漢方薬にも副作用はあるの?飲み合わせ次第で危険に!?<ママのお悩み漢方相談室#3>
なんとなく効き目も副作用も穏やかなイメージのある漢方薬ですが、本当のところはどうなのでしょうか? また、一度に複数種類の漢方薬を飲むのはアリなのでしょうか? 今回は漢方薬の副作用にクローズアップして漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に解説いただきます。
薬を安全に服用するために守りたい3つのルール
漢方薬は西洋薬に比べて副作用がないという話をよく聞くのですが、これは本当ですか?
漢方薬を構成する生薬には、副作用が出やすいものも存在します。それに、ご存じのとおり副作用というのは必ず発生するわけではなく、そのときの体調や個人差もあります。これから漢方薬を活用したいと思っているみなさんに、ぜひ守ってほしい3つの約束があるので覚えておきましょう。
薬の服用 3つのルール
1. 規定量を超えて飲まないこと
2. 市販品など、複数の漢方薬を自己判断で飲まないこと
3. いつもと違うと感じたら、すぐに飲むのをやめて医師・薬剤師に相談すること
用法・用量は必ず守るということですね。
効果がすぐに得られないからといって、飲む量を勝手に増やしたり、間隔を縮めたりするのはNGです。たくさん飲んだからといって、効き目が強くなるわけではありませんし、むしろ規定量以上に飲んでしまって体調悪化を招く場合もあります。
漢方薬の効果が得られない理由としては、
・そもそも証に合っていない(自分の体質に合っていない)
・ゆっくり段々と効いてくる漢方薬である
複数の漢方薬を同時に飲んでもいい?
複数の漢方薬を同時に飲むのはなぜよくないのでしょうか。
冷え性や便秘のために漢方薬を服用している人が、風邪をひいたりして別の漢方薬を飲みたくなることもあると思うんですが……。
西洋薬と違って漢方薬はひとつの処方に複数の生薬が入っているので、いくつもの漢方薬を飲み合わせることにより、同じ生薬が重複してしまって、規定量以上に摂取しすぎるといった懸念もあるからです。
漢方医学では「証」に応じた漢方薬を一つ選んで継続することが基本となります。
もちろん、専門家が飲み合わせや証に応じて問題ない範囲で複数の漢方薬を提案する事はありますが、あくまでも専門家の管理のもと服用することが必要です。
私たち素人が、自己判断で漢方薬を組み合わせて同時に飲むのはやめておいた方が良いですね。
漢方薬ではどんな副作用が現れる?
実際にあった漢方薬の副作用としては、どんなものがあるのでしょうか?
アレルギー反応は服用後短時間で発生することが多く、皮膚にじんましんが出てきたり、痒くなったり、唇が腫れたりすることがあります。ひどい時はアナフィラキシーショックといって、意識が朦朧として、息苦しい、呼吸ができない、嘔吐、下痢などの激しい症状が出現します。
稀ではありますが、漢方薬の場合もこのようなアレルギー症状が起こる可能性もゼロではないので、万が一症状が出たらすぐに医師に相談してください。
漢方薬や構成生薬にも、正式に副作用が報告されているものがあります。代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
<小柴胡湯(しょうさいことう)>
肺の間質を中心に炎症や損傷が起こり、咳や息切れ、さらに進行すると呼吸状態の悪化から呼吸困難や肺がんを招く、間質性肺炎が副作用として報告されています。20年以上前には、死亡例もあり多くの事例でインターフェロン製剤という西洋薬との併用が確認されていることから、現在はこのお薬との併用は禁止されています。
<甘草(かんぞう)>
甘草は多くの薬効をもち、様々な漢方薬を構成する代表的な生薬です。実に、漢方薬の約7割に含まれています。咳を鎮めたり、炎症を抑えたり、胃の働きを高めるなどの作用があります。非常に甘いことから、甘味料として一般の食品に使用されることも多い生薬ですが、大量に摂取すると手足に力が入らなくなる症状や、むくみや血圧の上昇などを引き起こすことがあります。
<麻黄(まおう)>
風邪で処方される漢方薬の代表格である葛根湯や麻黄湯などに含まれ、体を温めて、発汗、咳を鎮めてくれる生薬です。麻黄の副作用として、動悸や頻脈、不眠、血圧上昇などが報告されています。心臓に病気がある人や、高血圧の人は服用に注意が必要です。
なるほど、それを考えるとやっぱり複数の同時服用や飲み合わせの失敗は怖いですね。
例えば、普段から便秘で大黄甘草湯を飲んでいたとして、風邪をひいて市販の葛根湯を追加した場合、いずれも甘草が入っている漢方薬のため、その点注意が必要になってくるわけです。
繰り返しになりますが、漢方薬は複数の生薬の組み合わせでできています。安全だからとあれこれ飲むと、特定の生薬を過剰摂取したり、逆にたくさんの生薬が混ざりすぎて、かえって効果を弱めたりすることもあります。知らないうちに良くない飲み方をしている可能性があるんです。
また、普段から飲んでいるお薬やサプリメントがある場合、他にも持病や既往歴については必ず事前に申し出るようにしてくださいね。
リスクのない薬はない。うまく活用しよう
結論としては漢方薬も医薬品だから副作用はある、ということですね。
また、何かおかしいと感じたら、服用をやめて専門家に相談するようにします。
薬の服用 3つのルール
1. 規定量を超えて飲まないこと
2. 市販品など、複数の漢方薬を自己判断で飲まないこと
3. いつもと違うと感じたら、すぐに飲むのをやめて医師・薬剤師に相談すること
「医薬品」であるという自覚をもって飲むこと、何かおかしいと感じたらすぐに医師・薬剤師に相談することが大切です。
まとめ
漢方薬は上手に活用すれば、治療でも体質改善でも使えるとても有用な薬ですが、一度に複数種類の漢方薬を服用するなど誤った使い方をすると副作用が現れることがあります。
「規定量を超えない」「自己判断で複数種類を飲まない」「異変を感じたら服用をやめて医師などに相談する」という3つのルールを守って、健康な身体を維持していきましょうね。
(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)
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