【医師監修】生理前と生理後のどっち?妊娠しやすいのはどのタイミング?
妊活を始めるにあたって、まず知っておきたいのが「妊娠しやすいタイミング」。生理前と生理後では、どちらの方が妊娠しやすいのでしょうか。ここでは妊娠にベストなタイミングや、その日を知るためにできることを紹介します。
妊娠しやすいのは生理前と生理後のどっち?
妊娠しやすいタイミングはいつなのか、体の中で起こっていることとあわせて確認しておきましょう。
妊娠しやすいのは「排卵の時期」
「排卵」は、女性の卵巣にある卵胞から卵子が排出されること。約1ヶ月に1度、基本的に片方の卵巣で起こります。
卵胞から出た卵子は卵管に取り込まれて卵管膨大部(卵管の先端のフサフサした部分)へ進み、精子がいればここで「受精」します。受精したら、受精卵は子宮に向かって卵管の中を進み、子宮内膜に「着床」することで妊娠が成立します。
排卵が起こる日を「排卵日」といいます。排卵日は「生理周期(生理開始日~次の生理開始日の前日までの日数)」によって異なりますが、周期が28日の場合は「生理が始まった日からおよそ14日後」になります。
排卵された「卵子の寿命は24時間ほど」で、しかも「受精できるのは排卵後10数時間以内」といわれています[*1, 2]。また、体外受精のデータから、受精後も順調に受精卵が育つのは「排卵後、数時間以内の卵子」とも言われています。
一方、「精子の寿命は約72時間」で、腟に射精されてから精子が卵管膨大部にたどり着くまでは1時間くらいと言われています[*1, 3]。そのため、「排卵日の2日ほど前~当日まで」のタイミングでの性交がもっとも妊娠しやすいと言われています[*4]。
排卵の時期は一定ではない
ただし、排卵の時期は人によって異なります。さきほど周期が28日の場合は「生理が始まった日からおよそ14日後」と解説しましたが、そもそも生理周期は人によって幅があり、「25~38日間」の範囲であれば正常とされています。
そして、生理周期の日数によって、生理開始日から排卵日までの日数も変わります。たとえば、排卵が起こるのは、
・「生理周期が25日間」の人:生理開始日からおよそ11日後
・「生理周期が38日間」の人:生理開始日からおよそ24日後
です。
一方で、生理周期は人それぞれ異なっていても、卵巣に異常のない女性では「排卵~生理開始までの期間は2週間」でみな同じです。
卵子が出たあと、空になった卵胞は「黄体」と呼ばれる器官に変化し、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌します。黄体ホルモンには「子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に変える」とともに、子宮から剥がれないように維持する働きがあります。
この黄体の寿命が健康な人では2週間ほどで同じなので、排卵から生理までは生理周期によらず一定なのです。
黄体の寿命がきたとき、妊娠が成立していなければホルモンの分泌が減り、それがきっかけとなって子宮内膜が剥がれ落ちて「生理」が起こります。
自分の生理周期を把握しておくことが大切
自身の排卵日がいつか知るために、まずは自分の「生理周期」を把握しておきましょう。生理周期は「生理が始まった日~次の生理の前日まで」の日数です。
自分の生理周期がわかれば、生理開始の2週間前に排卵が起こることから、「自分の生理周期-14=生理開始から排卵日までのおおよその日数」がわかり、排卵日がいつごろ来るかある程度予想できるようになります。
「基礎体温」で妊娠しやすい時期を知る
基礎体温を毎日測って記録すれば、「排卵があったかどうか」「いつごろ排卵が起こったか」を把握するのにさらに役立ちます。
排卵のあとに分泌される黄体ホルモンの影響で、排卵後は「体温が少しだけ上昇」します。そのため、毎日基礎体温を測って記録し、低温期から高温期への移行があれば、排卵があったことがわかります。基礎体温の上昇は排卵のあとに起こるためこれだけでは正確な予測はできませんが、生理周期が安定している人であれば、次の排卵時期をある程度予測するのに役立つでしょう。
排卵があったことがわかれば次の生理予定日もより正確に把握できますし、排卵が定期的にあるか、遅れていないかといった自身のコンディションの確認にもなります。なかなか妊娠せず医療機関へかかる際、診断の参考にもなるので、生理周期が不安定な人もまずは基礎体温を測ってみましょう。
基礎体温の測り方
「基礎体温」は朝目覚めた直後のからだを動かす前の体温です。朝目が覚めたら、起き上がる前に婦人体温計を舌下にあてて測定します。測定したら記録してグラフにします。毎朝同じ時間に測るのがポイントです。
排卵はその月の体調やストレスなどの影響で遅れることもあり、1周期分だけで傾向をつかむことはできません。最低でも2~3周期分は測定を続けましょう。
基礎体温の測り方について、さらに詳しくは下記の記事を参照してください。
低温相最終日に排卵
排卵が起こるのは、基礎体温のグラフが低温期から高温期に移行する時期にあたります。基礎体温と排卵日の関連性を調べた研究によると、排卵日と一致したのは低温期の最終日が62.5%で最も多い結果に。高温に移行する前に体温が下がる体温欠落日は28.4%となっていたそうです[*5]。
人によって異なるものの、低温期の最終日に排卵することが多いようです。
「おりものの変化」で妊娠しやすい時期を知る
実は、おりものの性状も生理周期にあわせて変化します。
排卵日が近づくと量が増えよく伸びるように
「おりもの」は腟や子宮からの分泌物。普段は腟を酸性にして雑菌が子宮に侵入するのを防いだりしていますが、おりものには「精子が子宮内へ移動することを助ける」役割もあります。そのため、量や濃度は、ホルモンの影響で生理周期に沿って変化しています。
排卵が近づくとおりものは量が増え、手にとってみると糸を引くようによく伸びます。こうなることで、精子は腟内を進みやすくなります。排卵期のあとは量が少なくなり、粘度が高くなって伸びにくくなります。
基礎体温の変化と併せてチェック
とはいえ、おりものが変化するといっても、パンツやパンティライナーについたおりものの性状や量から排卵日を判断するのは難しいでしょう。もともとおりものは個人差が大きく、生理周期にともなう変化がよくわからない人も珍しくありません。
また、もし変化がはっきりわかったとしても、おりものの性状や量が変わるのは排卵の少し前からなので、これだけで正確な排卵日をつかむことはできません。チェックする際は、基礎体温の変化などと併せて参考程度に見るようにすると良いでしょう。
なお、不妊治療を行う医療機関などでは、おりものを採取してその性状を調べる「頸管粘液検査」をすることもあります。ただ、これは不妊症治療の際に精子の受け入れやすさなどを調べるためのもので、専門の医療機関であってもおりものの変化から排卵日を予測することは困難と言われています。
「排卵日予測検査薬」で妊娠しやすい時期を知る
排卵日を事前に知るために、「排卵日予測検査薬」を使用する方法もあります。
排卵日予測検査薬とは
排卵日予測検査薬は一般に「排卵検査薬」と呼ばれ、「第1類医薬品」として薬局やドラッグストア、ネット通販で販売されています。検査方法は尿をかけるだけ。
排卵日予測検査薬は、尿中の「排卵を促すホルモン(黄体形成ホルモン:LH)」が一定以上の量になったとき「陽性」になります。この検査薬が陽性になると、そのおよそ1日後が排卵日になります。
判定結果の表示は商品によって異なりますが、ラインの本数や色の濃淡から判定します。
LHサージからおよそ1日後に排卵
排卵が近づくと、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の分泌が急激に増え、それに伴い脳の下垂体から「黄体形成ホルモン(LH)」が大量に放出されます。この現象を「LHサージ」といいます。
血中のLHは数時間程度で尿中に排出され、「LHサージの約40時間後に排卵が起こる」とされています。つまり、検査薬でLHサージが起こったタイミングを捉えることで、およそ1日前に排卵を予測できるのです。
生理予定日の17日前から使用する
事前に排卵日がわかるといっても、生理周期を把握しないまま、やみくもに排卵検査薬を使うのは非効率です。
説明書にも書いてありますが、排卵日予測検査薬を使い始めるのは「次の生理開始予定日の17日前から」。前半で解説したとおり、排卵日は次の生理開始日の14日前ごろになるはずなので、その3日ほど前から使用するというわけです。
排卵が予想される前の数日に絞って検査することで、使い捨ての排卵検査薬を無駄にすることなく、効率的に排卵日を予測できます。
まとめ
最も妊娠しやすいのは、生理が始まるおよそ14日前の排卵期。生理前とも生理後とも言い難い、ちょうど中間くらいの時期です。生理から排卵までの期間は人それぞれなうえ、同じ人でもちょっとした変化でずれることも。事前に排卵日を知りたいときは、生理周期や基礎体温でおおよその時期を確認したうえで、排卵検査薬を使って予測しましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:直林奈月 先生)
※画像はイメージです
[*1]一般社団法人日本生殖医学会「Q1. 妊娠はどのように成立するのですか?」
[*2]日産婦学会監修_HUMANプラス改訂第2版 62p
[*3]Brown RL : Rate of transport of spermia in human uterus and tubes, Am J Obstet Gynekcol 47; 407-411,1944
[*4]Optimizing natural fertility: a committee opinion - Fertility and Sterility
[*5]公益社団法人日本産婦人科医会「排卵の予測」
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます