【医師監修】排卵日とは?妊娠しやすい日との関係と予測方法
妊活をする上で重要といわれる排卵日。そもそもどんな日のことなのか、いつ起こるのか、なぜ妊娠のために重要なのか、などの “排卵日の基本” を知って、妊娠の確率をあげるために活かしましょう。自分の排卵日を予測する方法もあわせて紹介します。
排卵日って何?
排卵日とは、女性の卵巣にある卵胞から卵子が排出される日のことです。
排卵が起こるまで
女性の卵巣には自身が胎児のときから原始卵胞(❶)があり、それぞれに卵子がひとつ入っています。子供のころには卵子の成長は止まって眠ったようになっています。
生理(月経)が始まるころになると、脳下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されることで卵胞(卵子の入った袋)が成長を始めます。同時に卵胞から卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌され、子宮内膜(赤ちゃんのベッド)を厚くさせます。そして卵胞が充分な大きさになり、卵胞ホルモンの分泌量がピークとなるころに、脳下垂体が排卵を促す黄体形成ホルモン(LH)を分泌。すると卵子が卵胞を破って飛び出ます。これが排卵(❹)で、排卵が起こった日が排卵日です。
排卵が起こった後
排卵された卵子は卵管采に取り込まれます。一方、排卵後の卵胞は黄体へ変化し(❺)、妊娠を継続させる黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。妊娠が成立すると、黄体はしばらく黄体ホルモンの分泌を続けます。妊娠しなかった場合は14日ほどで黄体はしぼんでいき、ホルモンの分泌がなくなります(❻)。すると子宮内膜がはがれ落ち、生理が始まります。生理は妊娠しなかった結果として起こる現象です。
排卵の頻度は?
排卵はおよそ1ヶ月に1度、片方の卵巣で起こります。卵胞刺激ホルモン(FSH)の刺激によって複数の卵胞が成長を始めますが、排卵するまで成熟するのは1つだけのことがほとんどです。つまり、月に1度、1つの卵子が排卵されていることになります。また、生理の周期が長い人は、排卵の頻度が少ないということです。
排卵日と妊娠の関係
妊娠は、排卵(❶)された卵子が卵管膨大部で精子と出会って受精(❷)し、受精卵が子宮内膜に着床(❸)することで成立します。排卵した卵子が精子を待てる時間にはタイムリミットがあるため、妊娠しやすいタイミングを考えたとき、排卵日が重要になります。
卵子と精子の寿命
排卵後の卵子の寿命は約24時間[*1]。受精可能な時間はさらに短く10数時間ともいわれています。このわずかな時間に精子と出会わなければ、受精できません。一方、精子の寿命は約72時間[*1]といわれています。
受精をしやすくするには
卵子と精子の寿命を考えると、排卵が起こったとき、すでに卵管膨大部に精子がいて排卵を待っている状態が望ましいといえます。精子の寿命も考えると、排卵日の1~2日前が最も妊娠しやすいタイミングです。ですが、体の中で排卵がいつ起きるかを正確に知ることはできません。排卵日の予測はずれる可能性もあるので、排卵日の2日ほど前~当日までの期間を中心に性交をするのがいいといえるでしょう。
「とはいえ「排卵日あたりだけでなく、セックスの回数自体をを増やす」というのが可能であれば、それが最も簡単に妊娠する方法と言えます」
(太田先生)
排卵日前後に体調が変化することも
女性は体の中で排卵が起きていてもそれに気づかないことが多いですが、人によっては排卵に伴い痛み(排卵痛)が生じることや、性器出血(排卵期出血)をすることがあります。
排卵痛
排卵痛のおもな症状は、片側のみの下腹部痛、下腹部がつっぱるような痛み、違和感、膨満感など軽いもので、すぐに治まります。
これは、排卵で卵胞が破れたときに流れ出た卵胞液や血液による腹膜の刺激、排卵期の⼦宮や卵管の収縮などが原因と考えられていますが、感じない人のほうが多いです。
排卵期出血
排卵期出血は少量で、2〜3⽇のうちに自然に止まります(出血しない人の方が多い)。卵胞ホルモン(エストロゲン)が関わっていて、排卵前の急激なホルモン上昇で子宮内膜の増殖に血管の形成が追いつかないこと(エストロゲン破綻出血)や、排卵時のホルモン低下すること(エストロゲン消退出血)などが原因と考えられています[*2]。
排卵痛も排卵期出血も特に治療の必要はあなく、また起こらない人の方が多いです。ただし、排卵痛がひどい時には、黄体血腫という病的な状態になっている場合があります。これは、排卵したときに血管が破れて大きな血の塊になったものです。状況によっては止血する手術が必要になります。
また、排卵に伴うホルモン分泌の影響で、体調を崩すこともあります。このとき現れる症状は、眠気やだるさ、吐き気、むくみ、イライラ、腰痛など様々です。
排卵日を予測するには
妊娠の可能性が高いタイミングを知るためには、排卵日の予測が重要です。それにはいくつか方法があります。
生理周期から計算する
生理周期には個人差があり、一般的に25~38日と幅がありますが、排卵してから生理が始まるまでの期間はどの女性も約14日といわれています。そこで、次の生理の予定日がわかれば、その14日前が排卵日だと予測できます。
ただし、生理周期はちょっとした体調の変化やストレスでずれることがあるため、大まかな予測でしかありません。また生理不順の場合はこの方法で計算することはできません。
基礎体温を測って記録する
女性は排卵のあとに黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌によって0.3〜0.5℃ほど体温が上がります[*3]。基礎体温の記録を継続していると、低温期(低温相)と高温期(高温相)にわかれたグラフになるため、高温期になれば、その1~2日前に排卵をしたことがわかります。
高温期に入るのは排卵が終わった後なので、基礎体温で未来の排卵を予測することできませんが、排卵が定期的に起こっているかを確認することができます。
排卵日予測検査薬で調べる
市販の排卵日予測検査薬(以下、排卵検査薬)を使う方法もあります。
排卵検査薬を使うと、およそ1日前に排卵を予測できます。排卵を促す黄体形成ホルモン(LH)は排卵の前に急激に増えることから、その尿中の量を測定し、量の変化から排卵日を予測します。
まとめ
排卵日とは、一言でいうと女性の体内で卵胞から卵子が飛び出した日のことです。妊娠しやすいタイミングは排卵日の数日前なので、排卵日を把握しておくことは妊娠の確率を高めることにつながります。妊娠を望むときは、基礎体温を計測して排卵を確認し、生理周期から計算したり排卵検査薬を使ったりして排卵日を予測してみましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:太田寛先生)
※画像はイメージです
[*1]一般社団法人日本生殖医学会「Q1. 妊娠はどのように成立するのですか?」
[*2]内山明花ほか「排卵期出血・排卵痛の診断と治療」産科と婦人科11(59)1331-5,2018
[*3]公益社団法人日本産婦人科医会「排卵の予測」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます