【医師監修】臨月の恥骨痛の原因は? 歩くのも辛いときの4つの対策
妊娠中は体にさまざまなマイナートラブルが生じるもの。恥骨の痛みもそのひとつです。とくに臨月になると歩くのもつらいほど、恥骨の痛みを覚えている人もいるはず。恥骨が痛む原因や痛みを軽減させる方法について解説します。
臨月の恥骨の痛みはなぜ起こるの?
出産が近づくにつれ、おまた周辺の骨、いわゆる「恥骨のあたり」に痛みを覚えることがあります。これはどうして起こるのでしょうか。
恥骨とは
「恥骨(ちこつ)」は腰の部分に位置する骨=骨盤を構成する骨のひとつです。骨盤は「寛骨(恥骨を含む)」「仙骨」「尾骨」という複数の骨から構成されていて、そのうち体のもっとも前側にある骨が恥骨です。
左右にひとつずつ、対を成すように存在し、左右の恥骨は体の前側で軟骨 によりくっついています(恥骨結合)。
恥骨は、幼児のうちは「坐骨(ざこつ)」「腸骨(ちょうこつ)」と分かれ軟骨でつながっていますが、成長とともに3つの骨が融合し、「寛骨(かんこつ)」というひとつの骨になります。
寛骨とは骨盤の左右に広がる大きな骨のこと。それが体の後ろ側で仙骨によってつながり、仙骨の下に尾骨がくっついている、骨盤はこのような構造をしています。
妊娠中に恥骨が痛む原因
妊娠中に恥骨が痛む原因は、大きく以下の2つとされています。
(1)胎児の頭で圧迫されるため
出産が近づくと、お腹の中で赤ちゃんの位置が下降し、頭が骨盤内に移動します。それにより恥骨結合が圧迫され、痛みを覚えることがあります。
(2)「リラキシン」というホルモンによって恥骨結合がゆるむため
リラキシンは妊娠中に分泌されるホルモンの一種で、恥骨結合など をゆるめて、出産に備える働きがあります。そのために、骨盤周辺が不安定になって痛みを覚えることもあります。
恥骨痛は出産の前兆?
恥骨や恥骨結合の部分の痛みは、お腹の大きくなった妊娠後期、中でも臨月に起こることが多いため、「恥骨の痛み=お産の前兆」といわれることもあります。お産が近づくと、こうした体の変化が起こり、恥骨の痛みを生じることは少なくないようです。
ただ、「恥骨の痛みはお産の前兆」といっても、痛みの感じ方には個人差があります。歩くのがつらいくらい痛む人もいれば、時々痛みを感じる程度の人、ほとんど痛みを感じない人まで千差万別です。
臨月でもできる、恥骨の痛み対策4つ
ここからは、恥骨の痛みをやわらげるのに役立つ対策法をご紹介します。いろいろ試して、自身に合った方法を探してみてください。
安静にして、痛みをやわらげやすい体勢をとる
恥骨結合の痛みにより、寝返りがつらくなる人もいます。そうした痛みは、安静にして痛みをやわらげやすい姿勢をとることで改善につながります。
横になる場合は膝の間やお腹の下に枕などを入れて支え、横向きの姿勢をとりましょう。座る場合は背もたれの真っすぐな椅子のほうが、腰が支えられるため痛みが軽減されやすいです 。
骨盤ベルトを着用する
骨盤ベルトや腹帯など腰部を支えるアイテムも、恥骨の痛みに悩む妊婦さんにとって心強いアイテムといえるでしょう。骨盤ベルトや腹帯で、お腹や骨盤周りをしっかり支えると、痛みの軽減や予防につながります。
ただし痛みを軽減したいからと、きつく締めすぎてしまうとお腹が圧迫されてしまうので要注意です。
ストレッチや体操で血行を促す
軽いストレッチや体操で血流を促すのも恥骨の痛みの改善に効果的です。 歩くのがさほどつらくないのであれば、無理のない程度に散歩をするのがおすすめですが、それが難しい場合は座ったままで太ももの内側を伸ばしたり、猫のストレッチで背中を伸ばしたりすると、多少痛みの軽減につながります。 下記を参考に行ってみてください。
※運動中に何らかの症状、とくに立ちくらみ、頭痛、胸痛、呼吸困難、筋肉疲労、ひざ下の痛みや腫れ、腹部・下腹部の張りや重い感じ・痛み、性器からの出血、胎動の減少・胎動が消えた、羊水が流れ出ているなどを感じた場合は、ただちに運動を中止し、運動を中止しても治まらないなど、心配な場合は医師に指示を受けましょう。
太もも内側のストレッチ
腰の動きを維持するのに役立つストレッチです。妊娠中に固くなることでよく恥骨痛を引き起こす太ももの内側をほぐすことができます。
(1)ベッドや椅子の端に座ります
(2)気持ち良いと感じるくらいまで、両足を離します
(3)太ももをリラックスさせ、膝の内側にそれぞれの側の手を置き、優しく外側へ向かって押します。太ももの内側の筋肉が気持ちよく伸びるのを感じるはずです
この動きを5〜10秒間維持し、4〜5回繰り返します。
猫のポーズ
背中の柔軟性を高めたり、腰痛緩和に効果的とされているストレッチです。
(1)両手両足を床につけ、腕と膝は肩幅に開きます。手は肩の下に置き、足の甲を床につけます。
(2)息を吐きながら、ゆっくりと腰→背中→首の順に丸めます。視線はおへそあたりに。
(3)息を吸いながら、ゆっくりと腰→背中→首の順に反らせます。肩甲骨を寄せるようにして、肛門は引き締めます。
※(3)の動きは「腰痛のある人」は行わないでください
(1)~(3)までを6〜10回を目安に繰り返します。背中全体を腰から上に向かって大きく動かすように、曲げたりそらしたりするのがポイントです。
入浴する
ぬるめのお湯につかり、血流を促すのもよいでしょう。ただし出産が近い場合、長湯でのぼせてしまい、思わぬ体調不良を起こすことも少なくありません。できれば入浴は家族がいるときにするのが安心です。
無理せず医師に相談を
そのほか健診の際、かかりつけ医に相談し、対処法を聞いてみても良いでしょう。体の状況に合ったアドバイスがもらえるはずです。
まとめ
妊婦さんのマイナートラブルは、恥骨の痛み以外にもさまざまあります。不調の感じ方には個人差がありますので、自分にとって不快だな、生活に支障があるなと感じたら、今回紹介した対策を試したり、かかりつけ医に相談したりして、安全で快適な妊娠生活を送っていきましょう。
(文:山本尚恵/監修:浅野仁覚先生)
※画像はイメージです
・病気がみえる Vol.10 産科, P232, メディックメディア, 2018.
・公益社団法人日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会:産婦人科診療ガイドライン―産科編2017, 115p
・アイルランド公衆衛生サービスHSE 妊娠中の骨盤帯痛(PGP) 3.骨盤帯の痛みを緩和する運動
・日本産科婦人科学会 監修:Baby+, p36-37, 2016.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます