【医師監修】子宮頸管の長さ|子宮頸管が短い場合の早産との関係と対策
主治医から「子宮頸管が短い」として今後の治療などについて説明を受けたものの、十分な理解ができなかった。そのようなケースは間々あるようです。体調や妊娠経過などは個別性が大きいことですから、どのような説明についても、不安や不明な点は率直に伝え、十分に聞いて、自分の状態を理解することが大切です。
子宮頸管の長さって普通はどのくらい?
最初に子宮頸管の通常の長さや場所、そしてどのような役割をもっているかを解説しましょう。
子宮頸管の長さ|妊娠7ヶ月の平均で35mm
・妊娠初期〜中期(16~27週):約40mm
・妊娠7ヶ月(24週の平均):約35mm
・妊娠9ヶ月(32週)以降:約25〜30mmに短縮
子宮頸管の場所|子宮の出口部分と腟の間
女性の子宮は「子宮体部」と「子宮頸部」に分けて見ることがあり、妊娠した女性の子宮頸部の内側(管状の部分)を子宮頸管と呼びます。
子宮頸管は子宮の一部であり、内子宮口(子宮の赤ちゃん側からの出口部分)と、外子宮口(腟の奥)との間にあります。
子宮頸管の役割|妊娠の維持に役立つ
妊娠すると子宮頸管は粘液栓で感染予防しながら、強度を保って妊娠の維持に役立つものの、徐々に短くなります。そして出産が近づくと全く様子が変わり、徐々に柔らかく、さらに短くなります。子宮口が開き、分娩直前に産道が整うときには見かけ上は消失しています。
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なお、妊娠していない時期の子宮頸部は閉じていての内側は狭く、分泌物(頸管粘液)で栓(粘液栓)をするように腟と子宮腔の間を遮断し、細菌などの侵入を防ぐ役目を(感染予防)果たしています。また、生理周期の中で分泌液の性状(性質と状態)を変化させ、排卵の時期以外は精子が子宮内に侵入しにくい性状になっています(受胎調節)。
「子宮頸管が短い」ってどういうこと?
妊娠によって子宮頸管は変化します。しかし、まだ出産予定日まで期間があるのに子宮頸管が短くなる場合ばあります。
著しい子宮頸管の短縮は切迫早産のリスク因子に
しかし、著しく短縮している場合、切迫早産のリスク因子と考えられることがあります。
早産リスクについて、妊娠24週において頸管短縮のない人(平均約35mm)と比べた研究結果には以下のようなものがあります[*3]。
・子宮頸管長が25mm未満の場合:早産リスク約6倍
・子宮頸管長が13mm以下の場合:早産リスク約14倍
とはいえ子宮頸管が短くなることは妊娠経過によって起こる生理的な変化でもあり、また、そもそも“もとの長さ”に個人差があります。そのため頸管長について、生理的な短縮と評価するか、著しく短縮していると評価するかは測定のタイミング(妊娠週数)、もとの長さとの比較、妊婦の体調や既往歴などと併せて判断されます。
妊婦健診の目的のひとつは、早産になりやすい状況を早い段階で見つけ、早産予防への対処をすることです。頸管長だけでなく、さまざまな視点でリスクを見逃さないように診察する必要があるので、決められた妊婦健診を受けることがとても大切になります。
ただし、子宮頸管が短くても、そのまま正期産の時期まで何事もなく出産する人もいます。頸管の長さだけに神経質にならないようにしましょう。
(松峯先生)
■早産とは
切迫早産とは「早産となる危険性が高い状態」のことで、早産とは「妊娠22週0日から妊娠36週6日までの分娩」のことです。日本での早産の割合は約5%とされています[*4]。
早産では、生まれてくる赤ちゃんが未熟なため合併症のリスクがあり、特に週数が早い場合には生命に関わることもあります。
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子宮頸管が短い場合の対処法は?
では、子宮頸管が短い場合はどのような対処がなされるのでしょうか。
30mm以下は要注意、25mm未満だと入院することが多い
一般的に、妊娠24週未満で頸管長が30mm以下であれば「切迫早産の兆候」と見て注意が必要と考えられ、さらに25mm未満では、多くの場合は入院によって管理します。
ただし先にも述べた通り、頸管長の数値だけで対処法が決まるのではありません。
主治医は専門的な指標(Tocolysis Index)とも照らし合わせ、「頸管長」に加え、「お腹の張り具合・痛み(子宮収縮)」「破水の有無・状態」「出血の有無」「頸管の開き具合」などから総合的に次のような対処法を選びます。
・自宅安静(次回の健診日を早めに設定することも)
・自宅安静と子宮収縮抑制薬の内服
・入院による安静や子宮収縮抑制薬の点滴
主治医から「自宅安静」と言われたら横になって休んで過ごす
治療のための「安静」には様々なレベルがあり、状態によって安静度が変わります。子宮頸管の短縮があり、医師から「自宅で安静にしていてください」との指示があったら、まずはどのくらいの安静が必要なのか、どんなことを避けなければいけないのかを尋ねるといいでしょう。
基本的には、仕事や家事をせず体を休める必要があり、ただ家にいればいいということではなく、トイレ以外はほとんど横になって休んでいる状態を指しているので、必要なら医師の診断書をもらって職場対応などをしましょう。
早産を予防するために大切なことは安静。薬などは補完的な役割であり、無理は禁物です。
自宅安静と言われたら、原則として仕事や家事は休んでください。子宮収縮抑制薬を飲みながら普段通りに働いたり、家事をするのでは治療の意味がありません。どうしても環境的に自宅安静が難しい場合は、入院になる場合もあります。
(松峯先生)
まとめ
妊娠週数を追うごとに子宮頸管が短くなることは、妊娠の生理的な変化ですが正期産前の著しい短縮は早産のリスク因子のひとつと考えられます。早産のリスクが高い状態である切迫早産と診断された場合、場合によっては入院するなどして管理する必要があります。
定期的に妊婦健診を受け、不安や不明な点については主治医からよく説明を受けて、どうぞ安心してお過ごしください。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1]日本医師会 知っておきたいがん検診 子宮頸がん検診 子宮頸がんとは?
[*2]日産婦誌61巻9号 N264〜 切迫早産の頸管長による予知・管理.pdf
病気がみえるVol.10産科 第4版
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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