【新連載】親はどうすべき? 子どもを取り巻くデジタル環境の現状 #親と子のネットリテラシー入門 Vol.1
ここ数年で、子どもを取り巻くデジタル環境は劇的に変化。私たち親世代は、子どものデジタル機器の付き合い方や、ITリテラシーの教え方にどう向き合ったらよいのでしょうか? ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーとして活躍し、自身も二児の母である鈴木朋子さんに教えてもらいます。
マイナビ子育てをご覧の皆さま、こんにちは! ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーの鈴木朋子です。約10年前、娘にガラケーを持たせたことをきっかけに「子どもとケータイ」に興味を持ち、その後スマホ安全アドバイザーとして子どもがスマホを安全に使う方法をご提案するようになりました。この連載が皆さまのお役に立てればうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、春は進学、進級の季節ですね。新生活のスタートに向けて、親子ともども準備を進めているころではないでしょうか。我が家も娘が進学するため、入学準備の真っ最中です。
いつの時代も子育ては大変ですが、今、小さなお子さんを育てているご家庭は、これまでになかった課題にぶつかっているでしょう。それは、「子どもとデジタル機器」の問題です。
生まれたときから周囲にスマホやPCがあり、ネットでYou Tubeを見たり、知育アプリで遊んだりと、今の子どもたちは親世代とは異なる環境で育っています。「ネット漬けにはしたくない」と思っていても、家事に集中したいときや、テレワークの会議中にはネットが便利。楽しい動画を見せているうちに、用事を済ませることができます。
とはいえ、あまり見せたくない気持ちもあることから、周囲の家庭がどうしているのか気になりますよね。そこで、調査から今の子どもたちがどのようにデジタル機器と向き合っているのか、探ってみましょう。
0才からデジタル機器を利用する子どもたち
今の子どもたちは、生まれた時から親がスマホやタブレットを楽しんでいる姿を見ています。自分だって見たいと思うのは、無理もないことですね。実際に、子どもたちは何才ぐらいからデジタル機器に接しているのでしょうか。
東京ガスが2021年11月に行った「子育てにおけるデジタル活用と絵本の読み聞かせに関する調査」[*1]を見ると、0才からデジタル機器に接している子どもがいることがわかります。そして、3歳の子どもの51.0%が、自分または親のデジタル機器を利用していることがわかりました。
また、子どもがデジタル機器で利用している機能のトップは「動画」で51.7%、次いで「ゲーム」が27.8%、「子ども向けウェブサイト」が22.6%となっています。この調査は小学生までのお子さんが対象なので、親が許可している「子ども向けウェブサイト」を見ているのかもしれません。
では、実際の利用時間はどれぐらいなのでしょうか。Amazonが2021年5月に行った「子どものデジタルデバイス利用に関する調査」[*2]によると、平日の平均利用時間は未就学児が57.5分、低学年は58.9分、高学年は75.8分で、休日は長くなり、未就学児が76.7分、低学年は92.4分、高学年は117.1分となっています。
皆さんのお子さんは、平均と比べていかがでしょうか。それぞれの家庭の事情があるため、一概に多い、少ないとは言えませんね。ただ、「うちの子だけが長く視聴しているわけではないんだ」と、安心した人も多いのではないかと思います。
コロナ禍で延びるデジタル機器の利用時間
小学生までの子どもたちは、家庭にあるデジタル機器で動画を中心に親しんでいる実態がわかりました。でも親としては利用時間が増えることで、「視力が悪くなるのでは」「睡眠時間が減ってしまう」など、心配が尽きません。何せ、私たちの子ども時代にはネットで動画を見る習慣はなかったので、今後どんな影響が起きるのか気になってしまいます。
そして、ここ数年は新型コロナウイルス感染症により、世界中が未曽有の危機に陥っています。在宅時間が増え、子どもがデジタル機器に向かう時間も増えているのです。
2021年3月、東京都都民安全推進本部が都内在住の小中高生に行ったアンケート調査[*3]によると、新型コロナウイルス感染症の影響で子どものネット利用時間が増えたと回答した保護者は、50.1%に上りました。
何をする時間が増えたかという問いには、「動画配信・動画共有サービス(Amazon Prime Video、Netflix、YouTube等)で動画を見る」が 63.6%でもっとも高く、次いで「メッセージアプリ(LINE等)で家族・友人等と連絡を取る」が38.5%、「オンラインゲームで遊ぶ」が35.4%となっています。
Amazon Prime VideoやNetflix、YouTubeなどは、コンテンツのひとつずつが長いことが多く、見始めると時間が長くなりやすいもの。また、コロナ禍で会えない友人との交流に、SNSを利用しているのもわかりますね。オンラインゲームを友人と繋ぎ、ボイスチャットで会話をしながらゲームを楽しむことも多そうです。
コロナ禍で親もデジタル機器の利用が増えているとはいえ、子どもをスマホ漬けにしないために家庭でも工夫しているようです。東京都の調査では、家庭内で利用する時間や場所についてルールを設けていると答えている保護者は、42.3%。利用時間が長くなりがちなスマホに対して、家庭で取り組んでいることがわかります。
デジタル機器の利用時間に関しては、保護者がもっとも頭を痛めている悩みです。しかし、使わざるを得ない理由がまだあります。それは、GIGAスクール構想です。
GIGAスクール構想の開始
GIGAスクール構想とは、2019年に文部科学省が開始した、児童ひとりに1台の端末と高速ネットワークを整備する取り組みです。コロナ禍で実現の前倒しが決定し、2020年度内の実現に向けて進められました。文部科学省の「端末利活用状況等の実態調査」によると、2021年7月時点で、全国の公立の小学校等の96.2%、中学校等の96.5%が、「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を行っているとのことです。[*4]
端末(タブレット)の利用を校内のみにしている学校や、家庭への持ち帰りを許可している学校など、自治体によって対応はさまざまです。問題は、家庭へ持ち帰ることでタブレットの利用時間が増えているケースが多いこと。フィルタリングの設定も自治体任せなことが多く、家庭での利用に適切とは限りません。
こうしてお話していくと、暗たんたる気持ちになってしまった人もいるかもしれません。でも、デジタル機器とインターネットはそれぐらい私たちの暮らしに必要なものとも言えます。テレワークやオンライン授業、ネット通販でのショッピング、宅配などもネットがなければ実現できません。家でゆっくり映画を見たり、サブスクリプションで音楽が聴き放題になったりと、心を豊かにする役目も果たしてくれます。
そして子どもたちが成長していく未来は、さらにネットの役割が重要になります。子どもが将来不自由なくネットを使いこなせるように、安全な方法で導いてあげましょう。そしてそのために、まだネットに未熟な私たち親世代も、ネットやデジタル機器を学んでいかなければなりません。この連載で、そのお手伝いができればと思っています。
(文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)