放置してはいけない子供の便秘。その種類から対処法まで、小児科医が詳しくレクチャー!
子供の便秘はよくあることだけに、様子見してしまいかねません。でも、じつは早めに解消したほうがいい、と小児科医の森戸先生。便秘の種類や原因、対処法を伺いました。
「器質性便秘」と「機能性便秘」
便秘には、大きく分けて「器質性便秘」と「機能性便秘」があります。
器質性便秘というのは、なんらかの病気、主に見てわかるようなものが原因で、便の通りが悪くなるもの。お腹がパンパンに張る、おならが出ない、吐く、便の量が極端に少ない、体重がなかなか増えない、血便が出る、便秘と下痢が続くなどということがあったら、小児科でよく診てもらいましょう。
一方、機能性便秘というのは、特に理由がないもので、子供のほとんどはこちらです。機能性便秘であっても、週に3回より少ない回数しか排便がない、トイレで長時間がんばっても便が出なくて泣く、肛門が切れて血が出るようなら治療対象になります。
ちなみにネット上には、よく間違った便秘の理由と対処法が書かれています。たとえば、以下のようなものです。
「母乳の質が悪いから便秘になる」
赤ちゃんが生きていくために重要な母乳は、お母さんの食事が変わっても、そう簡単に成分が変化しないようになっています。また母乳育児中のお母さんが食物繊維をたくさん摂っても、赤ちゃんの便には全く関係ありません。
「水分や運動が不足しているから便秘になる」
子供は喉が乾けば水分を摂取するはずですし、水分は食事からも摂れます。また便秘をしている子が必ずしも運動不足とは限りません。
「便秘になったのは叱られてストレスを感じたから」
精神的な面が全く関係ないということはありませんが、叱られなければ便通がよくなるということはなさそうです。
こういった俗説はあまり気にせず、便秘は解消できるものなので放っておかないで小児科を受診しましょう。
綿棒刺激や浣腸、便秘薬で解消
特に原因はなさそうな便秘になった場合、赤ちゃんなら綿棒刺激をしてみましょう。赤ちゃんを仰向けに寝かし、綿棒にベビーオイルやワセリンをつけて肛門をやさしくつつきます。それでも出ない場合、綿棒を肛門から1〜2cmくらい入れて、円を描くようにゆっくりと動かします。これだけで出ることも多いでしょう。
1歳以上の場合は、市販のグリセリン浣腸を使いましょう。ぬるめのお湯などに浣腸を入れて人肌程度に温めてからフタを取り、先端の部分にベビーオイルやワセリンをつけて肛門にやさしく差し込み、グリセリン液を押し出します。すぐに排便しようとするとグリセリン液のみが出てくるため、そのまま少しだけ我慢させてから排便を促しましょう。
それでも便秘が長引く場合、浣腸を嫌がる場合、もしくは様子がおかしいと思う場合は、小児科を受診しましょう。小児科でも、まずは綿棒刺激や浣腸を行うことが多いのですが、飲み薬を出すこともできます。
「綿棒刺激や浣腸、便秘薬は癖になる。それなしでは排便できなくなる」という俗説もあるのですが、安心してください。家庭で数回使っただけで癖になることはありません。一方、便秘を放置すると、排便時にお尻の穴が切れたり痛かったりすることで、子どもがより排便を我慢しようとして、より便秘が頑固になりやすいのです。
また便秘が習慣になっている場合、短期間で薬をやめると、再び便秘に逆戻りすることがあります。週3回以上、苦痛なく排便できるようになるまで、最低でも半年くらいは治療しましょう。
そのうえで生活習慣にも気をつけてください。毎日だいたい決まった時間に余裕を持ってトイレに行く、常にトイレは我慢せずに行く、食物繊維が豊富な野菜や果物や海藻類などをたくさん食べるようにするといいでしょう。
参照)森戸やすみ『小児科医ママの子どもの病気とホームケア』(内外出版社)
(編集協力:大西まお)