
【助産師解説】授乳中のアルコール(お酒)は大丈夫?飲酒量とタイミング
気になる授乳中のアルコール(お酒)問題について、助産師が解説します。赤ちゃんへの影響やリスク、飲みたいときの方法や注意点についてのアドバイスを、ぜひチェックしてください。
授乳中のアルコール摂取にはどんなリスクがある?

妊娠中のアルコールは厳禁とされていますが、授乳中もお酒はNGなのでしょうか? 「できれば避けたい」「アルコール摂取後に授乳まで時間を開ければ大丈夫」「少量なら大丈夫」など、さまざまな声が聞かれますが、本当のところはどうなのでしょか? 授乳中の飲酒による赤ちゃんへの影響やリスクについて考えてみましょう。
アルコールは母乳に移行し、赤ちゃんの発達を阻害
まず事実として、お酒を飲むとアルコールは母乳に移行します。そのため、飲酒直後に授乳すると、赤ちゃんはアルコールを含んだ母乳を飲むことになります。
厚生労働省は「アルコールは授乳中の母乳に入り、乳児の発達を阻害します」としています[*1]が、どのくらいの量であれば母乳に移行しても安全という目安となるデータはありません。授乳中のアルコール摂取が赤ちゃんに与える影響やリスクについてははっきりしていないことが多いので、大きな問題はないと油断するのはよくありません。
少なくとも、授乳中に飲酒することによって赤ちゃんにいい影響を及ぼすことはないと考える方がよいので、がまんできるならば飲まないことに越したことはないでしょう。
授乳中の飲酒は母乳量を減らす


飲酒は母乳量にも影響するとされています。
お酒を飲むことでプロラクチン(母乳分泌に関係するホルモン)分泌が抑制され、母乳の出る量やひいては授乳期間などにも悪影響を及ぼすと考えられています。
飲酒後、授乳を避ける時間は?


赤ちゃんに影響を与える可能性がある授乳中の飲酒ですが、どうしても飲みたいときはどのくらいの時間授乳を控えればいいのでしょうか。
「飲酒後2時間以上あけてから授乳」との見解
アルコールの半減期(血中の濃度が半分になるまでに要する時間)は30分とされており、その5倍の時間(2時間半)が経つと体から無くなったものと考えられます[*2]。
しかしながら、飲む量はもちろんのこと、その日の体調や飲む人の体重など様々なことで、この時間は変化します。
以下、「授乳と飲酒」に関しての見解をご紹介します。
・米国小児科学会:最小限の量に抑えるべき
アルコールは子どもの発達に悪影響を与える可能性があるため、アルコール飲料の摂取は最小限の量に抑えるべきである。[*3]
・日本産婦人科医会:2時間以上あけての授乳を
乳汁中アルコール濃度は飲酒後2時間が高いとされ、飲酒後2時間以上あけて授乳することが推奨されている。[*4]
・日本産科婦人科学会:2時間以上あけての授乳を
飲酒はプロラクチンを抑制するなど、授乳のパフォーマンス(分泌量や授乳期間など)を低下させる。また母体血液中のアルコールは乳汁に移行する。ただし蓄積されるものではなく、乳汁中アルコール濃度は飲酒後2時間をピークにその後低下してゆく。海外の勧告では母乳のメリットが人工乳に比して大きいため、飲酒したからといって授乳を忌避する必要はないとしているが、授乳までには飲酒後2時間以上あけることを推奨している。[*5]
・厚生労働省
妊娠・授乳中はノーアルコール:妊娠中の飲酒は胎児の発達を阻害し、胎児性アルコール症候群を引き起こすことがあります。またアルコールは授乳中の母乳に入り、乳児の発達を阻害します。[*6]
お酒の量の目安は?


飲酒後から授乳までの間隔も重要ですが、飲む量にも注意が必要です。
同じ量のアルコールを飲んでも、体格によって母乳中の濃度は変わってきます。また、アルコールの分解にかかる時間も個人差が大きいので、実際のところは何をどれぐらいなら飲んでも大丈夫と一概に言うことはできません。目安にとらわれず、どれぐらい飲むと酔ってしまうのか自分のアルコール量を知り、また、その時々の体調も考慮して、できるだけ少なくするよう努めることが大切です。
個人差はあるがビールだと350ml缶1本
絶対的な数値ではなく、あくまでもひとつの目安となりますが、米国小児科学会では、授乳中のアルコールの許容範囲は0.5g/母親の体重(kg)としています。体重50kgの女性で計算すると、飲酒後2時間ほどでアルコールが体からなくなる主なお酒の量の目安は、以下のようになります。
・ビール(アルコール度数5%):350ml
・発泡酒(アルコール度数3.5%):350ml
・缶チューハイ(アルコール度数5%):350ml
・ワイン(アルコール度数 14%):100ml(グラス1杯はおよそ125ml)
・日本酒(アルコール度数 20%):80ml
まとめ
ママが摂取したアルコールは、母乳にも移行します。アルコールを含む母乳を飲んだときの影響やリスクについてはさまざまな見解がありますが、まだはっきりしたことはわかっていないので注意したいですね。授乳中は飲まないのがベストではありますが、どうしても飲みたいときは授乳中の飲酒によるリスクを理解したうえで、授乳までの時間や飲む量を考えましょう。結局は自身の判断にかかってくることになるので、飲酒するかどうかを決め、飲む際は注意点をしっかり守るよう努めることが大切です。
(文・構成:マイナビ子育て編集部、監修・解説:佐藤裕子先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省「e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン」
[*2]水野克己ほか「よくわかる母乳育児」(へるす出版)
日本産婦人科医会「妊娠中の飲酒について」
[*3]米国小児科学会「「母乳と母乳育児に関する方針宣言(2012年改訂版)」のEXECUTIVE SUMMARY」(NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会翻訳)
[*4]日本産婦人科医会「妊娠中の飲酒について」
[*5]日本産科婦人科学会「産婦人科 診療ガイドライン-産科編 2017」
[*6]厚生労働省「e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます