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2021年03月15日 15:39 更新

【医師監修】妊娠超初期の出血!| その原因と対処法

妊娠超初期は医学用語ではなく一般的な言い回しですが、だいたい「卵子が受精して子宮に着床するころ」を指して使われることが多い言葉です。まだ妊娠したかどうか確定できないこの時期、様々な要因から出血することがあります。そんな出血の原因や種類について紹介します。

妊娠超初期に起きることがある「着床出血」

お腹の前でハートを持つ、出血も心配な妊娠超初期のイメージ
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妊娠初期に出血することは珍しくありませんが、まずは妊娠超初期ならではの出血ともいえる「着床出血」から説明していきます。

着床出血とは?

卵子は卵管の中で受精し、細胞分裂を繰り返して育ちながら子宮に移動していきます。
子宮内に到達するころには細胞数が数百個以上になった「胚盤胞」という状態になり、子宮内膜にくっつき、潜り込んで根を張ります。この現象が「着床」です。

胚盤胞が子宮内膜に潜り込むとき、そこから少し出血することがあり、この出血が「着床出血」と呼ばれるものです。

着床出血の症状と起こる時期

着床出血の量と痛み

着床出血の量は通常ごく少量で、量が多いことはあまりないようです。また、痛みはほとんどないことが多いようです。

着床出血の色

色は、生理の時のような鮮血であることも、またおりものと混じってピンク色をしていることもあります。さらに、出血から時間が経って出た場合は茶色をしていることもあります。
そのため、色から着床出血かどうか確認することはできません。

着床出血の時期

着床出血は、個人差が大きいですが、いつもの生理が始まる予定日のころまたはその数日前から起こり、数時間~長くても3日間程度で終わると言われています[*1]。
生理よりも量が少ないので、着床出血だと気づく人もいることでしょう。

着床出血が起こる確率

着床出血が起こる人は、妊娠した人の8~25%くらいと言われています[*2]。特に出産経験があると、着床出血は起こりやすいと言われています。

妊娠初期出血のその他の原因

妊娠超初期に出血してお腹を押さえる女性
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着床出血以外にも、妊娠初期には出血しやすいものです。
妊娠初期に起こりうる、着床出血以外の出血原因についてもチェックしておきましょう。

流産

流産とは、妊娠22週未満で妊娠が中断してしまうことを言います。胎児が早く外に出てきてしまったり、子宮内で亡くなってしまうことで起こります。

流産は全妊娠の約15%で起こると言われ、けして珍しいものではありません。特に、流産の中でも妊娠12週未満に起こるものを「早期流産」といい、流産の約8割がこの早期流産とされています[*3]。

早期流産のおもな原因は、染色体異常など胎児側にあることが多く、残念ながら、妊婦さんが何か努力したとしても止めることができない場合がほとんどです。

なお、流産で出血を起こす状況には下記のようなものがあります。

稽留流産

胎児や胎芽が子宮の中で亡くなったまま、とどまっている状態です。
たいていは痛みや出血などの症状はありませんが、少量出血することもあります。
稽留流産がわかった場合は、入院して子宮内容除去手術を行う場合と、外来で経過を見て自然排出を期待する場合があり、医師の判断や患者さんの希望によりどちらかを選択します。

進行流産

流産が進行している状態です。
大量の出血が見られ、陣痛のような腹痛が起きます。

なお、進行流産によって、胎児や胎芽、卵膜などの妊娠に伴うものが完全に体外に出ると「完全流産」となって、出血や痛みは落ち着いていきます。


不全流産

一方、進行流産を経ても、胎児や胎芽、妊娠に伴う組織が子宮の中に残ってしまうと、「不全流産」という状態になり、下腹部の痛みや出血が続きます。この場合も子宮内容除去術が必要になります。

切迫流産

切迫流産は流産が起こるリスクがある状況のことです。そのため、流産とは違って、妊娠を続けられる可能性があります。切迫流産になると、少量から中くらいまでの出血が見られます。また、下腹部に軽い痛みや張り、腰痛も起こります。

妊娠初期の切迫流産が流産へと進行するのを確実に止める方法は確立されていませんが、状況によって、安静にしたりできるだけ横になって過ごすことを指示されることがあります。


絨毛膜下血腫

胎児と羊水は、卵膜という薄い膜で包まれています。
この卵膜は、子宮内膜から作られた脱落膜と、受精卵から作られた絨毛膜・羊膜に分かれています。

この絨毛膜と脱落膜の間に、血腫(血のかたまり)ができることがあります。これが「絨毛膜下血腫」で、妊娠初期の性器出血から発見されることが多いと言われています。

この血腫はたいてい、妊娠初期のうちに自然と吸収されてなくなります。ただし、大きな絨毛膜下血腫が妊娠中期まで残ると、流産や早産を引き起こすこともあります。


子宮外妊娠(異所性妊娠)

受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまった状態が「子宮外妊娠(異所性妊娠)」で、すべての妊娠の約1~2%に見られると言われています[*2]。

異所性妊娠では、卵巣や腹腔、子宮頸管に着床する場合もありますが、その98%は卵管に着床する「卵管妊娠」で、卵管妊娠をした人のおよそ80%に性器出血があると言われています[*2]。

卵管妊娠の多くは、妊娠3ヶ月ごろまでに卵管流産(受精卵が着床した箇所から出血して流産となること)または卵管破裂が起こります。卵管流産を起こした場合は、出血は少量で、赤く暗い色をしていることが多いようです。出血は続くこともあれば、とぎれとぎれに出血することもあります。下腹部の痛みもとぎれとぎれに起こります。

出血量が多い場合は、卵管破裂の可能性があります。急に下腹部に強い痛みが起こり、場合によっては出血性ショックを起こして命にかかわることもあります。

妊娠の可能性がある女性で、産婦人科で超音波検査によって子宮内に胎嚢があることをまだ確認されていない場合は、異所性妊娠に注意が必要です。妊娠検査薬で陽性が出たらあまり放っておかず、超音波検査を受けて異所性妊娠ではないことを確認しておきましょう。

胞状奇胎

胞状奇胎は、通常であれば胎盤の子宮に接する箇所である「絨毛」の中に体液がたまって膨れ上がり、小さな水ぶくれがたくさんできたように見える状態です。40歳以上の高齢妊娠や、過去に胞状奇胎になったことがある人に起こりやすいのが特徴です。

胞状奇胎は、すべての絨毛が水ぶくれのようになる「全胞状奇胎」と、絨毛の一部に異常が起こる「部分胞状奇胎」に分けられます。核のない卵子に1つまたは2つの精子が受精すると「全胞状奇胎」が起こり、健康な卵子に2つの精子が受精すると「部分胞状奇胎」が起こります。

残念ながらどちらの胞状奇胎も絨毛癌を引き起こすことがあり、また胎児がそもそも存在しないか、存在しても成長していけないため、手術で妊娠を中断することになります。

胞状奇胎になった人の90%には、妊娠初期から少量~中くらいの出血が続きます。また、30~40%の人にはひどいつわりが起こります[*4]。なお、出血やひどいつわりは、部分胞状奇胎の人よりも全胞状奇胎の人によく見られるとされています。

子宮頸管ポリ―プ

ポリープとは、いぼのような盛り上がったできもののことを言います。
子宮頸管ポリープは、子宮頸管の一部が増殖してできたポリープです。30~60代の女性や、5回以上出産経験のある女性によくみられると言われています。

子宮頸管ポリ―プでは症状はほとんどないことが多いのですが、性交時に出血したり、血の混じったおりもの、ねばっこいおりものなどの症状がみられることもあります。

子宮頸管ポリープの多くは良性ですが0.2~0.7%は悪性と言われているので[*2]、発見された場合はポリープの一部を取って検査することになります。

子宮腟部びらん

びらんとは、ただれという意味で、皮膚や粘膜がなくなってその下の組織が外に出た状態です。子宮の一番腟に近い部分を子宮腟部といい、ここにできたびらんが「子宮腟部びらん」です。

ただし、子宮腟部びらんの多くは病的なものではなく、性的に成熟した女性では、女性ホルモンのエストロゲンの影響で起こることが珍しくありません。ですから、無症状なら放置しても問題ありません。

子宮腟部びらんでは、おりものが増えたり、出血することもあります。出血や血の混じったおりものが続く場合は、レーザーや冷凍療法、高周波凝固などで治療することがあります。

子宮頸がん

子宮頸がんは子宮頸部にできる悪性腫瘍で、30~60歳の女性を中心に起こります。
子宮頸部がヒトパピローマウイルスに感染して起こり、女性の生殖器に起こるがんの中ではもっとも多いと言われています。

子宮頸がんになると、おもに性交渉をした時に出血が見られるようになります。
子宮頸がんであることがわかると、個々の状態や進行などに応じて、子宮の全摘出や放射線療法、抗がん剤などによって治療することになります。

20歳以上の女性は2年に一度、子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。定期的に検診を受けておくと、もしがんが見つかっても早期に治療を開始できるからです。また、HPVワクチンの接種は子宮頸がん予防につながります。

出血の色で危険か判断できるの?

性器からの出血のイメージ
Lazy dummy

妊娠を心待ちにしていると、生理が来る頃の出血は着床出血かもしれないと思うかもしれません。でも出血の原因を、出血量や色、状態から判断するのは難しいものです。

出血の原因は、ここまでで説明したとおり着床出血以外にもあり、中には深刻な体調不良を引き起こしたり命に関わるものもあります。

不正出血が続いたり断続的に出血が見られたら、ぜひ早めに産婦人科に相談してくださいね。

色だけでなく、いつからの出血か、量、臭いなどにも注意して

産婦人科で診察を受ける際は、「いつからの出血か」「今までの出血量」「出血の状態(色、粘り、臭いなど)」を診察の時に医師に伝えましょう。診断の手がかりとなり、病気を見逃しにくくなります。

まとめ

性器からの出血は、色々な原因から起こります。妊娠を心待ちにしている人は、体験談を目にすることも多い「着床出血」が気になるかもしれませんが、妊娠超初期の可能性がある時期に出血を起こす原因は着床出血だけではありません。異所性妊娠や胞状奇胎などの異常、子宮頸管ポリープや子宮腟部びらん、子宮頸がんなどによることもあるのです。もし、生理ではなさそうな出血に気づいたらあまり放っておかず、異常がないか産婦人科医に確認してもらってくださいね。

(文:大崎典子/監修:佐野 麻利子先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]American Pregnancy Association:What is Implantation Bleeding?
[*2]『NEWエッセンシャル産科学・婦人科学第3版』医歯薬出版
[*3]『病気が見えるvol.10産科』メディックメディア<
[*4]『病気が見えるvol.9婦人科・乳腺外来』メディックメディア

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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