【医師監修】逆子体操のやり方が知りたい! 効果はあるの? 注意点とポイント
逆子体操は、逆子の赤ちゃんを治す方法のひとつとされていました。妊婦さん自身でできるので「やりたい」と思う人は多いようですが、実は、効果があるという十分な研究はいまだにありません。それでもやりたいと思う人のために、逆子体操のやり方と注意点、ほかに逆子を治す方法はあるのかどうかなどを解説します。
逆子体操のやり方<2種類>
逆子体操は、おなかの中にいる赤ちゃんの向きを矯正する方法のひとつと考えられていました。
逆子体操とは
逆子とは、赤ちゃんがママのおなかの中で「頭を上にし、お尻や足を下に向けた姿勢」をとっている状態のことです。専門用語では「骨盤位(こつばんい)」と言います。
逆子のまま経腟分娩するとリスクがある
逆子のまま、自然分娩(経腟分娩)をすると、赤ちゃんが出てくるより前に破水しやすかったり、赤ちゃんが分娩になる前に子宮からへその緒がはみ出て圧迫されて赤ちゃんが苦しくなったり、微弱陣痛でお産が長引いたりといった事態が生じやすくなります。
これらのことが起こると、脳性麻痺などになるリスクがあります。そのため、逆子の場合は「帝王切開」を選択されることが多くなります。
昔は乳幼児の死亡率も高く、分娩の時のリスクだけを減らしてもあまり意味が無かったこともあり、経腟分娩が行われていたと考えられます。現代では、元気に産まれてくれれば、その後は無事に育つことが多くなったから、相対的にお産の時のリスクが問題になっているとも考えられますね。なお、35週頃に帝王切開の予定が組まれますが、手術までに頭位になればキャンセルされます。
逆子を頭位に直すために効果があると信じられていた方法
最近は帝王切開で出産する人が5人にひとりくらいいて、とくに問題の起こらない場合ももちろんたくさんありますが、帝王切開といえども手術なのでそれなりにリスクはあります。
そのため、できるだけ避けたいと考える人もいるでしょう。また、もともと経腟分娩に強いこだわりのある妊婦さんもいます。その場合、経腟分娩をするためには、お産までに逆子が治っている必要があります。
そんな時に試されることがあるのが「逆子体操」でした。逆子体操は、赤ちゃんがおなかの中で自然に回転し、頭位になるのを促す方法のひとつであると以前は考えられていました。逆子体操には「胸膝位」と「ブリッジ法」の2種類があり、おおむね以下のような方法で行います。
(1)胸膝位
妊婦さんのおなかを下向きにした姿勢で行う方法です。
逆子体操|胸膝位のやり方
(1)両手、両膝を床につけたら、顔を床まで下ろし、ヨガの「猫の伸びのポーズ」のような姿勢になります。顔は左右のどちらか楽なほうに向けます。また、必要に応じてクッションなどを敷いておきます。
(2)そのままの姿勢を15分ほどキープし、おなかの中に赤ちゃんが回転できる余裕を作ります。
(3)15分後、突き上げていたお尻を下ろして床に寝そべります。このとき、うつ伏せや仰向けにはならずに、ママの体の左右どちらか一方を上にして、横向きの状態になります。
左右どちらを上にするかは、おなかの赤ちゃんの背中がどちらを向いているかによって変わってきます。赤ちゃんの背中がママの体の右側にあれば右側を上に、左側の場合は左側を上にして横になります。赤ちゃんの背中の向きは、健診時に医師に教えてもらいましょう。
ただし、逆子体操をするときにどちらに背中があるかはわからないので、お腹を触ってどちらに背中があるかを確認する必要があるでしょう。どちらにしろ、厳密なものでは無いので、あまり気にすることはありません。
(4)そのままの姿勢でしばらく休みます。
(2)ブリッジ法
逆子体操|ブリッジ法のやり方
(1)床に仰向けになり、お尻の下にクッションを置くなどして、腰の位置を少し高くします。膝は曲げておきます。
(2)そのままの姿勢を15分ほど維持します。
(3)15分後、お尻に敷いていたクッションを外して、床に寝そべります。この方法でも胸膝位同様、ママの体の左右どちらか一方を上にして、横向きになります。上にするのは、胸膝位と同じく、おなかの赤ちゃんの背中が向いているほうです。
(4)そのままの姿勢でしばらく休みます。
胸膝位、ブリッジ法ともに、お腹の中で赤ちゃんが自分から回転し、逆子から頭位になるのを期待して行います。
逆子体操の効果はどれくらい? 治った人はいるの?
逆子体操には果たしてどれくらいの効果があるのでしょうか。
効果があるとする研究はほとんどない
じつは逆子体操は、医学的効果がはっきり示されてはいません。とくに胸膝位では、腰を高くしておなかを下に向けた状態を15分間維持するという、妊婦さんにとってかなりきつい体勢を強いるにもかかわらず、「やってもやらなくても、赤ちゃんが回転する確率は変わらない」ことが研究で示されているため[*1]、最近では積極的には勧めていない医療機関も多いようです。
実は、逆子は多くの場合、何もしなくても分娩までに治るのです。苦しい思いをしてまでやる必要はありません(監修:太田寛 先生)
逆子は何もしなくても治ることが多い
逆子体操をするかしないかにかかわらず、そもそも赤ちゃんは一時期逆子であっても、お産のころまでには自然に治っていることが多いものです。
最終的に逆子でお産を迎える赤ちゃんは「約5%」
妊娠28週~出産までの健診で胎位が確認できた2,000人以上の妊婦さんでの逆子の割合を調べた研究では、妊娠28週では24.2%でしたが、妊娠30週で17.4%、妊娠32週11.6%、妊娠34週7.6%、妊娠36週5.6%と、週数が進むにつれて逆子の割合は自然と減っていき、出産時には5.4%だったことがわかっています[*1]。
妊娠9ヶ月のはじめまでに約6~8割が自然に治る
一方で、一度逆子と診断された赤ちゃんでも、妊娠28週ではそのうち82.2%、妊娠30週で72.8%、32週には58.6%が自然に頭位に治っていたと報告されています。ただ、この時期を過ぎるとお産が近づくにつれ逆子が治る割合は半数を切り、妊娠34週で37.3%、妊娠36週で10.2%にまで減っていたそうです[*1]。
そのため、逆子体操をするにしても、早い週数で行うことには意味はありません。
早産のリスクがある人はできない
なお、逆子体操は軽い子宮収縮を起こすことがあるため、早産のリスクがある妊婦さんは行うことができません。
それ以外の場合でも、逆子体操をしていておなかの張りが強くなったなど、少しでも異常を感じたら、すぐに中止しましょう。
効果のある逆子対策ってあるの?
逆子を矯正したいとき行われることがある、ほかの方法も紹介します。
外回転術
「外回転術」は、妊婦さんのおなかの外側から医師が赤ちゃんを回転させ、逆子を頭位にするという方法です。行うときはおなかの張り止めの薬を使い、やわらかくなった妊婦さんのおなかの上から赤ちゃんのお尻を押し上げて、ぐるっと回転させます。麻酔を併用することもあります。施術時間は10分ほどです[*3]。
なお、外回転術の成功率は60~70%ほどと言われています[*2]。ただ、まれに胎盤の早期剥離や赤ちゃんの心拍数の悪化を起こすことがあり、その場合は緊急帝王切開となります。外回転術はどの医療機関でも受けられるという方法ではないので、希望する場合はまずかかりつけ医に相談してみてください。
鍼灸
ほかには、逆子を改善すると言われる「鍼灸(はり、お灸)」もあります。ただし、鍼灸治療に逆子を改善する効果があるかどうかはよくわかっていません。
まとめ
逆子体操が逆子の改善に効果があるという研究はほとんどありません。ですが、なかなか逆子が治らず、改善のために何かしておきたいという場合は行うことも可能です。
逆子は何もしなくても自然に治ることが多いので、あまり気にせずに待ちましょう。逆子体操についてだけでなく、出産方法を決める時期などについて、疑問に思うことは遠慮なくかかりつけ医に聞いてみてくださいね。
(文:山本尚恵/監修:太田寛 先生)
※画像はイメージです
[*1]G Justus Hofmeyr, Regina Kulier : Cephalic version by postural management for breech presentation, Version published: 17 October 2012 , Cochrane Database of Systematic Reviews Review
[*2]『母性衛生 (Japanese Journal of Maternal Health)』58巻 2号 371-379p, 2017「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」
[*3]『病気が見える 産科 Vol10』第3版 p280, 284 メディックメディア
[*4]成育医療研究センター 骨盤位外来
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます