
【医師監修】ミルクを飲んでくれないときはどうすべき?対策と飲ませ方のコツ
母乳とミルクの混合栄養やミルクのみで育児をしていて、赤ちゃんがミルクを嫌がって飲んでくれない、という悩みをもつ方もいることでしょう。そこで今回は、赤ちゃんがミルクを嫌がる理由と、飲まないときの対策などをまとめました。
赤ちゃんがミルクを嫌がる、飲まない原因

赤ちゃんがミルクを飲まない原因は、単純にお腹がすいていないから、というものから、味や乳首が嫌いなど、さまざま考えられます。
お腹が空いていない
赤ちゃんがミルクを飲んでくれない原因を考える前に、まず、赤ちゃんにミルクを飲ませる場合の目安量を見てみましょう。
育児用ミルクの授乳間隔と回数、授乳量の目安[*1]
〈出生後~3、5日〉
欲しがるときに1日8回。初回は10~15mlで、1日~数日ごとに1回10~15mlずつ増やしていく
〈生後1ヶ月未満〉
1日7~8回。0~1ヶ月の間は1回に80ml
詳しくはこちら ▶︎新生児のミルクの量
〈生後1~3ヶ月ごろ〉
1日5~6回。生後1~2ヶ月は1回に120~150mlで、生後2~3ヶ月は1回に150~160ml
詳しくはこちら ▶︎生後2ヶ月の赤ちゃん、ミルクの量と回数
詳しくはこちら ▶︎生後3ヶ月の赤ちゃん、ミルクの量はどうする?
〈生後4~5ヶ月ごろ〉
1日5回。生後3~4ヶ月は1回に200ml
詳しくはこちら ▶︎生後4ヶ月の赤ちゃん、ミルクの量は?
上記はミルクだけ飲ませる場合の量ですが、飲む量には個人差があるので、あくまでも目安と考え、この量を絶対に飲ませなければいけない、というわけではありません。母乳不足が気になりミルクを足している場合は、その子のミルクの適量は上記より当然少なくなります。足しているミルクを飲み切れなくても、体重増加が順調なら、母乳だけで足りていてお腹が空いていないと考えられます。
また、ミルク100%の赤ちゃんでも、少食の場合には上記の目安量を1回で飲みきれないこともあるでしょう。 さらに、離乳食が始まっている赤ちゃんは、上記の目安とはまたずいぶん変わってきます。
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離乳食開始後のミルクについては、詳しくは以下の記事で解説しています。
▶︎離乳食と授乳のバランス<回数・量・順番>母乳やミルクはいつまで?
哺乳瓶の乳首が合わない
混合栄養の場合や、母乳からミルクに切り替えた場合に多いのが、哺乳瓶の乳首が原因で飲まなくなるケースです。乳首の材質やくわえたときの感触などがママの乳首と違っていて嫌なのかもしれません。
また、乳首の穴の大きさによっては、出てくるミルクの量が赤ちゃんに合っていないために嫌がる場合もあります。赤ちゃんのミルクの飲み方には個人差がありますが、哺乳瓶の乳首は月齢を目安にさまざまな穴のサイズや形状が用意されているので、その子の成長に合ったものを選ぶ必要があります。
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哺乳瓶拒否については、詳しくは以下の記事で解説しています。
▶︎突然の哺乳瓶拒否!<体験談>その理由と4つの対処法
ミルクの温度が適温ではない
母乳の赤ちゃんにミルクを足したり、母乳からミルク100%に切り替えたりすると、母乳とミルクの調乳温度の違いが気になって飲まない赤ちゃんもいるようです。
また、調乳時にお湯の温度が高すぎて飲めないということもあるので、授乳前にはミルクが人肌になっているか、ママの手首にたらすなどして必ず確認してから飲ませましょう。
時には、通常よりぬるめが好きな赤ちゃんもいるので、ミルクを嫌がる場合にはいろいろな温度を試してみてくださいね。ただし、衛生上の理由から、ミルクを作る際は、かならず一度沸騰させた「70℃以上」のお湯で作ってから冷ましましょう。
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ミルクの正しい作り方については、詳しくは以下の記事で解説しています。
▶︎ミルクの作り方、総おさらい!準備~調乳~洗浄・消毒のコツ
ミルクの味が合わない
このほかに考えられるのが、単にそのミルクの味がその子には合っておらず飲まないというケースです。赤ちゃんは、ママのお腹の中にいる胎児期からすでにある程度味覚が形作られる、と言われています。そのため、もしかしたらそのミルクの味や匂いがその子の好みに合わないことがあるのかもしれませんね。
環境が落ち着かない
月齢が上がるにつれて、赤ちゃんは周囲のことに関心が広がり興味を持つようになっていきます。すると、授乳のときも気が散って、飲むことに集中できなくなってくることがあります。
特に授乳時にテレビがついている、周囲で人が動いていたり話し声がする、などのことがあると、気になって飲まなくなる子もいるでしょう。
ミルクを飲まないときに試してみたい対処法

ミルクを飲まないときには、ミルクのメーカーや哺乳瓶の乳首、調乳温度や授乳間隔などを変えてみます。元気があって機嫌もいい場合は体調不良とは考えにくいので、まず体重の増え具合をチェックしましょう。
無理に飲ませるのはNG
赤ちゃんがミルクを飲んでくれないとき、ママが一番気になるのは、発育や体重増加に影響しないか、ということではないでしょうか? まずは、本当にミルクの飲む量に問題があるのかを考えるために、赤ちゃんは1日にどれくらい体重が増えていればいいのか、確認してみましょう。
赤ちゃんの体重増加の目安(1日あたり)[*2]
~生後3ヶ月⇒25~30g
生後3~6ヶ月⇒15~20g
生後6~12ヶ月⇒10~15g
これを1ヶ月間で見ると次のようになります。
赤ちゃんの体重増加の目安(1ヶ月あたり)
~生後3ヶ月⇒750~900g
3~6ヶ月⇒450~600g
3~12ヶ月⇒300~450g
上記はあくまで目安ですが、これくらいの範囲で増えているのであれば、ミルクを飲む量が少なくても体重増加は順調と考えて、無理に飲ませなくてもいいのです。
また、生後4ヶ月以降の赤ちゃんは、周囲への興味が広がって授乳に集中できなくなった、自分なりの飲む量が決まってきた、離乳食でお腹が満たされている、などのさまざまな理由で、ミルクの飲み具合が悪くなることはよくあります。
体重の増え具合が目安より少なめでも、少しずつでも増えていて元気で機嫌もいいなら、問題ないことがほとんどです。飲む量は赤ちゃんにまかせていいでしょう。
なお、体重増加などで注意したほうがよいことがある場合は、乳児健診でその都度指摘があると思いますが、ミルクを飲まなくて心配だったり量の調整方法がわからないときは、健診の際、専門家に相談してみましょう。
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赤ちゃんの体重増加の目安については、詳しくは以下の記事で解説しています。
▶︎赤ちゃんの体重は?新生児~1歳までの体重の目安
違う製品にしてみる
単にミルクの味が嫌いで飲まないこともある、と言いましたね。ミルクを飲んでくれないときには、ミルクのメーカーを変えてみると飲むようになることが多いので、まずは試してみましょう。
哺乳瓶を変える
哺乳瓶の乳首をくわえさせるとすぐに出してしまうようなときは、乳首の材質や形が気に入らないのかもしれません。乳首はいくつかのメーカーから、さまざまな素材や形のものが発売されているうえ、月齢によっても選ぶものが変わってきます。今までと違うものを試してみたら、気に入るものが見つかるということもあるでしょう。
お腹を空かしてからあげる
ミルクは母乳に比べて胃の中にとどまっている時間が長いうえ、赤ちゃんによって消化能力にも個人差があります。そのため、使用しているミルクのメーカーが推奨する授乳間隔であっても、お腹が空かない赤ちゃんもいるでしょう。授乳間隔をそれまでより少しあけ、泣いて欲しがる様子が見られてから飲ませてみましょう。
病気の可能性はある?

ミルクを飲まない以外にも、発熱、下痢、嘔吐などの症状があったり、元気がない、機嫌が悪いなどいつもと様子が違うときは、何らかの病気の疑いがあります。いつもの様子が違うときは、早めに受診しましょう。
発熱や病気が原因でミルクを飲まない場合
赤ちゃんも大人と同じように、体調が悪くなると食欲が落ちるので、ミルクを飲まなくなったり飲む量が減ってしまったりしがちです。
急にミルクを飲まなくなったうえ、機嫌が悪い、元気がないなどのときには、まず体温を測ってみましょう。熱はなくても、のどやお腹が痛いなど、何らかの病気や体調不良が原因で飲まなくなることも考えられます。注意したい症状については、このあとの「風邪や発熱かなと思ったらチェックしたいこと」でお伝えします。
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赤ちゃんの発熱については、詳しくは以下の記事で解説しています。
▶︎病院へ行くべき? 赤ちゃんが熱を出したときの対処法
▶︎赤ちゃんが高熱に!4つのケース別対処法
ミルクアレルギーの可能性
ミルクを飲んだ後で吐いてしまう場合は、まれですがミルクアレルギー(正式には新生児‐乳児消化管アレルギーといいます)の可能性も。ミルクアレルギーは、育児用ミルクに含まれるタンパク質などに対する過剰反応です。通常イメージする即時型食物アレルギーとは症状が異なります。即時型食物アレルギーは摂取後すぐに、じんましんや呼吸障害などの症状が現れたりしますが、ミルクアレルギーはそれほど多くなく、嘔吐や血便、下痢といった消化器症状がおもであり、症状が出るまでに1、2時間から長い場合だと数日かかってきます。
加えて、体重も増えなくなりますが、他の症状はなくて体重だけ増えないというケースもあります。いずれにしても、ミルクアレルギーが疑われる場合は、早めに小児科を受診して相談しましょう。
体調が悪いのかなと思ったらチェックしたいこと

ミルクを飲まなくなり、何らかの病気が疑われるときには、どんな症状が出ているかをチェックします。さらに、普段と比べて呼吸や赤ちゃんの様子に違いがないかも、よく見ることが大切です。
嘔吐はしていないか
ミルクを飲まなくなったうえに嘔吐が見られ、特にくり返し吐くようなときには、一般的に疑われる病気として、ウイルス性胃腸炎や胃食道逆流などがあります。また、あまり一般的ではありませんが、先ほどのミルクアレルギーのほか、胃の出口が狭くなる幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)や腸がねじれてしまう中腸軸捻転(ちゅうちょうじくねんてん)といった重度な病気でも、嘔吐が見られます。
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子供・赤ちゃんの嘔吐については、詳しくは以下の記事で解説しています。
▶︎子供の嘔吐の原因、病院を受診するタイミングは?
おなかが張っていないか
赤ちゃんのおなかが張っているようであれば、便秘やガスだまりの可能性があります。この場合、「うんちのときに激しく泣く・不機嫌になる」のほか、「ミルクや母乳の飲みがよくない」「ミルクや母乳を吐きやすい」などの様子が見られることもあります。
また、便秘以外に腸の病気の可能性も考えられます。中腸軸捻転は激しい嘔吐に加え、顕著なおなかの張りが特徴です。この病気はまれですが、起こる場合には生後1ヶ月以内であることが多く、赤ちゃんが急にミルクを飲めなくなったり激しく吐いたりするときには注意が必要です。
おなかの張りやその他の症状が見られたら、まずは医療機関で原因を調べてもらいましょう。
なお、軽度な便秘であれば、綿棒でおしりを刺激すること(綿棒浣腸)や、市販の浣腸液(グリセリン浣腸)の使用でよくなることも(浣腸液を使用するにあたっては医師と相談しましょう)。生後半年くらいまでの赤ちゃんであれば、綿棒の刺激だけで出ることが多いです。ガスだまりの場合には、指先で「の」の字を書くようにおなかをマッサージする方法や、綿棒の刺激でおならが出やすくなることもあります。
便秘や綿棒浣腸のやり方について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶綿棒浣腸のタイミングと方法、便秘の見極め方と繰り返さない対策
おなかの張りについては、以下の記事も参考にしてください。
▶新生児のお腹がパンパンに!主な原因と対処法
熱はないか
発熱も病気のサインです。熱がある場合は、第一に風邪を疑う人が多いでしょうが、風邪以外の感染症の可能性も考えられます。赤ちゃんがかかりやすいものには、ウイルス性胃腸炎、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、尿路感染、突発性発疹、インフルエンザ、ヘルパンギーナ(※)などがあります。
※夏場に流行する乳幼児に多いウイルス性の感染症で、発熱と口の粘膜の水ぶくれのような発疹が特徴
特に38℃以上の高熱は異変のサインですが、熱の高さだけでは重症度は測れないため、受診する場合は、熱のほかにどのような症状があるかも詳しく伝えると、医師の診断の助けになります。
また、赤ちゃんは大人よりも体温が高い傾向があるので、発熱の程度を判断するには、普段の平熱を把握しておくことも大切になります。
赤ちゃんの熱について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
▶赤ちゃんの体温の特徴は?SIDSの防ぎ方と発熱の目安
息苦しそうにしていないか
赤ちゃんがかかりやすい病気の中には、呼吸器症状が見られるものもあります。ミルクを飲まなくなって機嫌も悪いときや元気がないときは、赤ちゃんの呼吸の状態や鼻づまりの有無もよく見ましょう。
呼吸がいつもより多く苦しそうにハァハァしているときは肺炎になっていることがあります。また、「ゴホン、ゴホン」と痰のからんだ咳が出たり、呼吸のたびにヒューヒュー・ゼエゼエして苦しそうなときには、RSウイルスによる感染症で細気管支炎を起こしている可能性もあります。
赤ちゃんの呼吸器症状について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
▶【医師監修】子供の咳が止まらない! 原因と対処法
他にもいつもと様子が違うときはすぐ病院へ
最後に、受診の目安となる症状をまとめてお伝えします。ミルクを飲まないほか、次のような症状がある場合には、すぐに受診しましょう。
・3ヶ月未満児で38℃以上の発熱がある
・1週間以上の便秘とおなかの張りがある
・便の色がおかしい(黒い便やイチゴジャムのような便など)
・くり返し吐く
・顔色が悪くぐったりしていて、呼びかけても反応がにぶい
・水分がとれなくて、おしっこが半日以上出ていない
・初めてけいれんを起こした
・呼吸がおかしい、苦しそう
・全身に広がるじんましんがある
・頭をぶつけた
・何かを誤飲した可能性がある
判断に迷うときは、小児救急電話相談を利用してみてください。
▶こども医療でんわ相談(厚生労働省)
まとめ

赤ちゃんがミルクを飲んでくれないと、たとえ元気があっても心配になりますね。ミルクの味や哺乳瓶の乳首が嫌いなどの理由で、飲んでくれない赤ちゃんもいるものです。原因をさぐりつつ、あれこれ試してみましょう。
ほかにも、さまざまな理由で飲まなくなることがありますし、原因がわからないこともありますが、気になるときはまず、体重の増え具合をチェックしましょう。少しずつでも順調に増えているならあまり神経質にならず、赤ちゃんの飲むペースにまかせて、しばらく様子を見ることも大切です。
ミルクを飲んでくれない以外にも、赤ちゃんの体調にここで紹介したような異変が見られる場合は医療機関を受診してください。
(文:村田弥生/監修:丘逸宏 先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます