
ダイエットに刺身は効果的? おすすめの種類とやり方
さっぱりと食べられる刺身はヘルシーなイメージですが、ダイエットにもよいのでしょうか? この記事では失敗しないダイエット中の刺身の選び方と、刺身でダイエットをする方法について紹介します。
刺身はダイエット向き!その理由とは

刺身がダイエットに向いている理由について詳しく解説します。
基本的に低カロリー
刺身は魚介類をそのまま生で食べる料理。魚の種類や部位、脂の乗りによって多少異なりますが基本的にカロリーが低く、低脂質、低糖質でダイエット向きです。主な刺身のカロリーを低い順に並べました。
エネルギー (kcal) |
たんぱく質 (g) |
脂質 (g) |
炭水化物 (g) |
|
---|---|---|---|---|
マダコ | 70 | 16.4 | 0.7 | 0.1 |
スルメイカ | 76 | 17.9 | 0.8 | 0.1 |
甘エビ | 85 | 19.8 | 1.5 | 0.1 |
マアジ(皮なし) | 108 | 19.7 | 4.1 | 0.2 |
カツオ(春獲り) | 108 | 25.8 | 0.5 | 0.1 |
クロマグロ(天然・赤身) | 115 | 26.4 | 1.4 | 0.1 |
マダイ(天然) | 129 | 20.6 | 5.8 | 0.1 |
カツオ(秋獲り) | 150 | 25.0 | 6.2 | 0.2 |
また、刺身は調理しないので、調味料や調理油の使用でカロリーが上がることがありません。そのため、刺身のネタのだいたいのカロリーを頭に入れておけば、摂取カロリーの検討がつけられる点も、ダイエット向きといえます。
基礎代謝を上げる筋肉量増加に役立つ

「基礎代謝量」とは、心身ともに安静な状態の時に生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー代謝量のことで、筋肉が増えると基礎代謝量は増えます[*2,3]。
筋肉を形作っているのは「たんぱく質」で、体の中で常に合成と分解を繰り返しています。たんぱく質は分解されるとその一部が老廃物として尿などから排泄されるので、材料となるアミノ酸を毎日の食事から適量摂り続けないと筋肉量は減ってしまいます。
たんぱく質は、筋肉以外にも、さまざまな臓器・皮膚・毛髪などを構成する成分であり、ホルモン・酵素・抗体など体の機能を調節する物質の成分でもあります。
なお、たんぱく質は食品では豆・卵・肉・魚などに豊富に含まれています。また、たんぱく質を構成するアミノ酸には、体内で合成することができないので食事から摂る必要のある9種類の「必須アミノ酸」と、体内で合成できる11種類の非必須アミノ酸があります。
刺身はアミノ酸スコア100の良質なたんぱく質
たんぱく質を多く含む食品の中でも、必須アミノ酸をすべてバランスよく摂れるものを「良質なたんぱく質」と呼びます。なぜなら、必須アミノ酸が1つでも不足すると、ほかの必須アミノ酸が十分あっても不足分はたんぱく質が作れないからです。
必須アミノ酸がバランスよく含まれているかどうかを示す指標には「アミノ酸スコア」というものがあり、1日に必要な必須アミノ酸をすべて必要量含んでいればその数値は「100」になります。一般的に、動物性食品はアミノ酸スコアの高いものが多いのですが、刺身の材料である魚もアミノ酸スコアは「100」。刺身は良質なたんぱく質源と言えます[*4-6]。
ただし、いくら良質であっても、たんぱく質をとっているだけでは筋肉は増えません。良質なたんぱく質の摂取に運動を組み合わせれば、筋肉量が増えダイエット効果が期待できます。筋肉量を増やすには、筋肉に負荷をかけるいわゆる「筋トレ」(スクワットや腕立て伏せ、上体起こしなど)がおすすめ。
ウォーキングなどの有酸素運動は長時間行うことで体脂肪を燃焼させますが、筋トレにより筋肉を増やすと基礎代謝量が増え、安静時のエネルギー消費量が多くなることで、脂肪が溜まりにくい身体になれるでしょう[*7, 8]。
基礎代謝量やエネルギー消費量について詳しく知りたい方は、下記の記事を参照してください。
体脂肪の減少を促すと期待されるDHA・EPAが豊富
魚介類の脂質はほかの食品に比べて、オメガ3系脂肪酸が多く含まれます。魚油に含まれるオメガ3系脂肪酸のDHAとEPA は、動脈硬化を予防したり、中性脂肪値を改善したりするなど、さまざまな生理作用があることが知られています。さらに、DHAとEPAには、体脂肪の消費を促進する効果が期待されています [*9-11]。
DHA(mg) | EPA(mg) | |
---|---|---|
マダコ | 68 | 40 |
クロマグロ(天然・赤身) | 120 | 27 |
カツオ(春獲り) | 120 | 39 |
スルメイカ | 130 | 43 |
甘エビ | 130 | 150 |
マアジ(皮なし) | 480 | 260 |
マダイ(天然) | 610 | 300 |
カツオ(秋獲り) | 970 | 400 |
刺身のつまで食物繊維がとれる

魚介類にはダイエットにうれしい栄養素がふんだんに含まれますが、魚介類からは摂取できないものに「食物繊維」があります。食物繊維は動物性食品にはほとんど含まれず、野菜やきのこ、豆類、いも類、果物、精製していない穀類などの植物性食品に多く含まれます[*13]。
そこで活用したいのが刺身の「つま」です。つまに使われている、大根、大葉、にんじん、海藻類などは、いずれも食物繊維が豊富。つまを残さずに食べることで、刺身では摂れない栄養素をある程度一緒に摂取できます。なお、ダイエット中に食物繊維を摂るとよい理由は、後半の「ダイエット中に刺身を食べるときの注意・ポイント」で改めて説明します。
ダイエットにおすすめの刺身の種類
ダイエットにおすすめの刺身の種類を紹介します。
カツオ

旬が年に2回あるカツオ。春に獲れる初ガツオは脂質が低くて低カロリーです。秋に獲れる戻りガツオは脂が乗っていますが、その分、DHAやEPAが突出して多くなります [*12]。女性に不足しがちな鉄分も多く含まれています[*1]。
また、カツオのたんぱく質には、9種の必須アミノ酸のうち、「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」と呼ばれるバリン、ロイシン、イソロイシンがいずれも豊富です。BCAAは筋肉を構成するアミノ酸の4割ほどを占め、筋肉のたんぱく質の分解を抑制するとされます。なかでもロイシンは強いたんぱく質の合成作用があるといわれています[*14]。
カツオ100g当たりのBCAAの量[*15]
バリン | 1200mg |
ロイシン | 1800mg |
イソロイシン | 1000~1100mg |
タコ
タコは刺身のなかでも一番カロリーが低いネタのひとつで、ダイエット向き [*1]。カロリーは低いものの、補酵素としてたんぱく質や核酸の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝にかかわるビタミンB12[*16]、抗酸化作用が非常に強いビタミンEを摂ることができます。
ビタミンEは血管を健康に保ち、LDL(悪玉)コレステロールや細胞の酸化を防ぐことで、老化防止にも効果があるといわれています[*17]。
マグロの赤身

マグロには、セレン、ビタミンDなどが豊富に含まれています[*1]。
セレンは抗酸化作用があり、老化防止に役立つとされ、体内では合成できない必須微量元素です[*18]。ビタミンDは、骨や歯の発育促進に加え、血液中のカルシウム濃度を調整することで神経伝達や筋肉の収縮などを正常にする働きがある重要なビタミンです[*19]。また、マグロにはカツオ同様、BCAAも豊富です。
マグロ(天然・赤身)100gのBCAAの量[*15]
バリン | 1400mg |
ロイシン | 2000mg |
イソロイシン | 1200mg |
アジ
アジは、補酵素としてたんぱく質や核酸の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝に関与するビタミンB12[*1,15]のほか、まぐろと同様にセレンやビタミンDも多い魚です[*1]。必須アミノ酸もバランスよく含んでいます[*15]。
甘エビ
甘エビもマグロと同様にセレンが多く含まれるうえ、抗酸化作用が非常に強く、老化防止に効果があるといわれるビタミンEも豊富に含まれています[*1,17]。
ダイエット中に避けたい刺身は?
マグロのトロは脂身なので高カロリーです。
クロマグロ(天然・脂身)100gの脂質は27.5gで308kcal、クロマグロ(天然・赤身)と比べると脂質は約20倍、カロリーは約2.7倍です[*1]。ダイエット中にトロは避けたほうが無難でしょう。
刺身を使ったダイエットのやり方

