の醤油の発祥地・紀州湯浅で800年の伝統を受け継ぎながら、厳選した原料を使用し、世界一の醤油をめざして製品づくりに励んでいます。
クイズが終わると昔ながらの伝統的な醤油づくりの工程について学び、いよいよお家での醤油づくりの実演レッスンを受けます。今回の醤油づくりは、【湯浅醤油】特製の「手づくりしょうゆ体験キット」を使って行うとのこと。最前列に座っていた息子は、その実演レッスンのお手伝い係に選ばれ、幸運にも実践しながら学べるチャンスが巡ってきました。
作業前に500mlペットボトルを2本準備し、そのうち1本をハサミでカットして“じょうご”をつくっておきます。
ペットボトルにじょうごをテープで固定して取り付け、そこに【湯浅醤油】の特製キットの「醤油こうじ」を注ぎ入れます。
醤油こうじとは、大豆、小麦、塩、麴菌をあらかじめ混ぜ合わせたものです。続いて200mlの水を注いだ後、じょうごを取り外し、ペットボトルのキャップをしめたら、醤油の素となる「もろみ」の仕込みは完了です。
もろみを一から手づくりしようとすると、大豆を蒸して、小麦を炒って砕いて、それらを混ぜ合わせて麹菌を加え……と時間も手間がかかりますが、このキットを使えば超手軽にできるのがいいですよね。
続いて仕込んだもろみを攪拌し、「発酵・熟成」を促します。
仕込んだ日から1週間は毎日攪拌し、徐々にその回数を減らしていきます。仕込んでから約1年後にもろみを搾り、醤油だけを取り出せば完成だそうです。
そっかー、1年。長いなぁーと思いましたが、昔ながらの醤油はそれだけ手間ひまかけてつくられているということ。それを体験して実感できるこのキットって、なんて素敵なんでしょう!!
イベントの数日後に、自宅に持ち帰った「手づくりしょうゆ体験キット」で醤油づくりに挑戦。
醤油こうじの原材料がすべて国産だと書かれてあり、改めてそのキットの素晴らしさに感動。子どもたちに本物の味を知ってほしいという想いが伝わってきますよね。開封すると、醤油のふくよかな香りが漂ってきてウットリします。
会場で教わった手順を思い出しながら息子が手際よく作業を進め、もろみの仕込みはあっという間に終了。じょうごを使ってペットボトルに材料を投入するから、テーブルを全く汚すことなく作業ができ後片付けもラクチンでした。
仕込んだ日からの連日の攪拌作業も、息子が自主的に実施。ペットボトルの中で生きて呼吸している“もろみ”のために、空気の入れ替えやガス抜きの必要があるという会場で聞いたお話もしっかり覚えていて、ときどきキャップを開けて空気の入れ替えも行っています。
まるでペットのように愛情を注ぎながら1年かけて育てた醤油は、きっと格別の味がするのでしょうね。「ちゃんと醤油ができるかな? どんな味がするんだろう??」と息子も完成の日を心待ちにしてます。
企業担当者の声(湯浅醤油有限会社 代表取締役 新古敏朗さん)
湯浅町を醤油発祥の街として広く発信したい
和歌山県の湯浅町が日本の醤油発祥地だということは、実はあまり知られていません。醤油屋さんですら、知らない方は多いのではないでしょうか。そこで私たちは、20年ほど前から食育活動として小学校での出前授業をスタート。子どもたちといっしょに醤油をつくり、日本遺産にも認定された湯浅の醤油文化を伝えています。本イベントを通して、1人でも多くのお子さんが「醤油発祥の街・湯浅」を覚えてくれれば嬉しい限りです。
意外な才能を発揮!? ゲームプログラマーのお仕事体験 ~ビットスター株式会社~
息子の次なる挑戦は、ゲームプログラマーのお仕事。川下りゲームをつくって、プログラミングを体験します。
体験を提供するのは、北海道札幌市のIT企業【ビットスター】。「ITで、こまったを、よかったに。」をコンセプトに、WEBサイト制作やソフトウエア開発を行っている会社なんですって。
プログラミングは、手のひらサイズのプログラミング専用子ども用パソコン「IchigoJam」を使用して行うそうです。
筆者はネットで見かけて知っていたIchigoJamですが、果たして小3の息子に操作できるでしょうか!? 少し不安になってきます。
しかもキーボードの隣には、よく使うファンクションキーの説明書きが。
む、難しそう……。ますます不安は募る一方です。
そうこうしているうちに、パソコンを使った実践型の体験がスタート。
あれっ? あれれ? 息子の手元を見ていてビックリ! 「ファンクション」や「@」などの普段馴染みのないキーを探すのに少し戸惑っている様子でしたが、ほかの文字入力は意外にもスピーディー。どうやら最近ドハマりして遊んでいるパソコンのタイピングゲームの成果のようです。「こら、またゲームしてる!」と小言を言ってきたことをちょっぴり後悔する筆者でした。
さて、プログラミングには「目標達成に向けて順序立てて考える力」が必要とされています。
なぜならコンピューターは、順序立てて的確な指示(プログラミング)をしなければ機能しないからだそう。小さい子どもに、何か新しいことを教えるときのようなイメージでしょうか!?
順番どおりにプログラムの入力を終えて実行ボタンを押すと……
見事、川下りゲームが起動!
わぁー、すごい! ちゃんとゲームになっている!! 文字列だけだった画面がちゃんと遊べるゲーム画面に切り替わり、息子もとっても嬉しそうです。
ひとしきり遊んだら、プログラムを組み替えて川下りのスピードを速めたり遅めたり、敵キャラを変更したり、ゲームのアレンジにも挑戦。いつもは「遊ぶだけ」のゲームを「自分の手でつくれる」のが息子も楽しいようで、終始目を輝かせながら取り組んでいました。
体験後に息子に「ゲームプログラマーのお仕事って、どう思う?」と尋ねたところ、「あのゲームを考えたのはあの人なんだよね。そう考えるとすげぇーな」と称賛しながら、この日初めてその存在を知った【ビットスター】の社員さんたちに憧れの眼差しを送っていました。
企業担当者の声(ビットスター株式会社 サービス事業部 開発構築グループ シニアアーキテクト 照井美徳さん)
「トライアンドエラー」でたくさんの成功体験を
プログラミングが「難しい」というイメージは、お子さんよりむしろ親御さんのほうが強くお持ちです。でも実際にやらせてみたら、案外簡単だということも多いようです。今回の体験を通して1人でも多くのお子さんがプログラミングの楽しさや気軽さを知り、プログラマーを目指してくれることを願います。プログラミングで求められるのは、「トライアンドエラー」で最適なゴールに辿り着く手順。そこで得た成功体験は、きっとお子さんの大きな自信につながります。
本への愛着もひとしお♡ 本格的なハードカバーの製本にチャレンジ~東京美術紙工協業組合~
続く息子の挑戦は、印刷物を綴じて本の形にする「製本」のお仕事体験。絵本と同じつくり方で、個性あふれるオリジナルミニブックがつくれるのだとか。
日ごろから4コマ漫画を描いては、我流のセロテープ製本(?)を実践している息子。実際の本がどのようにつくられるかとても興味があったようで、好奇心いっぱいの様子で体験にのぞみました。
書店に並ぶ書籍を中心に、主に絵本や実用書、専門書などの製本を手がけている製本会社の【東京美術紙工協業組合】が体験を提供します。
過去に書籍編集のお仕事にも携わっていた筆者でしたが、その会社の名前を聞くのは初めて。厚紙の表紙にCDやDVDメディアを収納できる「特許かくれん本」や、一見すると一冊の本ながら中に独立した2冊の本が入っている「ブックインブック」など、独創的な製本技術を開発している組合なんだそう。
体験には、【東京美術紙工協業組合】が独自に開発した製本キット「Kurumi(くるみ)」を使用。「製本工場での本格的な製本を、多くの方に体験してもらいたい」という想いから生まれた製本キットなんですって。
いざ、お待ちかねの製本体験がスタート!
材料はシール加工されているから、のりを使わずに簡単に製本のしくみを体験することができます。
基本は「台紙をはがしてボール紙を貼る」という作業の繰り返し。おー、これは簡単でいい! 小さなお子さんでもチャレンジできそうです。
初心者でも職人さんと同じ工程で仕上げられるように開発されたキットだから、本の構造や製本のしくみもバッチリ覚えられそうです。
本来製本キットには“しおり紐”は含まれていないそうなのですが、今回のイベントでは特別につけることに。しおり紐は、本の背表紙の裏にボンドで接着します。
おおっと!! ボンドが乾かないうちに、しおり紐を触ってずらしてしまった息子。でも急いで修正したのでセーフです。ちょっぴり焦るシーンもありましたが……
ついに本の形に仕上がりました~! うわぁー、一冊の本になると何だか感激しちゃいますね。
出来上がった本を愛おしそうに眺める息子。心を込めて製本した本は、まさに世界で一冊の特別な宝物です!!
実際の製本職人さんたちも、こんなふうに一冊ずつに心を込めながら仕上げているのでしょうね。これをきっかけに、そんな職人さんの想いに応えるように本を大事に扱ってくれたら嬉しいな。
体験から数日たった今もまだ本の中身はまっさらのままですが、息子がどんな本を完成させるのかとても楽しみです。
企業担当者の声(東京美術紙工協業組合 理事 開発部長 松本知之さん)
製本体験が「本」を好きになるきっかけになったら
近年、生活環境の変化やさまざまな情報機器の普及により、子どもたちの「本離れ」が深刻な問題となっています。子どもたちが製本体験を通して本の魅力に触れ、もっと本を好きになってもらえたらと思い、今回本イベントへの参加を決めました。当組合では、製本キット「Kurumi」を使った製本体験を全国各地で実施しております。お住まいのお近くで開催の際は、ご予約のうえぜひお越しください。
まとめ
今回のイベント『おしごと体験はどうだい?』で息子が体験したのは、「醤油職人」「ゲームプログラマー」「製本職人」の3つ。
どれも知らない企業のお仕事体験でしたが、だからこそ「どんな会社なんだろう?」と息子もワクワクしながら楽しんでいるようでした。体験内容も素晴らしく、中小企業にも素敵な企業がいっぱいあるんだなぁと気づかされました。
イベント主催の【大同生命】の担当者にお話を伺ったところ、「来場してくださったお子さんが体験に夢中になっている顔を見て、非常に手ごたえを感じています。今後は、首都圏だけでなく、地方でも開催できたらと考えています」とのこと。今回は時間切れで我が家も断念したお仕事体験がいっぱいあるので、次回開催にぜひ期待したいです!
公式HP:おしごと体験はどうだい?(職業体験ドットコム内)
(文・撮影:あゆーや/アソンデミエータ)
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