【医師監修】内診グリグリ(卵膜剥離)のタイミングは? 陣痛が来る? 痛いもの?
妊産婦さんの間では“内診グリグリ”と通称される「卵膜剥離(らんまくはくり)」についてまとめます。どのような場合に必要になる処置で、何を期待して行われるのでしょうか。専門医の松峯美貴先生に話を聞きました。
「内診グリグリ」ってなに?
俗に「内診グリグリ」とも呼ばれる卵膜剥離(らんまくはくり:卵膜用手剥離ともいう)とは、赤ちゃんや母体の安全を考え、なるべく過期産にならないよう配慮して病院で行われることがある処置のひとつです。
子宮頸管を分娩できる状態にするために
自然な分娩のプロセスは、次のような流れで進みます。
子宮頸管の熟化 → 陣痛 → 分娩
子宮頸管の熟化とは、簡単に言うと頸管のやわらかさや開き具合などの程度が出産に適した状態になること。分娩の前段階で、欠かせない変化になります。 陣痛がきても頸管が熟化していない場合には分娩が妨げられ、微弱陣痛につながったり、過強陣痛(かきょうじんつう:強すぎたり、間隔が短すぎる陣痛)を引き起こすことがあります。
そこで、熟化を促して分娩につながる状態に整える目的で、内診時に卵膜剥離などの処置法が検討されます。
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卵膜剥離だけで必ず陣痛が起きるとは限らないものの、陣痛が起こる可能性があり、自然な分娩に結びつくのは大きなメリットです。痛みをともなうことであるためか、ネガティブな印象をもたれている面があるようですが、行うことの意義も理解してもらえればと思います。
主治医とよく相談して分娩までのことを考え、自分と赤ちゃんにとって適したケアを受けるのが望ましいでしょう。
頸管に指を入れて卵膜を剥がす
処置は、内診の時に医師が子宮頸管内に手指を入れ、卵膜の一部を子宮壁から剥がします。卵膜や子宮壁がこのような刺激を受けると、ママの体の中では頸管の熟化を促すホルモンが分泌されます。すると自然な陣痛が起き、分娩につながることもあるのです。
内診グリグリはいつ行われる?
◆正期産:妊娠37週0日〜41週6日目のお産
・予定日:妊娠40週0日
・予定日超過:妊娠40週1日〜
◆過期産:妊娠42週0日からのお産
予定日過ぎなど必要に応じて
そこで、過期妊娠となる前の、予定日を超過した妊娠41週あるいは 妊娠42週には分娩誘発を行う医療機関が多くなりますが、その前処置として重要と考えられているのが “内診グリグリ” です。
実際のタイミングは妊婦さん個々で異なる「子宮頸管の熟化」の程度と予定日、希望する分娩のスタイルなどから決まり、正期産となる37週以降、38週や39週に内診グリグリを行うこともあれば、予定日を過ぎてから行われることもあります。
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内診グリグリは痛いってほんと? 血が出る?
「内診グリグリが痛かった!」などの体験談を聞くと、大丈夫かなと不安になる人もいるでしょう。実際痛いものなのでしょうか。
痛みを感じることが多いが長引かない
施術時には痛みを感じることが多いですが、一般的に痛みは長続きしません。ただし、痛みの感じ方には個人差があるので、心配な人は事前に主治医とよくコミュニケーションをとり、処置についてよく理解しておきましょう。
また内診グリグリの後、少量の出血が見られることもあります。
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内診グリグリをしたら、すぐに陣痛は来る?
内診グリグリを一度すれば必ず子宮頸管の熟化が起こるとはいえません。一度で十分に熟化する人もいれば、二度、三度の処置が必要な人もいます。
さらに、子宮頸管が熟化してもすぐに陣痛がこないこともあるので、その場合は子宮収縮薬などで分娩誘発をすることもあります。
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内診グリグリはみんな必ずされるもの?
産科では熟化の程度を専門的な基準(Bishopスコア)に基づいて判定し、子宮頸管の熟化を促す必要がある人に対してのみ卵膜剥離などを行うので、すべての妊婦さんに行われるわけではありません。
主治医は妊婦健診などで診察結果から内診グリグリの必要があれば、いつごろ行うべきかを判断し、伝えてくれるでしょう。その後、どのような分娩が望ましいか、主治医と相談して方針を確かめることになります。
最近はどのような分娩を望むか、具体的な希望を述べるママも増えました。
『できれば内診グリグリだけで(誘発剤などは用いず)自然な分娩につながるよう経過を見たい』など、希望を聞けばなるべく望み通りになるように配慮していますが、状態によっては母子の安全のために別の選択が必要な場合もあり、それを提案することもあります。
(松峯先生)
まとめ
「子宮頸管の熟化」という分娩に欠かせない状態に整える必要がある場合、“内診グリグリ”と通称される卵膜剥離が行われます。期待されるのは自然な陣痛発来につながることですが、処置には痛みがあるので受ける場合は事前に主治医からの説明をよく聞き、ぜひ安心して受けてください。
ほかにも出産までに不安なことなどがあれば主治医に相談し、リラックスをして出産にのぞみましょう。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1] 病気がみえるVol.10産科 第4版 , メディックメディア, 2018.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます