子どもにスマホを買い与える前に知っておきたい、フィルタリングの「基本のキ」 #親と子のネットリテラシー入門 Vol.3
ここ数年で、子どもを取り巻くデジタル環境は劇的に変化。私たち親世代は、子どものデジタル機器の付き合い方や、ITリテラシーの教え方にどう向き合ったらよいのでしょうか? ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーとして活躍し、自身も二児の母である鈴木朋子さんに教えてもらいます。
フィルタリングって本当に必要なの?
前回は、スマホルールの作り方についてお話ししました。でも、スマホルールを作れば安心というわけではありません。例えば、「YouTubeは1時間まで」と約束していても、親子ともに1時間経ったことに気づかないこともあるでしょう。「約束の時間を過ぎてるわよ!」「知らなかったんだもん!」と、不要な争いが起こりかねません。
子どものスマホを見守るには、「アナログ(=スマホルール)とデジタル(=フィルタリング)の両輪での見守り」が必要です。
18歳未満の青少年がスマホや携帯電話の契約・機種変更をする際、格安スマホを含む携帯電話事業者は「フィルタリング」の設定が法律で義務づけられています。お子さんのスマホを契約しに行ったとき、フィルタリングの設定について説明を受けた経験がある方もいますよね。
ただし、これは子どもの名義でスマホを契約する場合に限ります。まだお子さんが小さいからと、親の名義のスマホやタブレットを使わせている場合は、フィルタリングの設定をしないまま使っているケースも多いでしょう。
実際に、どれぐらいの子どもがフィルタリングを設定しているのでしょうか。総務省が2022年5月に発表した「我が国における青少年のインターネット利用に係るペアレンタルコントロールに関する調査結果の公表」によると、フィルタリングの利用率は37.8%でした。
「利用している」がもっとも低い未就学児は、親と共用しているケースが多いからと考えられます。小学低学年ではフィルタリング利用率が38.7%と増えていますが、まだ低めです。小学高学年、中学生がもっとも高く、専用のスマホを持つ際に親がフィルタリングについて意識を高めたのかもしれません。また、高校生になると、一度設定したフィルタリングを解除している家庭が多いようです。高校生ともなるとITリテラシーが高い人も多く、必要性を感じなくなったのだと思います。
フィルタリングの種類
フィルタリングについて、あらためておさらいしておきましょう。フィルタリングとは、青少年にとって有害な情報を遮断する仕組みです。ももともとは違法と思われる行為や暴力的な内容を掲載しているウェブサイトを表示させない機能でしたが、現在はスマホの利用時間やアプリ利用の制限などの見守り機能も含まれています。また、「ペアレンタルコントロール」機能という、親のスマホから子どものスマホを遠隔操作できる機能も併用されることが増えています。
フィルタリングを利用する場合、以下の種類があります。
(1)スマホのOSが提供するフィルタリング
iOSは「スクリーンタイム」「スクリーンタイムのファミリー共有」、Androidは「Digital Wellbeing」「ファミリーリンク(アプリ)」
(2)携帯通信会社が提供するフィルタリング
「あんしんフィルター」など
(3)セキュリティ企業などが提供するフィルタリング
「iフィルター」や「スマモリ」など
(4)アプリ内のフィルタリング機能
ひとつずつ、概要を説明します。
(1)スマホのOSが提供するフィルタリング
AppleやGoogleが提供しているフィルタリングは、無料で使うことができます。子ども専用のApple IDやGoogleアカウントを作成し、親のアカウントと連携しておくと管理がスムーズになります。
iOSの「スクリーンタイム」は「設定」にありますが、Androidの「ファミリーリンク」はアプリを別途インストールして設定します。
(2)携帯通信会社が提供するフィルタリング
「あんしんフィルター」は、年齢を設定すると、その年齢にふさわしいアプリだけを利用できるようになります。「このアプリは使わせたい」といったカスタマイズもできます。子どもの見守りのために位置情報を知りたい場合は、携帯通信会社が用意している位置情報検索サービスに加入する必要があります。
(3)セキュリティ企業などが提供するフィルタリング
セキュリティ企業が販売しているフィルタリングサービスは、MVNO(携帯電話会社から通信回線を借り、料金の安い「格安SIM」を提供している事業者)がオプションとして提供していることもあります。有料にはなりますが、独自の機能で見守りができます。
(4)アプリ内のフィルタリング機能
アプリ内にも時間制限や機能制限など、子ども用のフィルタリング機能が用意されている場合があります。スマホの利用制限と組み合わせて使うこともできます。
フィルタリングでできること
フィルタリングを設定すると、おおよそ以下のような制限ができます。
●年齢にふさわしくないコンテンツを表示しない
●スマホの利用時間を制限する
●アプリの利用、アプリごとの利用時間を制限する
●課金やアプリのインストールを許可制にする
●子どもの位置情報を把握する
「スマホの利用時間」は、月曜日は20時まで、金曜日は22時までなど細かく設定でき、時間が来ると画面がロックされます。ロックの解除や延長には、親のパスコードが必要です。アプリごとの利用時間についても同様です。利用していいアプリも決められます。
子どもの課金トラブルも増えています。課金は親の承認制にしておきましょう。
有料アイテムと知らずに子どもが購入してしまい、請求額を見て驚く保護者も少なくありません。こうしたトラブルは、親のスマホを子どもが借りているときや、お古のスマホに決済情報が残っていたなどのケースが多いのですが、コンビニでアプリストア用のカードを購入し、お年玉を使い果たす子どももいます。自分のお小遣いとはいえ、ゲームに使わせたくない場合など、承認制にしておくと安心です。
また、位置情報の把握も見守りには大切です。親が留守の間でもきちんと帰宅できたのか、習い事には向かったのかなど、スマホを通じて把握することができます。万が一、誘拐などのトラブルに遭遇しても、早めに気づくことができるかもしれません。
これだけの見守り機能が用意されているのですから、「難しそう」「子どもが嫌がる」と敬遠せず、ぜひフィルタリングを設定してあげてください。
フィルタリングだけでは守り切れない
でも、フィルタリングは万能ではありません。前述の調査では、スマホルール(家庭内ルール)がある子ども、フィルタリングを設定している子どものトラブルに遭遇する相関関係も調べています。すると、「家庭内ルールあり・フィルタリングサービスあり」「家庭内ルールあり・フィルタリングサービスなし」の場合、両方ない場合に比べてトラブルに遭遇しにくい傾向が見られたとのこと。しかし一方で、「家庭内ルールなし・フィルタリングサービスあり」の場合、トラブルに遭いにくい傾向はなかったそうです。やはり、スマホルールでの見守りと、フィルタリングサービスの活用の2つがトラブル回避に必要なのです。
そして、もっとも注意が必要なケースは、親のスマホを子どもに貸すような低年齢のお子さんです。親のスマホに子ども用のフィルタリングを設定すると、大人には使いにくくなってしまうため、フィルタリングが設定されていないスマホを使うことになってしまいます。フィルタリングが簡単にオン、オフできるような機能があればいいのですが、現在はそうなっていません。親のスマホを貸す際には、アプリ内のフィルタリングを活用し、できるだけ利用している様子を見守るようにしましょう。
(文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)