刺身だけを食べるダイエットは栄養が偏るため禁物。刺身を使って効率的にダイエットする方法についてお伝えします。
肉のおかずを刺身に置き換える
刺身ダイエットのおすすめのやり方は、肉のおかずの代わりに刺身を食べることです。刺身は肉料理に比べてカロリーや脂質が少ないので、肉のおかずを刺身に置き換えれば、同じ量でもカロリーを抑えられます。
主食を減らしその分刺身を食べる
はじめにお伝えした通り、刺身は高たんぱく質、低糖質な食べ物です。主食より刺身を多めに食べると糖質の摂りすぎを防ぐことができます。
糖質は体に不可欠なエネルギー源ですが、一気に摂りすぎると血糖値が急激に上がり、血糖値を下げるためにインスリンがたくさん分泌されます。そのときに余分な糖は脂肪に合成され、体に蓄えられます。そのため、ダイエットでは糖質の摂取量に注意が必要なのです。
刺身とご飯の相性は抜群なので、ついつい一緒にご飯をたくさん食べてしまわないよう気をつけましょう。
ただし、妊娠中の人の場合は、刺身の食べ方に対しては特別な注意が必要になります。母体やおなかの赤ちゃんの健康のために、食中毒のリスクや魚介に含まれる水銀の摂取に対して、気を付けるべきポイントがあります。妊娠中の刺身については、下記の記事を参照してください。
また、妊娠していない人でも刺身をたくさん食べると同時に醤油も多く口に入ることになるので、塩分の過剰摂取には要注意。女性の1日の塩分摂取量は6.5g未満が目標ですが、しょうゆ(こいくち)小さじ1は6g、これに含まれる塩分はおよそ0.4gです[*1, 20]。
わさびやしょうが、みょうが、かぼすなどのかんきつ類といった薬味を上手に使って、できるだけ減塩でおいしく食べられるように工夫してみましょう。
これも妊娠期に限りませんが、アニサキスなどの寄生虫や腸炎ビブリオなどによる食中毒にも注意してくださいね。アニサキスは流通過程で冷凍してあるものであれば心配ありません。また、細菌などによる食中毒を避けるためには、信頼できるお店で購入した新鮮な刺身用のものをできるだけ早く食べきるようにしましょう。
ダイエット中に刺身を食べるときの注意・ポイント

基本的にダイエット向きの刺身ですが、食べ方を間違えると体重が減らない原因となる可能性もあります。ダイエット中に刺身を食べるときの注意・ポイントについて紹介します。
丼やお寿司にしない
刺身をご飯に乗せた海鮮丼はダイエットには不向きです。茶碗1杯は150~200gですが、どんぶりは器が大きく、ご飯の量が多くなります。一般的などんぶりのご飯は240g程度。150gのご飯のカロリーの約1.6倍の374kcalにもなってしまいます[*1]。
また、お寿司も要注意です。一つひとつは小ぶりですが、気づかないうちにご飯の食べ過ぎにつながりやすい料理だといえます。ダイエット中は刺身とご飯は別々に食べたほうが良いでしょう。
醤油漬けにしない
醤油漬けの刺身は塩分摂り過ぎになる心配が。塩分の濃いおかずは、ご飯の食べすぎにもつながります。
それだけでなく、塩分を過剰摂取すると空腹感が増し、過食を引き起こす可能性があることが報告されています[*21]。刺身は醤油で漬け込まずに、少量の醤油や塩で味わうのがよいでしょう。柑橘系の果汁などを合わせるのもひとつの方法です。
わさびは控えめにする
詳しいメカニズムはまだ明らかになっていませんが、わさびなどの香りの強い食べ物は食欲を刺激するともいわれています。香りの好みは、子供のころからの食習慣や食経験で培われます。今までの食経験により、漂ってくる香りだけでも食欲がかき立てられるようになると考えられています[*22]。
また、辛み成分は、口や胃などの消化器の粘膜を刺激することで食欲を増進させ、腸の運動も促すので、栄養素が吸収されやすくなるといわれています[*23]。
わさびの辛みが好きな人もいると思いますが、ダイエット中は控えめにして、刺身のネタそのものの味を口の中でゆっくり味わってみるのも、よいかもしれません。
食物繊維を一緒にとる

魚介類には食物繊維が含まれていないので、食物繊維を含む野菜や海藻類などを一緒に食べましょう。食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維に分けられます。
不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収して便のカサを増やし、スムーズな排便を促すため、便秘の改善や予防に役立ちます。
水に溶けるとゼリー状になる性質がある水溶性食物繊維は、小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値を上げにくくする効果があります。また、血中のコレステロール値の低下や、高血圧の予防にも効果があるとされています [*24]。
刺身と一緒に野菜や海藻類などをできるだけ食べるようにしましょう。サラダや酢の物で摂るのがおすすめです。
まとめ

刺身がダイエットに向いている理由と、刺身を食べるときの注意点について解説しました。刺身は高たんぱく質、低脂質、低糖質であるうえ、魚油が持つDHAやEPA、抗酸化作用を持つビタミンなどの作用も期待でき、ダイエットをする人にとってうれしい料理です。一緒に食べるご飯の量には注意が必要ですが、野菜や海藻を一緒に摂ることを心がけながら、健康的なダイエットに取り組んでくださいね。
(文:木下ともえ)
※画像はイメージです
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]健康長寿ネット:エネルギー消費量の測定方法
[*3]厚生労働省:e-ヘルスネット 加齢とエネルギー代謝
[*4]厚生労働省:e-ヘルスネット たんぱく質
[*5]厚生労働省:e-ヘルスネット 良質なたんぱく質
[*6]日本食品分析センター:食品たんぱく質の栄養価としての「アミノ酸スコア」
[*7]健康長寿ネット:レジスタンス運動の効果と方法
[*8]横浜市スポーツ医科学センター:健康・体力アップ情報 肥満と減量(理論編) 知っておきたい肥満と減量の基礎知識【理論3】減量に筋力トレーニングが必要な理由
[*9]健康・栄養研究所:n-3系不飽和脂肪酸
[*10]日本人の食事摂取基準(2020年版) 脂質 p.139
[*11]AAAS:Fish oil helps transform fat cells from storage to burning
[*12]日本食品標準成分表2020年版(八訂)脂肪酸成分表編 第2章第1表(データ)
[*13]厚生労働省:e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康
[*14]「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 Ⅱ 各論 2対象特性 高齢者
[*15]日本食品標準成分表2020年版(八訂)アミノ酸成分表編 第2章第1表(データ)
[*16]健康長寿ネット:ビタミンB6/12の働きと1日の摂取量
[*17]健康長寿ネット:ビタミンEの働きと1日の摂取量
[*18]大塚製薬:栄養素カレッジ セレン
[*19]健康長寿ネット:ビタミンDの働きと1日の摂取量
[*20]国立健康・栄養研究所:栄養摂取状況調査のための標準的図版ツール(2009年版)に基づく重量目安表(2009版)
[*21]Vanderbilt-led study shows high-salt diet decreases thirst, increases hunger
[*22]日本成人病予防協会:健康管理情報 香り
[*23]日本成人病予防協会:健康管理情報 辛味、渋味
[*24]健康長寿ネット:食物繊維の働きと1日の摂取量
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます