
【専門家監修】ソフロロジー式分娩・ラマーズ法の効果は?薬を使わずに陣痛を和らげる方法
もうすぐ赤ちゃんに会えるのは楽しみだけど、陣痛がつらいのではないかと悩んでいませんか? 無痛分娩も興味あるけど、薬は使いたくない! そんな人におすすめなのがソフロロジー式分娩法とラマーズ法。今回は呼吸方法を中心に紹介します。
痛みを和らげる分娩法って?
出産の時に不安な気持ちや恐怖心が強いと、体が緊張して分娩の痛みが強くなってしまいます。
出産を経験した人に聞くと、お産の最中にリラックスして、緊張を和らげるために役立ったこととしてまず挙げられるのが、長く息を吐く呼吸法です。長く息を吐く呼吸法には、お産の痛みが楽になった、産まれてきた赤ちゃんが元気だった、というメリットもあると言われています。
長く息を吐く呼吸法で代表的なものに、ソフロロジー式分娩法やラマーズ法があります。
ソフロロジー式分娩法とラマーズ法にはリラックス方法なども含まれていますが、ここでは呼吸方法に注目して紹介します。
ソフロロジー式分娩とは


ソフロロジー式分娩の歴史
様々な医療で活用されるソフロロジー
ソフロロジーは1960年代に、スペインの精神科医のアルフォンソ・カイセド博士が提唱した学問です。ソフロロジーという言葉は「ソ=調和・平穏・平安・安定」「フレン=心気・霊魂・精神・意識」「ロゴス=研究・論議・学術」という言葉から作られたもので、精神の安定と調和をめざしています。
分娩法が有名ですが、その他にも精神科、循環器科、消化器科、歯科などさまざまな医療で活用されています。
ソフロロジー式分娩とは
出産のようにストレスの強い未知のできごとに立ち向かう時には、誰でも本能的に緊張したり恐怖心を感じたりするものです。他の分娩法でも見られますが、ソフロロジー分娩法でもすべてをあるがまま、前向きに受け入れるという東洋的発想と、欧米でのリラックス法を結びつけて緊張や恐怖心に対応しています。
日本には1987年、松永博士によってフランスから取り入れられました。それ以来、産婦人科の出産準備教室などでソフロロジー法のイメージトレーニングや体操、呼吸訓練が取り入れられてきました[*1]。
ソフロロジー式分娩法の実際
ソフロロジー式分娩を推奨している産婦人科の出産準備教室などでは、ソフロロジー法の音楽を聞きながらイメージトレーニングやエクササイズを行っているところもあります。
ソフロロジー式分娩法で最初に大切となるのは、心と体が緊張しているか、リラックスしているかを認識できるようにすること。認識できるようになるにつれて、「どうすれば自分がリラックスできるのか」がわかるようになるとされています。さらにお産に向けてソフロロジー法の呼吸法を行うことで、痛みや緊張を感じても、リラックスした状態に戻れるようにしていきます。
陣痛を逃す姿勢は、骨盤やその周りの筋肉を弛緩させるようなあぐらの姿勢がおすすめです。痛みを感じたら、ヨガのように深くゆったりした腹式呼吸をくり返します。息を吐く時は、ロウソクの炎を消すように細く長く吐くようにします。息を吸うときはあまり意識しなくても大丈夫です。ソフロロジーはお産の序盤から終わりまで、このリラックスした腹式呼吸を繰り返し、心と体の緊張がほぐれた状態で赤ちゃんの誕生を迎えます。リラックスした腹式呼吸は、出産時の体力の消耗を抑えることができるとも言われています。呼吸とともに、前向きなプラスのイメージをすることも大切です。
こうして全身をリラックスさせることで、スムーズな出産をめざしていきます。
ラマーズ法とは
ラマーズ法の歴史
ラマーズ法は、当時のソビエトで行われていた「精神予防性無痛(和痛)分娩」を、フランスのラマーズ博士が改良して提唱した方法です。
日本では1960年代の末に行われるようになりました。
ラマーズ法では、妊娠期からお産の仕組みを学び、不安を減少してリラックスしたお産を目指しています。お産の仕組みをしっかり学びながら不安を減らすとともに、さらに呼吸法や筋肉のコントロール法を練習することで、緊張をほぐして力を抜く弛緩法を身につけます[*2]。
ラマーズ法の呼吸方法
ラマーズ法では、緊張とリラックスのバランスを整える「弛緩法」と、お産の時に弛緩法を行うための「呼吸法」が大切とされています。
ラマーズ法を推奨している産婦人科では、出産準備教室などでレクチャーしてもらうこともできますし、本やDVDなどを通して覚えることもできます。ここでは簡単に、ラマーズ法に改良を加えた新ラマーズ法と呼ばれる方法の呼吸法を説明します。
1 お産の始まりの頃~基礎になる呼吸法~

ラマーズ法の呼吸法は、吐くことからスタートします。
吐いたら自然に任せて息を吸うのを、30~60秒に6~12回行います。
2 お産の中盤から終盤~ヒー・フー式~

痛みが少し強くなって子宮口が3~5cmぐらい開いたら、この呼吸法を行います。陣痛の波が始まったなと思った時に、まず大きく「フ―」とため息をつくことから始めます。その後、少し短めに「ヒー」、長めに「フー」と言いながら息を吐きます。ここで注意したいのが、「ヒー」「フー」は両方とも息を吐く時に言うということ。息を吸うのは自然に任せましょう。
リズミカルに、自分のスピードで呼吸をくり返します。

お産が進むにつれて、だんだんと肛門のあたりが赤ちゃんの頭で押されたり、いきみたくなったりします。
短く「ヒー」または「ヒッ」と息を吐き、次に「フー」とできるだけ長く吐いていきましょう。
3 子宮の出口が全部開いたら~フー・ウン式~

今までのように息を吐いてもいきみを逃しきれなくなったら、「フー・ウン」式の呼吸法をしましょう。
「フー」と息を吐いたら、喉から上の方に向けて「ウン」と軽く声を出し、いきみを逃します。
赤ちゃんの頭が見え隠れするようになり、助産師や医師から「いきんで!」と言われたら、短く「フー」と息を吐いた後に、「ウン!」と言いながら思い切りいきみます。
この時のポイントは、長くいきまないことです。
4 赤ちゃんの頭が出てくるとき~フー・フー式~

赤ちゃんの頭が出てくる時には、「フー・フー式」の呼吸法を行います。
助産師から「いきまないで!」と声を掛けられるので、「ウン」といきむのをやめて「フー・フー」のみの呼吸に切り替えます。深くゆっくりと息を吐きながら全身のちからを抜き、ゆっくりと赤ちゃんを迎えてあげます。
「フー」「フー」と息を吐き、深くゆっくりと全身の力を抜き切りましょう[*3]。
◆参考元:新ラマーズ法研究会
http://www.lamaze.gr.jp/index.html
まとめ


ソフロロジー式分娩法もラマーズ法も、お産への不安な気持ちや恐怖心を軽くして、心身ともにリラックスしながらスムーズな出産をめざしていくための方法です。呼吸法が有名ですが、そのほかにも緊張と弛緩のバランスを取る、前向きなイメージを描くなどのステップも大切。産婦人科のパパママ教室などで受講できる他、書籍、DVDなどを通して身につけることができます。ソフロロジー法やラマーズ法の他にも、リラックスしながら前向きにお産に取り組むための方法はあるので、かかりつけの産婦人科で助産師の方に聞いてみるのもいいですね。
これらの方法はすべての人に等しく効果があるものというわけではないですが、「痛い」「つらい」というイメージがつきまといがちなお産に、自分でいいなと思えるものを取り入れ、少しでもポジティブな気持ちで取り組んでいきたいですね。
(文:大崎典子/監修:太田寛先生、星瑞恵先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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