
【医師監修】妊娠後期に陰部が痛い!お股のよくある3つの原因と正しい対処法
妊娠後期に陰部や股に痛みを感じたら、体調が心配なうえ出産に何か影響しないか気になるかもしれません。人に相談しにくい話題ですが、恥ずかしいからと放っておくのは禁物。産婦人科専門医に可能性がある痛みの理由と対処法を聞きました。
妊娠後期や臨月に陰部や股が痛む原因は?



妊婦さんの表現は多様で、陰部を「おまた(お股)」「デリケートゾーン」などと言う人も多く、同じ言い方でも痛みを感じている場所が違うことが往々にしてあります。
ですから、医師が原因を特定するときには、まずはそれぞれの症状の聞き取り(聴診)を丁寧に行ったうえで、患部の視診、そして必要に応じた検査をすることになります。
(松峯先生)
1. 痛む場所でわかる「恥骨痛」


この場合、立ち仕事をしているときに痛いと訴える妊婦さんが多いので、立ちっぱなしを避け、こまめに休憩をとるようにアドバイスをしています。
骨盤ベルトの利用で痛みが軽減する人もいますが、正しい位置に適度な圧迫があるようにつけなければ逆効果になってしまいます。
最初は主治医や助産師さんのアドバイスを受けて利用しましょう。
(松峯先生)
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妊娠後期〜臨月の恥骨痛について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎臨月の恥骨痛の原因は? 歩くのも辛いときの4つの対策
2. 痛むタイミングでわかる「膀胱炎」
急性の膀胱炎は、主に大腸菌による尿路感染症の1種です。尿路感染症は膀胱炎や腎盂腎炎など、腎臓、尿管、膀胱、尿道に起こる感染症のことで、膀胱炎の場合は、おしっこの終わりごろに痛むのが特徴。トイレに行った後の残尿感も強まります。頻繁に排尿したくなる(頻尿)、尿の濁り、下腹部の不快感といった症状もあります。
女性は尿道が短く膀胱まで細菌などが入り込みやすいので、膀胱炎になるのは珍しいことではありません。ただ、感染が膀胱から腎臓に及ぶ「腎盂腎炎」になると発熱などの全身症状が出て、敗血症性ショック(細菌感染による重大な臓器の障害)から、妊婦さんでは切迫早産、前期破水などを引き起こすリスクがあります。妊婦さんの場合はとくに、尿路感染症は予防と共に早期発見・早期治療が大切です。
妊娠中は次の3つの理由から尿路感染症になりやすいので、排尿痛などの症状があったらすぐに受診しましょう。
妊娠中に膀胱炎、腎盂腎炎などが起こりやすい3つの理由
妊娠中に分泌されるホルモンの影響で尿管が拡張することも、膀胱から腎臓に感染が広がるリスクを増やす。
②妊娠中はホルモンの影響で膀胱の周囲の筋肉が緩み、膀胱を収縮させる機能が低下するので、尿を出しきれず、残尿が起こりやすい。
③妊娠中は抵抗力が下がっており、もともと腟にいる菌などであっても感染しやすい。

妊娠中はとくに、陰部の清潔を保って感染や膀胱炎の再発、重症化を防ぎましょう。
尿道口から菌が入り込んでも、排尿すると尿と一緒に細菌も排出されるので、水分をきちんととり、トイレはがまんしないようにしてください。
(松峯先生)
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膀胱炎について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊婦は膀胱炎になりやすい!症状と予防
3. 痛がゆくなることが多い「カンジダ腟炎」
診断がつけば治療とともに
・陰部の清潔
・休養&体力回復
・通気性の良い下着の利用
など、セルフケアが必要です。

腟カンジダ症は日和見感染症*の1種で、何らかの原因で感染に対する抵抗力が下がったときに炎症が起き、症状が出ることが多い病気です。
一般的に抗菌薬を服用したときが多いのですが、妊娠や過労、体調不良、睡眠不足なども誘引になることがあります。再発も多い病気なので、規則正しい生活を心がけ、体調管理に気を付けましょう。
(松峯先生)
ほかにもある「陰部・股の痛み」の原因
■ヘルペス
ウイルス性の潰瘍が腟や外陰部にできます。患部の視診でわかり、すぐに薬物治療が始まります。
分娩時に赤ちゃんが産道感染すると、「新生児ヘルペス」を発症し、全身型の重症な症状によって死亡することも多いため、分娩時に治っていなければ母子感染を防ぐ目的で帝王切開となります。
■陰部静脈瘤
妊娠中の血液量の増加やホルモンバランスの変化により、卵巣や子宮周囲の静脈内で血液の逆流を防いでいる弁が機能しなくなったり、壊れてしまうことでできる静脈瘤です。脚の付け柄や太ももの裏側、会陰部などに静脈瘤ができ、違和感や痛みを引き起こします。
大陰唇に静脈瘤ができている場合などは視診でわかることもありますが、体の中の見えない部分に静脈瘤ができることもあります。静脈瘤の存在や痛みに気づかなくても、患部に熱感があったり、腫れていると感じる場合もあるようです。こうした症状のほか、脚のむくみや疲労感、こむら返りなどがひどい場合や、症状はないが血管がボコボコしているなど下半身の異常に気付いたら、一度主治医に相談してみましょう。
妊娠中に陰部静脈瘤ができた場合は、出産まで悪化させないように静脈瘤のできた部位により
・患部を圧迫する
・適度に動きながら血流を促す
・便秘を防ぐ
など、主治医からの生活上の注意に従って過ごすことになるでしょう。

陰部静脈瘤の場合、出産後には骨盤内の血流改善に従って自然治癒することが多いため、妊娠中は特に積極的な治療はしないことがほとんどですが、悪化させないための日常生活のアドバイスはできます。
主治医とコミュニケーションをとりながらコントロールしていきましょう。
(松峯先生)
まとめ


ここで紹介したとおり、デリケートな場所の痛みの原因はさまざま。なかにはここまでで説明した以外の理由で痛むこともあります。いずれにしても、「痛い」という症状だけでは原因は特定できないので、医師による詳細な聞き取り(聴診)と患部の視診、そして適切な検査が必要になります。早期に治療を始める必要がある原因の場合もあるので、違和感を覚えたら、放っておかず、早めに受診をして異常がないか調べてもらいましょう。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます