
【助産師解説】完ミ育児のメリットは?スケジュールや外出のコツもチェック!
「完母(完全母乳育児)」ということばになぞらえて、ミルクのみの育児を、俗に「完ミ」と呼ぶことがあります。今回はそんなミルクのみ育児のメリットや授乳スケジュールについて、助産師が詳しく解説します。外出時の持ち物を減らすコツや断乳の時期など、気になるポイントについてもチェックしてくださいね。
"完ミ育児"のよさとは?


産まれた赤ちゃんはできるだけ母乳で育てることが望ましいという考えが主流となってきた近年。実際に、厚生労働省が発表した『平成27年度 乳幼児栄養調査結果』によると、昭和60年から平成17年まではミルクや混合育児が比較的多かったのに対し、ここ10年ほどで母乳栄養がぐっと増えています。[*1] これはどういった理由によるものなのでしょうか。
母乳をあげないのは母親としてダメなこと?
近年、日本では母乳育児が主流となっています。世界保健機関(WHO)やユニセフの母乳育児推奨を受け、日本の厚生労働省でも母乳育児を推奨するようになったことが背景にあります。また、多くの産婦人科もそれに賛同し「できるだけ母乳で」と積極的に指導するようになりました。
このような流れを受け、「できれば母乳で育てよう」という考え方が根付くようになり、母乳育児が大幅に増えてきたようです。
WHOや厚生労働省など、世界の多くのリスク評価・管理機関で母乳育児を推奨するようになったのは、栄養や免疫などの観点で母乳によるメリットが多いことが研究により明らかになってきたためです。とはいえ、さまざまな理由により母乳のみの育児が難しい場合もあり、母乳とミルクの混合栄養やミルクのみを選択する人も少なくありません。
ミルク育児を行う理由には、仕事復帰などライフスタイルとの兼ね合いもありますが、病気や服薬の必要性など、やむを得ない事情によるものが多いです。母乳育児のメリットを聞くと、さまざまな理由で母乳育児を断念せざるを得なくなったママは不安になったり、つらい気持ちになってしまうこともあるでしょう。たしかに、世界的に母乳育児が推奨されてはいますが、母乳で育てないと問題というわけではないので、あまり心配しないでくださいね。最近のミルクは製造技術が進歩し、赤ちゃんの負担のないように調整されているようです。
どのような形でも、大切なのは赤ちゃんを愛情いっぱいに健やかに育てること。子育ての事情はその家庭にしかわからないことなので、周りから何を言われようと気にしないでくださいね。
完ミ育児にはメリットも!
とはいえ、やむを得ない事情でミルクに移行しなければならなくなったときは、どうしても母乳で育てられない寂しさをぬぐいきれないかもしれません。でも、ミルクにはミルクならではのよさがあります! ポジティブにとらえ、赤ちゃんとの生活を楽しみましょう。
ミルク育児のメリットには、ざっと出てくるものだけでも以下のようなものがあります。
・哺乳量がわかりやすい。
・授乳間隔をとりやすく、生活リズムをつくりやすい。
・他の人に授乳を代わってもらえる。
・場所を選ばず授乳できる。
・服薬や飲酒の制限がない。
特に、他の人に授乳を代わってもらえるのは、育児の負担がママだけに偏りにくくなるというメリットがありますね。母乳だと、どうしても授乳はママの担当という形になってしまいますが、ミルク育児の場合は授乳も旦那さんの協力を得やすいので、特に夜間授乳の負担が軽減されやすいでしょう。また、旦那さんに赤ちゃんを預けて一人で息抜き、というのもしやすいですね。自分1人の時間をつくりやすいのは、ミルク育児ならではのメリットと言えます。
完ミのデメリットも知っておこう
ただ、メリットがあればデメリットもあるのが世の常。ミルク育児にもデメリットはあります。主には以下のような難点があげられますね。
・経済的な負担が大きい。
・外出時の荷物が多くなる。
・与える量に注意が必要(ほしがるだけあげる、ということがしにくい)。
・母乳より寝かしつけが大変なことも。
ミルク育児での一番のデメリットは、何と言っても経済面ではないでしょうか。完母であればかからないミルク代の出費は、家計にとってはなかなかの痛手となりますよね。市販されている主なミルクは、800gの大缶でおおよそ1,600~3,000円ほどかかります(価格はメーカーや商品によって異なります)。もっともミルクを多く飲む時期では、1回200mlを1日5回ほど飲むことになるので、1日に1リットルがなくなる計算に。800gの大缶でも、思いのほかすぐになくなってしまいます。子育て用品としては、オムツくらい費用がかさむものと言えますね。
また、母乳の場合は夜間授乳を添い乳で済ますこともできますが、ミルクの場合はそうはいきませんよね。夜間授乳が面倒である点も、デメリットと言えそうです。おっぱいをふくんだまま安心して寝る…ということもないので、飲み終わってもなかなか寝ないときは抱っこやゆらゆらなど授乳以外の寝かしつけを試みる必要があり、ちょっと大変かもしれません。
とはいえ、工夫すれば授乳のストレスを少なくできます。
完ミの授乳間隔は?1日のスケジュール例


では、完ミの場合は授乳間隔や1日のスケジュールをどのように定めればいいのでしょうか。月齢別の目安量と回数、スケジュール例について見ていきましょう。
月齢別!完ミの授乳量と間隔の目安
ミルクの1回の量と授乳間隔は、商品ごとの推奨に従うことを基本としましょう。分量などはメーカーによって少しずつ異なる場合もありますが、主には以下を目安としていることが多いです。
月齢 | 1回の量 | 1日の回数 | 授乳間隔 |
---|---|---|---|
生後1週間~半月 | 80ml | 7回 | 3~4時間 |
生後半月~1ヶ月 | 80~120ml | 7回 | 3~4時間 |
生後1~3ヶ月 | 120~160ml | 6回 | 4時間 |
生後3ヶ月以降 | 200ml | 5回 | 4~5時間 |
ただし、メーカーの推奨もそうですが、これらはあくまでも目安です。1回の哺乳量には個人差があり、その日の体調によっても変わってきます。目安量を必ず飲み切らなければならないわけではないので、無理に飲ます必要はありません。体調や食欲に応じて調整してあげましょう。1回の授乳量が少なめだったときは、次までの間隔が短くなることもあるでしょう。赤ちゃんの様子に合わせて、調整してくださいね。
また、1回の量を増やすタイミングは月齢だけでなく、商品に記載された目安体重もひとつの指標です。赤ちゃんの成長には個人差があるので、月齢だけにとらわれず、赤ちゃんの大きさや体重、その時々の食欲との兼ね合いも見ながら量を調整してあげましょう。
離乳食が始まっても母乳のように満足するまでミルクをあげてください。離乳食が進んである程度の栄養を食事で摂れるようになり、赤ちゃん自身も食後のミルクをあまりほしがらなくなれば、進み具合や食べる量に合わせて調整していくといいですね。
タイムスケジュールはどんな感じ?1日の例
1日の授乳スケジュールは、目安量と回数に合わせて決めていきましょう。こちらに関しては母乳、ミルクにかかわらず、何時に飲ませるかは各家庭に合った時間でかまいません。例えば、朝は何時に起きて最初の授乳をするかなどに決まりはないということ。最初に飲ませた時間から目安の間隔を開けながら授乳していくようにすると、自然とスケジュールはできていきますね。そのうえで、できれば毎日決まった授乳リズムを作れるのが理想です。授乳時間に限らず、起床、入浴、就寝など、その他の生活もできるだけ同じ時間にするよう努め、徐々に生活リズムをつくっていけると体内時計が整いやすくなります。
それでは、おおまかな月齢ごとの授乳スケジュール例をご紹介します。
<生後1週間~1ヶ月のスケジュール例>
7:00 | 起床、ミルク |
↕この間 | お昼寝 |
10:00 | ミルク |
↕この間 | お昼寝 |
13:00 | ミルク |
14:00 | 沐浴 |
↕この間 | お昼寝 |
16:00 | ミルク |
19:00 | ミルク |
20:00 | 就寝 |
23:00 | ミルク |
3:00 | ミルク |
<生後1~3ヶ月のスケジュール例>
7:00 | 起床、ミルク |
↕この間 | 遊び、お昼寝 |
11:00 | ミルク |
↕この間 | お風呂、遊び、お昼寝 |
15:00 | ミルク |
↕この間 | 遊び、お昼寝 |
19:00 | ミルク |
20:00 | 就寝 |
23:00 | ミルク |
<生後3ヶ月以降のスケジュール例>
7:00 | 起床、ミルク |
↕この間 | 遊び、お昼寝 |
12:00 | ミルク |
↕この間 | お風呂、遊び、お昼寝 |
16:00 | ミルク |
↕この間 | 遊び、お昼寝 |
20:00 | ミルク |
21:00 | 就寝 |
起床までに | 1度ミルク |
上記は、月齢ごとの目安間隔と回数に沿ったスケジュールの一例です。思うようにいかないことも多いので、参考までに見ていただき、赤ちゃんやご家庭の状況に合わせてスケジュールを組んでください。。
外出時の持ち物は?哺乳瓶はいくつ必要?


ミルク育児のデメリットにもありましたが、ミルクの場合は外出時の荷物が母乳に比べて多くなります。では、実際には何をどれぐらい持っていけばいいのでしょうか?荷物を減らす工夫もあわせてお伝えします。
ミルク育児中の外出時に必要なものまとめ
ミルク育児の場合は、外出時には基本的に以下のものが必要になります。
・粉ミルク
そのときどきに必要な量を持参します。外出時間の長さによって、何回分持参するか決めましょう。万が一のことも考え、少し多めに持っていくと安心ですね。粉を小分けケースやジップロックなどに入れて持ち運ぶこともできますが、外出時はキューブやスティックタイプが楽で荷物にならず、衛生的にもおすすめです。
・哺乳瓶
外出時はプラスチック製のものが軽くておすすめ。安全の面でもいいですね。飲む量に合った大きさのものを、回数分持参するのが基本です。
・熱湯
水筒に入れて持ち運びましょう。水筒は、できるだけ軽くて保温性の高いものを選ぶと便利ですね。ミルクは熱湯+白湯で作るので、熱湯自体は400mlもあれば200mlのミルクを2~3回作ることが可能です。外出の時間にもよりますが、熱湯用の水筒はできるだけ小さくて軽いものを選びたいですね。
・白湯(さゆ)
白湯の持ち運びは水筒もいいですが、大きいサイズの哺乳瓶で代用することもできます。水筒より軽いですし、授乳用の哺乳瓶として兼用で持っていけば荷物をひとつ減らすこともできます。
外出場所によっては、授乳スペースにお湯などが用意されているところもあります。最近は、ファミリー向けのショッピングモールやエンターテインメント施設には設備の整っているところが多いですね。先に確認しておくと持ち物を少なくできるので、事前にチェックしておきましょう。
哺乳瓶1本を使いまわすのはNG?
外出が長時間になるときは、回数に合わせて哺乳瓶を何本も持参しなければなりません。荷物がかさんでいやだな……1本を使いまわしたらダメなのかな?と悩むママも多いでしょう。
基本としては、衛生面を考えても回数分を持参するのがベストです。ミルクは栄養が豊富で、菌が繁殖しやすいため、赤ちゃんの下痢や嘔吐を防ぐためにも使いまわしはやめましょう。
ミルクはいつまで飲ませる?間隔が定まらない…よくある疑問Q&A
最後に、断乳の時期や授乳間隔の悩みなど、よくある心配や疑問についてお答えします。同じ悩みを抱えているママは、ぜひ参考にしてください。
Q.ミルクはいつまで飲ませるべき?
A. ミルクも母乳と同じく、赤ちゃんが食事ですべての栄養を摂取できるようになるまで飲ませる必要があります。離乳食が始まったらすぐ断乳!はいけません。離乳食を食べられるようになったとしても、まだ栄養のほとんどはミルクで得ている状態です。完了食に近づいてきたら、まず食後のミルク、徐々に牛乳に移行していくところから始めましょう。その間、就寝前のミルクなどは引き続き飲ませてください。大人と同じ食事ができるようになったら、赤ちゃんが欲しなくなれば徐々に卒乳を考えるといいですね。
Q.間隔が開かずに飲みたがるときはどうする?
A.ミルクは、基本はメーカーが推奨する量と間隔を守りましょう。ミルクは母乳に比べて消化に時間がかかります。あげたいときにあげるというスタンスでは体重が急激に増加してしまうリスクがあります。
ただし、1回の哺乳量が少ない場合は、授乳の回数を増やすなど調整が必要な場合もあります。赤ちゃんが1度に飲める量やお腹のすき具合を考慮して判断しましょう。飲む量が少なくても機嫌がよく元気で、体重もしっかり増えていれば特に問題はありません。なかなか飲んでくれず、体調や体重の増え方が気になるときは、すぐに医療機関を受診してください。
1回の目安量をしっかり飲んでいる場合は、ほしがるからと安易にあげようとせず、泣いたりぐずるときは抱っこであやす、スキンシップを楽しむなど、他のことで機嫌をよくするよう試み、どうしてもダメなときは少量足すなど、注意しながらあげるよう心がけましょう。
Q.ミルク以外の水分補給は必要?
A.離乳食が始まる前までは、十分な量のミルクを飲んでいれば他に水分補給は必要ありません。離乳食が進んでミルクの量が減ってきたら、お風呂上りや汗をたくさんかいたときなどに適度に水分補給してあげましょう。水分補給には、湯冷ましや麦茶がいいですね。
まとめ
やむを得ずミルクに移行しなければならないときは、母乳で育てられない寂しさや引け目を感じるかもしれません。でも、大切なのは愛情を持って赤ちゃんを元気に育てることです。母乳かミルクかで判断することはありません。ミルク育児ならではのメリットもあるので、ポジティブに自分ならではの育児を楽しんでくださいね。直接授乳ができない分、赤ちゃんとたくさんスキンシップをとって、ママの愛情をたっぷり感じさせてあげましょう。タイムスケジュールや間隔、量など、わからないことや気になることがあれば、地域の保健師や助産師に気兼ねなく相談してください。
(文・構成:マイナビウーマン編集部、監修・解説:坂田陽子先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます