【弁護士監修】スピード離婚はなぜ起こる!? 実例とメリット、デメリット、回避するためにできること
結婚まもなくスピード離婚する夫婦は珍しくありません。愛し合って結婚したはずなのに、どうしてそうなってしまうの? スピード離婚したほうがいいケースもあるの? 多くの女性の離婚相談に応えてきた、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の代表弁護士、中里妃沙子先生に話を伺います。
スピード離婚とは? なにが原因なの?
愛し合って結婚したのに、スピード離婚してしまう夫婦は決して少なくありません。どうしてそうなってしまうのでしょう? まずは、スピード離婚の意味から見て見ましょう。
「スピード離婚」とは、結婚してから2年以内離婚すること
「スピード離婚」という言葉は、厳格な定義があるわけではなく、法律用語でもありませんが、一般的に、スピード離婚とは、結婚してから2年以内に離婚することをいいます。
昔から、離婚総数のうち一定数を占めていて、1990年代には、新婚旅行から帰国して即離婚することを指す「成田離婚」という言葉も生まれました。
スピード離婚の原因にはどんなものがあるの?
スピード離婚の理由には、さまざまなものがあげられます。なかでも比較的多いのが、「焦って結婚した」、「相手をよく理解しないで結婚した」「結婚する自覚を持てないまま勢いで結婚した」など、結婚前に十分時間を取れなかったとこに起因するもの。マタニティブルーや産後クライシスがきっかけになることもあります。
スピード離婚はどんな理由で起こるのでしょうか。いくつか、実際の事例を見てみましょう。
スピード離婚の事例1 交際中には相手の性格を見きわめられなかった
キョウコさん(仮名、27歳)のケースは、典型的な超スピード離婚です。
交際2年で結婚した夫と、海外の新婚旅行先で大ゲンカ。キレた夫にドライブ中の車から引きずり降ろされ、異国の街中に置き去りにされたのです。交際中にはわからなかった夫のそんな一面に驚愕したキョウコさん。日本に帰国した足で別居し、結婚わずか3ヶ月で離婚しました。
スピード離婚の事例2 年齢や周囲の状況から焦って結婚した
40歳までに結婚したいと思っていた38歳のユウコさん(仮名)は、マッチングアプリで出会ったB夫さんと交際3ヶ月でスピード結婚。ところが、2人とも互いをよく理解する以前に結婚してしまったためか、互いを思いやれずにケンカの毎日。
そんな生活に疲れ果てた2人は、「これだったら一人のほうがまし」と、1年でスピード離婚に至りました。
スピード離婚の事例3 妊娠中の夫の無責任な行動に愛想が尽きて
24歳のアキさんは授かり婚。共働きのE子さんは、妊娠中も仕事と家事に奮闘しましたが、無理がたたったのか、切迫流産になり、自宅安静に。にもかかわらず、独身気分の抜けない夫の行動は改まらず、残業に飲み会にと、父親になる自覚がまるで見えないまま。
里帰り出産したアキさんは、ワンオペ育児になるのが目に見えていると思うと、夫のいる家に戻る気にはどうしてもなれませんでした。結局、里帰り先から夫に離婚届を送りつけ、現在、調停中です。
スピード離婚のメリット・デメリット
幸せになるために結婚するのだから、スピード離婚しないで済むなら、それに越したことはありません。とは言いながらも、二人の関係や心のありようによっては、離婚、しかも早めの決断を選択するのが最善策である場合もあります。
スピード離婚のメリット、デメリットを見てみましょう。
スピード離婚のメリット1 財産分与がスムーズ
離婚時に争点となってくる問題のひとつに、財産分与があります。
離婚するときには、結婚してから築いた共有の財産を分割する必要がありますが、結婚期間が短ければそれだけ形成した財産も少なくなり、もめる余地も少なく、離婚が成立しやすい可能性が高まります。
スピード離婚のメリット2 子どもがいない場合は親権などで争わずに済む
財産分与と並んで離婚時のネックになるのが、子どもの親権や養育費の問題です。夫婦の間に子どもがいる場合は、親権が決まらなければ離婚することはできません。
スピード離婚の場合は、子どもがいない場合も多いため、親権や養育費などの取り決めをする必要がなく、交渉にかかる時間や費用、精神的な負担も、少なくて済みます。
スピード離婚のメリット3 時間をムダにしない
離婚はつらく、苦しい体験になることが多いです。それでも、やり直すと決めたなら、早ければ早いほうがダメージも少なく、リカバリーも早いもの。
不満や怒り、恨みなど、負の感情を抱えて悶々とし続けるよりも、気持ちを切り換えて新しい方向を向くのは、今後の人生にとっても時間をムダにしない有効な方法です。
スピード離婚のデメリット1 世間体が悪く、周囲の目が気になる
昨今は離婚する人も珍しくなく、周囲の目を気にする人が少なくなっているとはいえ、スピード離婚に対する世間の風は温かいものばかりではありません。とくに、親や親戚など、年配の人からの厳しい言葉や、世間からの「ガマンが足りない」「最近の若い人は……」などといった心ない言葉への覚悟も必要となります。
スピード離婚のデメリット2 次の配偶者探しや再婚の障壁になることも
離婚後しばらく経って傷が癒えた人のなかには、再婚を考える人も出てくるでしょう。「スピード離婚」の事実が、次の配偶者を探すときや、実際に再婚するときの障壁になる可能性があります。また、自分自身のなかに「今度は失敗できない」という高いハードルを立ててしまうこともあるでしょう。
スピード離婚のデメリット3 次の結婚でも同じことを繰り返してしまうかも
たとえば「価値観の違い」に耐えられずにスピード離婚してしまった場合、次の結婚でも同じことを繰り返す可能性があります。なぜなら、その「価値観の違い」を理解して許容したり、克服したりした経験値が少ないので、同じ事象が起きた時の耐性が育っていないから。
また、「また同じことを繰り返すのでは」と自分自身に自信をもてなくなってしまうこともあり得ます。
スピード離婚を回避するためにできる4つのこと
一度は将来を誓い合った相手なのですから、できれば離婚はしたくないもの。スピード離婚ともなればなおさらです。でも、「私たち、もしかしてあっという間に離婚してしまうかも?」という危機に直面したとき、どうすればいいでしょうか。
1 まず2人で本音で話し合う
血のつながった親子やきょうだいでも、口に出さなければ心の中はわかりません。ましてや夫婦は他人同士。「察してほしい」などと不機嫌な態度でいるだけでは相手に伝わることはないでしょう。まず本音で話し合うことが重要です。
その場合に心がけたいのが、思いやりと受容力。そして、あまり先延ばしにせず、問題が小さいうちに話し合うこと。早い時期での対策が、夫婦の危機を遠ざけます。
2 専門家のカウンセリングを受ける
夫婦問題を専門とする「夫婦問題カウンセラー」のカウンセリングを受けるのも有効な方法です。夫婦にとってどんな未来が理想かを共に考えたり、夫婦関係をやり直したりするアドバイスもしてくれます。夫婦一緒に受けられるところもあります。
3 第三者の客観的な意見をもらう
相手と冷静に話せない、意見がかみ合わない場合は、第三者を入れた話し合いを。
互いの両親に入ってもらう方法もありますが、結局、親は自分の子どもに味方することが多く、公平に意見を聞いたり、仲裁したりすることが難しいケースが多いようです。中立的な立場である夫婦問題専門のカウンセラーや弁護士に意見をもらうのが一番です。
4 円満調停を行う
より中立的な立場で夫婦の間をとりもってもらいたい場合は、裁判所に「円満調停」を申し立てるという方法もあります。裁判所の調停とは、裁判所が対立する両者の間に入っておこなう、紛争解決の手段です。
夫婦の一方が離婚をしたくて申し立てるのは「離婚調停」、夫婦関係を円満にするために申し立てるのが「円満調停」というわけです。
【まとめ】スピード離婚を考える人へ、弁護士からのアドバイス
(文:楠本知子/監修:丸の内ソレイユ弁護士事務所/漫画:田辺ヒカリ)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、弁護士に取材、および、その監修を経た上で掲載しました
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