【医師監修】赤ちゃんの指しゃぶりいつやめさせるべき?対応のポイントと注意点
赤ちゃんがさかんに指しゃぶりをするのを見て、骨や歯への影響が気になるお母さんやお父さんもいることでしょう。そんなお母さん・お父さんのために、赤ちゃんが指しゃぶりをする理由や年齢ごとの対応策、やめさせたい時の注意点などを説明します。
指しゃぶりをする理由
指しゃぶりの始まりは授乳の練習
指しゃぶりは、赤ちゃんがお腹の中にいるころから行っていることを知っていますか?
胎生14週ごろになると胎児は口に手を持っていくようになります。胎生24週ごろからは指を吸うようになり、胎生32週くらいになると指を吸いながら羊水を飲み込むようになります。
胎内でこのように指しゃぶりをするのは、生まれてすぐに母乳を飲めるようになるための練習であり、生きていくために欠かせない大切な行為です。
発達の一環でしゃぶるように
胎内で指をしゃぶっていた赤ちゃんですが、生まれてしばらくは指をしゃぶりません。
生後2~4ヶ月になると口のそばに来た指や物を反射的に吸うようになります。やがて生後5ヶ月ごろからは、指だけでなくいろいろなものを口に持っていってはしゃぶるようになります。
この時期、指やいろいろなものをしゃぶることは、目で見て手を動かすという目と手を協調させた動きを身につけるために役立ちます。また、いろいろなものをしゃぶることで、味や形、状態などを知ることができるのです。
このように生後12ヶ月までに指やいろいろなものをしゃぶるのは、発達過程で見られる自然な行為です。
つかまり立ちや伝い歩き、ひとり立ち、歩き始めは指しゃぶりをしながらではやりにくいため、つかまり立ちや伝い歩き、ひとり立ち、歩くといった動作をするようになると自然としゃぶる行為が減っていく傾向があります。
そのため、生後12ヶ月までは指をしゃぶっていても焦ってやめさせようとしないで、気長に見守っていくといいでしょう。
年齢と指しゃぶり
実際に年齢と指しゃぶりの頻度について調べた研究結果も見てみましょう。
2002年に東京都K区で行われた調査結果によると、1歳2ヶ月の子どもの指しゃぶりの頻度は28.5%、1歳6ヶ月では28.9%、2歳0ヶ月では21.6%、3歳0ヶ月では20.9%でした。2歳以降は減っていってはいるものの、指しゃぶりの頻度は20%台となっています。
3歳以降はどうなるのでしょうか。
1996年に山形県T氏周辺で行われた3歳児健診での調査によると、指しゃぶりの頻度は住んでいるエリアによって差は見られたものの、12.9~19.4%でした。また、2005年には4歳以降になると指しゃぶりの頻度は減っていくという研究結果も発表されています[*1]。
一般的に、1歳代よりも2歳代の方が指しゃぶりの頻度は減るもののまだまだ指はしゃぶっていて、4歳以降まで頻度は減っても指しゃぶりは続くことが多いといえそうです。
指しゃぶりによるトラブル
噛み合わせや呼吸、発音にも影響します
指しゃぶりを続けていると、歯並びや噛み合わせに影響することはよく知られています。
どの指をしゃぶっているか、どんなふうにしゃぶっているかでその影響は変わりますが、指しゃぶりは基本的に次のようなトラブルへと繫がります。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
出っ歯。上の前歯が前の方に出てきます。
開咬(かいこう)
上下の前歯の間にすき間ができます。
片側性交差咬合(へんそくせいこうさこうごう)
上下の奥歯が横にずれてしまって、歯の中心が噛み合わなくなります。
舌癖(ぜつへき)
上顎前突、開咬、片側性交差咬合など歯並びの異常が見られるようになると、歯の間にできたすき間に指を押し込んだり歯を舌で押すなどの舌癖が出やすくなります。
構音障害(こうおんしょうがい)
舌癖があると話す時に前歯のすき間に舌が入るようになって、サ行・タ行・ナ行・ラ行などが舌足らずな発音になることがあるのです。
口呼吸
出っ歯になるとくちびるが閉じにくくなり、口を開ける癖がついて口呼吸をしやすくなります。
顎(あご)の不十分な発達
噛み合わせが悪くなるとしっかりと噛みづらくなり、噛む行為が減ってしまいます。噛む回数が減ると顎の運動が減るため、顎の筋肉や骨が十分に成長しにくくなります。
噛み合わせに影響する時期
指しゃぶりが噛み合わせに影響するようになるのは、何歳ごろからなのでしょうか。
1歳6ヶ月、2歳、3歳、5歳の歯科健診を調べた過去の研究によると、2歳から指しゃぶりをしていると出っ歯(上顎前突)が多く見られるようになってきます。さらに5歳で指しゃぶりをしている子を見ると、出っ歯がより多く見られました。
小児歯科の視点から見ると、指しゃぶりをしていると歯並びや噛み合わせに影響するのはもちろん、お口の機能も健全に育ちにくくなります。
そのため、4~5歳を過ぎても指しゃぶりをしている場合はやめさせるように促した方がいいと言われています。4歳以下でも、指しゃぶりが習慣になりそうな場合は、将来悪い影響が起こる前に早めにやめさせてあげたいですね。
指しゃぶりへの対処方法
指しゃぶりが見られたら、具体的にはどんなふうに対処した方がいいのでしょうか。年齢ごとに見ていきましょう。
生後12ヶ月まで
生後12ヶ月までの指しゃぶりは、発達過程で起こる自然な行為です。焦ってやめさせようとしないで、気長に見守るようにしましょう。
1~2歳まで
遊びが広がるにつれて、昼間の指しゃぶりは減っていきます。ただし退屈な時や眠い時にはまだ指しゃぶりが見られます。子どもが指しゃぶりをしていても、あまり神経質にならないで、子どもの毎日の様子をあたたかく見守っていきましょう。
ただし、次のような場合には4~5歳ごろに指しゃぶりが習慣とならないように、小児科医や小児歯科医、臨床心理士などに相談しておくと安心です。
・親が指しゃぶりを非常に気にしている
・一日中頻繁に指をしゃぶっている
・指を強く吸い過ぎて指ダコができている
3歳~就学前まで
この時期に保育園や幼稚園で子ども同士で遊び、社会性が育っていくと、指しゃぶりが習慣になっていても自然とやらなくなることがよくあります。
指しゃぶりを頻繁にしていたら、小児科医、小児歯科医、および臨床心理士に相談してやめるためにできることを考えていきましょう。
小学校入学後
このころには指しゃぶりはほぼ見られなくなります。
小学生になっても指しゃぶりをすごくやりたがったり、指しゃぶりをやめたいのにやめられない場合は、小児科医、小児歯科医、および臨床心理士に協力してもらって積極的にやめる工夫を探していきましょう。
なお、子どもをしかりつけても指しゃぶりを減らしたりやらなくさせることはできません。
指しゃぶりをやめさせたいと思ったら、子どもとたっぷりと遊んだり、相手をしてあげましょう。少しでも指しゃぶりが減ってきたら、子どもをほめてあげることも大切です。
おしゃぶりをあげるのは逆効果!
指しゃぶりをやめさせようとしておしゃぶりをくわえさせてはいませんか? 実はおしゃぶりも噛み合わせや歯並びに悪い影響を与えます。
おしゃぶりも噛み合わせに影響します
小児歯科では、おしゃぶりを長期的に続けていても、乳歯の噛み合わせや歯並びに悪い影響が出ると考えています。
おしゃぶりの影響は指しゃぶりよりは少ないのですが、いつまでもおしゃぶりを使い続けていると乳歯の前歯が開咬になりやすいことが知られています。歯並びや噛み合わせを悪くしないためには、おしゃぶりは2歳までにやめるのがおすすめです。
おしゃぶりを今使っている場合は
おしゃぶりを使ったことで歯並びや噛み合わせにトラブルが起きても、2歳ごろまでにおしゃぶりを使うのをやめれば、発育とともに歯並びや噛み合わせは改善していきます。
おしゃぶりによる歯並びや噛み合わせのトラブルが治らなくなるのは、2歳半~3歳過ぎになってもおしゃぶりを使い続けている場合です。
おしゃぶりをやめさせるには、指しゃぶりと同じように子どもを叱りつけるのではなく、子どもとの関わり方を見直すことがポイントです。
おしゃぶりをやめさせたいと思ったら、子どもと一緒に遊んだり声をかけたりと、子どもとの触れ合いを大切にしましょう。子どもがしてほしいと感じていることややりたいと思っていることにはできるだけ応えてあげることも大切です。
なお、4歳を過ぎてもおしゃぶりがやめられない場合には、かかりつけの小児科で子どもの情緒面とともに相談しておきましょう。
まとめ
指しゃぶりは胎児のうちから始まり、産後は再び生後2~4ヶ月ごろから見られるようになる、発達の上で自然な行為です。一般的には成長とともに指をしゃぶる頻度は減っていきます。
指しゃぶりを長らくやめられないと歯並びや噛み合わせに悪い影響が起こりやすくなります。そのため、できれば2歳、それが難しければ3歳くらいには指しゃぶりをやめるための工夫を心がけましょう。
また、指しゃぶりをやめさせたくておしゃぶりを与えるケースもありますが、おしゃぶりも噛み合わせが悪くなる原因なので、指しゃぶりの代わりにおしゃぶりを与えるのはやめましょう。
指しゃぶりやおしゃぶりが続いていたら、自然に頻度を減らしていけるように、子どもを叱りつけるのではなく、子どもとたっぷり触れ合って子どもの気持ちが満たされるように心がけましょう。専門家の手も借りてスムーズに止める方法を探していきたいですね。
(文:大崎典子/監修:大越陽一先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます