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2023年05月26日 07:07 更新

過干渉に育てられた人の5つの特徴とは? 過干渉親の5つの共通点

子どもの決断や行動を見守ることができずに、つい手や口が出てしまうことってありますよね。日々の子育ての中で「もしかしたら自分は過干渉かも?」と不安になってしまうこともあるかと思います。 過干渉とは何なのか、子どもの成長にどんな影響を及ぼすのか、自分が過干渉かもと感じた時に取れる対策などを紹介していきたいと思います。

<<この記事でお伝えすること>>
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① 「過干渉」と「過保護」の違い
② 過干渉に育てられた大人の特徴
③ 過干渉に育てられている子どもの特徴
④ 過干渉になりがちな親のタイプ
⑤ 「自分は過干渉かも…」と感じた時の対策
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(解説:臨床心理士 井澤 多恵/うららか相談室)

過干渉とは? 過保護との違い

過干渉な親

「過干渉」と混同されやすい養育態度として「過保護」があげられます。このふたつの養育態度は、過度の関心が子どもに向けられているという点では似通っているのですが、子どもがそれを望んでいるのか・望んでいないのかという視点から見てみると大きな違いがあることが分かります。

過保護とは

「過保護」とは、子どもの欲求を養育者が叶えようとする養育態度を意味し、子どもが欲しがる物を何でも買い与えたり、嫌がることを代わりにやってあげたりというような行動となって現れます。周囲には「甘やかし過ぎ」といった印象を与えます。

過干渉とは

一方で「過干渉」とは、養育者の欲求を子どもに押し付ける養育態度を意味し、子どもの交友関係に口を出したり、子どもが嫌がっている習い事などを強制したりというような行動となって現れます。周囲には「厳し過ぎ」「教育ママ・教育パパ」といった印象を与えます。

過剰な保護も過剰な干渉も、子どもの成長にとってはどちらもあまり好ましいものではありませんが、子どもの気持ちを無視して養育者の欲求を押し付ける「過干渉」が及ぼすマイナスの影響は、とても大きいと考えられています。

過干渉に育てられた人の5つの特徴

過干渉な親

多くの精神科医や心理学者が、過干渉な養育態度は子どもの成長に悪影響を与えると主張しています。

過干渉な養育態度が子どもの成長や人格形成に与える影響は広範囲に及びますが、5つのポイントにまとめて紹介していきたいと思います。

1. 自己肯定感や自己効力感が低い

過干渉な養育者のもとでは、ありのままの自分を受け入れてもらえる場面が少なく、逆に自分の考えや感情を否定される場面が多くなります。その結果、自分に対する肯定感や自信を育む機会が不足しがちになってしまいます。

また、自分で決めたことに取り組んで達成感を得たり、失敗をする中で「次はこうしてみよう」と試行錯誤をする機会が奪われてしまうので、
「自分ならできる」
「失敗しても最後はきっと上手くいく」
というような自己効力感が育ちにくくなってしまいます。

2. 無力感を抱いている

自己肯定感や自己効力感が育ちにくいことに加えて、自分の考えや気持ちよりも養育者の意見や決断などを強引に押しつけられる体験を積み重ねることで、
「結局、親の言うようにしかならない」
「自分が何を言っても変わらない、何をしても意味がない」
というように、養育者に対してだけではなく、周囲の環境に対しても積極的に関わっていこうという気力が低下してしまいます。

最終的には
「親がそう言うから」
「周りの人たちがそう言うから」
と、自分の人生に対して他人任せで受け身な姿勢になってしまう可能性が高くなります。

3. 罪悪感がある

過干渉な親

子どもの行動をコントロールしようとする過干渉な養育態度は、子どもが思い通りにならないと「怒る」「罰を与える」というような行動に繋がりやすくなります。

養育者が感情的になりやすかったり、怒られたり罰を与えられたりすることの多い子どもは、「親の機嫌が悪いのは自分のせいだ」「自分のせいでまた親を怒らせてしまった」というような罪悪感を募らせていくことになります。

4. 過剰適応してしまう

「親を怒らせないように」
「親をがっかりさせないように」
養育者の顔色を伺いながら生活をすることで、自分の意見や行動を養育者や周囲の期待に合わせるために過剰に努力をしようとする状態に陥ってしまうこともあります。

周囲からよく思われたい、認めてもらいたいという欲求は誰もが持っている自然なものですが、自分の欲求よりも周囲に良く思われることを優先してしまう結果、心身のバランスを崩し、うつ病や不安障害などを引き起こしてしまう危険性もあります。

5. 人間関係がうまくいかない

過干渉な養育者に育てられた子どもは、自分の子どもに対しても過干渉な関わりを持ちやすくなる可能性が高くなることも知られています。

養育者との間の“コントロールをする” “コントロールをされる”という関係が子どもの中で人間関係のモデルとなってしまい、養育者以外の他者との関係性の中でも、コントロールをしたり、コントロールをされたりというパターンに陥りやすくなってしまうのです。

また、干渉的な養育者から抑圧された欲求のはけ口として、他者に対して攻撃的・暴力的になってしまうこともあります。

過干渉に育てられている子どもの特徴・サイン

過干渉な親

過干渉な養育者に育てられている子どもには、以下のような特徴がサインとして現れてくる可能性があります。

■ 自分で決められない
■ 周囲の空気や顔色に敏感
■ 学力の低下
■ いじめ


こういった特徴が子どもの行動に現れる背景には様々な身体的・心理的な要因があるので、『これらのサイン=過干渉に育てられている』と結論付けることはできませんが、参考になればと思います。

■ 自分で決められない
自分で行動をしたり決断をしたりする機会を与えられたことがあまりない、あるいは自分の行動や決断を否定されてしまうことが多いため、意見を聞かれても答えることができなかったり、自分のことなのに自分で決められなかったりします。

■ 周囲の空気や顔色に敏感
養育者の顔色を伺うことが習慣となっているため、周囲の空気やを敏感に察知して、それに合わせた行動をしようとする傾向があります。

■ 学力の低下
知能障害や発達障害といった理由がないにも関わらず、予測される水準よりも低い学力を示す場合、家庭内に過剰な干渉やコントロールがある可能性が潜んでいます。

■ いじめ
干渉されたりコントロールされたりするストレスから、友人やクラスメートに対していじめをしてしまうケースも。逆に他者からコントロールをされることに対する耐性が強くなっているため、いじめられている状況を受け入れてしまう可能性もあります。

過干渉になりがちな親の4つのタイプ

過干渉な親

養育者が過干渉になってしまう背景にはいくつかの要因があると考えられます。「もしかしたら自分は過干渉かもしれない」と感じたら、以下のような傾向性がないか自分自身を振り返ってみることができると思います。

① 子どもの成長が認められない

子どもは日々成長しているもの。「子育て」と一言で言っても、関わり方は子どもの成長に応じて変わっていくものです。
例えば、子どもがまだ小さいうちは着る服を選んであげていたかもしれませんが、子どもが成長するにしたがって、子どもが自分で選ぶ機会を与えて見守ってあげることが必要となってきますよね。

養育者が子どもの成長に気がついていない、あるいは子どもの成長を認めて徐々に子離れをしていくことができずにいると、過干渉な関わりをしてしまいます。

② 完璧主義・白黒思考

「子育てとはこうあるべきだ」
「自分の子どもにはこうあって欲しい」
というような理想が強すぎると、理想から脱線してしまうことを認めることができずに、過剰に子どもをコントロールしてしまう結果になります。

また、「一度始めたことは最後までやり通さなくては意味がない」「ここで失敗したら二度と取り返しがつかなくなる」というような極端な考え方は、白か黒の窮屈な二択を子どもに強いてしまうことにもなります。

③ 自分と子どもの境界線が曖昧

自分と子どもは別の人格であるという認識が薄い場合、子どもに対して過剰に干渉してしまう可能性が高くなります。自分と子どもの境界線が曖昧な養育者は、子どもがあたかも自分の延長線かのように感じているため、子どもを思い通りにコントロールすることは当然のように錯覚してしまうのです。

④ 過干渉な養育者に育てられた

養育者自身も過干渉な養育者に育てられた場合、“コントロールをする” “コントロールをされる”という養育関係がモデルとして刷り込まれてしまっている可能性が高いため、自分の子どもに対しても過干渉な関わり方を持ってしまう傾向性が強くなります。

「自分は過干渉かも…」と感じた時にやるべき対策

過干渉な親

「もしかしたら自分は子供に対して過干渉かもしれない」と、自分の子育てスタイルに悩んでいる親御さんも多いのではないかと思います。「過干渉になってたらどうしよう?」「過干渉な親にはなりたくない!」と感じた時には、こんな風に対応してみてはどうでしょうか?

<相談>生活のルールは子どもと相談して決める

「宿題はしたの?」
「いつまでゲームしてるの?」
「今月のお小遣いはナシ!」
日々の生活の中で、自分の都合やタイミングで子どもを急かしてしまうことってありませんか?

養育者の価値観や都合などで一方的に決められたルールに従うだけだったり、ルールに従わなければ怒られたり罰を与えられるだけでは、子どもが自分で考えて行動する力の芽を摘んでしまいます。

生活上のルールを設けたり、ルールに従うことを教えるのはもちろん必要ですが、養育者が一方的にルールを決めるのではなく、
「宿題はいつするのか」
「ゲームは一日にどれくらいするのか」

といったことを子どもと話し合って決めたうえで守らせていくことが大切であると言えます。

<決定権>子どもが自分のことを決める機会を与える

生活上のルールと同じように、日常生活の色々な面で子どもが自分のことを自分で決める機会を与えてあげましょう。

例えば「子どもには絶対英語を喋れるようになって欲しい」からと、子どもが嫌がる英会話教室へ通うことを強制するのではなく、子どもが
・どんなことに興味があるのか
・どんなことができるようになりたいと思っているのか

ということにも耳を傾けたり、それでも英語を習うメリットがあると思うのであれば、その理由を説明したうえで
・子ども自身はどう考えるのか
・どういう形だったら取り組めるのか

子どもの意見を引き出してそれをサポートしていこうとする姿勢が大切です。

<試行錯誤>失敗する機会も与える

子どもの意見や決断を黙って見守ることができずに、
「そんなんじゃダメ」
「上手くいくはずがない」
など頭ごなしに否定してしまったり、つい口や手を出してしまうことはありませんか?

子ども自身や周囲に危険が及んでしかうかもしれないような場合には養育者が介入する必要がありますが、危機的な状況以外でも逐一子どもをコントロールしてしまうなら注意が必要です。

子どもは試行錯誤をして失敗や成功をくり返しながら、新しい状況や困難な状況を乗り越える力を身に着けていきます。子どもがそういった経験を積み重ねる機会を奪ってしまわないように、時には子どもを見守ることを心がけましょう。

<解決力>子どもが自分で問題を解決できるようにサポートする

とはいえ子どもだけでは解決できないことや対応しきれないこともあります。子どもが行き詰まってしまったら、「だから言ったでしょ!」などと頭ごなしに否定せずに、子どもが何に悩んでいるのか何につまずいているのかに注意深く耳を傾けてあげましょう。

また、実際にサポートをする際には、養育者が子どもに代わって全てを解決してしまうのではなく、子どもが自分で問題を解決できるように導いてあげることが大切です。

子どもの話を聞きながら、どのような解決手段があるのか、その中で養育者が代わりにできることや子ども自身ができることなどの選択肢を提示し、子ども自身が解決のための道を選んでいけるようにすると、子どもにとっても学びの機会となります。

<親自身>子どもよりも自分のことに注目する

過干渉は過度な関心が子どもに向かっている状態です。子どもに関心を持つことはもちろん大切ですが、子どものことだけではなく自分自身の時間や趣味にも目を向けてみてはどうでしょうか?

まとめ

過干渉な親

親に比べると絶対的に人生経験が少ない子どもの行動や決断を黙って見守るには忍耐力が必要です。子どもが失敗しないように、道を踏み外さないようにという思いから、ついつい口や手が出てしまうこともあるでしょう。
けれど子どもの人生を切り開いていくのは子ども自身。新しい状況や困難な状況にも自分自身で立ち向かっていく力を育むためにも、失敗をしたり失敗から学ぶ機会を与えてあげることも親の大切な役割です。
「子どものために」という思いが高じて、子どもの人生の主役の座まで奪ってしまわないように気をつけたいものです。

(文:臨床心理士 井澤 多恵/うららか相談室、構成:マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

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