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2023年08月04日 23:31 更新

誘惑を振り切って帰った夫、妻と仲直りしようとしたが…まさかの展開【運命の人とレスになりました。大輔編vol.6】

最高の相性だと思って結婚した男女が、妊娠・出産を経て親になり、少しずつすれ違ってセックスレスに……これって、よくあること? せつない夫婦の胸のうちを描きます。

妻の笑った顔、随分見てないな

自分の振る舞いを反省した美咲。大輔が帰って来ないのを心配し、電話をするも連絡がつかない。その頃大輔は……。

誘惑を振り切って帰った夫、妻と仲直りしようとしたが…まさかの展開【運命の人とレスになりました。大輔編vol.6】

営業課の飲み会で部下の中野亜美が酔いつぶれたため、自宅の近い俺がタクシーで送ることになったのだが……。
「私は、一ノ瀬先輩と相談相手どころか、そういう関係になってもいいな」
「そういう関係って……(笑)。中野さん酔いすぎ。俺、既婚者だから」
「既婚者だから何なんです? 私はOKですよ。うちに来ればいいじゃないですか……」

どういうわけか、28歳で独身の彼女に誘惑されている。
中野亜美が腕を絡ませてもたれかかってきた。
柔軟剤とも石鹸ともつかないような、あのいい香りがフワッとする……。
柔らかい感触に「女の子だな」とグラグラする。
あまり酔えなかったが、酒を飲んだせいもあって、心が揺らいでしまう……。

が。

「なんとか言ってくださいよー」
「俺、今、営業の神様にめっちゃ見られてる。“一ノ瀬大輔。部下とそういう関係になったら、二度と商品の売れない営業マンにしてやる”って」
「あ~あ~。ツレないなー……。先輩のそういう相手を傷つけないように気遣うところ、素敵ですよね~。あ~! 奥さんが羨ましい~!」
そうかな。
美咲とは、あの動物園の日から一度も、キスさえしていない。
美咲は幸せなんだろうか。

  「初めまして。森山美咲です」

  「大輔! 赤ちゃんできたよ!」

  「大輔、好きだよ」

美咲の笑った顔を、もう随分見ていないような気がする。

  「疲れてるのかも。今日は無理だよ」

  「こんなんじゃ2人目なんて無理! ていうか……したいと思わないよっ‼」

最近は、ずっとイライラしていて、俺なんか必要ないんじゃないかと思っている。
だから、冗談を言うことも誘うこともしなくなった。
最後にした日から、1ヵ月以上経っている。
俺たちの関係って……大丈夫なんだろうか。

「大丈夫ですよ」
「は?」
「私、ちゃんと一人で家に帰りますから! 私の誘いを断ったんだから、もちろんタクシー代もってくださいね?」
「あ、ああ……もちろん。ゆっくり休めよ」
「はあい! 早く新しい彼氏見つけよー! 一ノ瀬先輩みたいな」
「それってどういう……」
「なーんてウッソー! 私は一ノ瀬先輩にトークスキルを鍛えられた営業マンですから! 先輩が悩んでるんじゃないかと思って言ってみただけですぅ! じゃ」
不覚にも、部下に元気づけられてしまった。

俺も頑張ろう。
一人残されたタクシーで、美咲に連絡をしようとスマホを開いた。
あれ? 着信がある……。
車内の揺れで、気づかなかったのか。
「今、タクシーの中」とLINEを打ち、帰路についた。

なぜ……妻とできなかった

「なんで電話に出ないの? いつもすぐに電話とってくれるよね?」
家に着くなり、美咲が問い詰めてきた。
「ごめん、部下が飲みすぎて、家まで送ってたんだ。タクシーの中だったから気づかなったみたい」
「ふうん……すごく心配したんだからね」
あれ?
なんで蓮を置いて飲み会なんて行けるの? とイライラしてるかと思ったのに……本気で心配してたのか。
こんなしおらしい美咲を久しぶりに見た。
俺の身長より20㎝も低い美咲の華奢な肩を、思わずギュッと抱きしめたくなった。
やば。
すごくムラムラしてきた。
誘ってみようか?
でも……もう1ヵ月以上、触れていないのに。
美咲から何のアクションもないってことは、別にしたくないってことじゃないか?
ああ、酒が入ると理性がきかなくて困る。
そんな俺の本心を見透かしたかのように、美咲は、
「どうしたの?」
と猫みたいな目で俺を見てきた。
この上目遣い、すごく好きなんだよな。

「する?」
と聞いてみた。
どうせ断られるだろ。そう思っていたら、
「いいよ」
と、意外にもOKをもらった。

ソファーに美咲を押し倒す。
ぎこちない手つきで、美咲の背中を撫でた。
「しよう」の合図だったキス。懐かしい。
いい感じに美咲も熱っぽくなっているのがわかる。
ところが。
あれ? なんかおかしい。
以前ならもっとこう……突き動かされるような衝動を感じたはずなのに。

なぜか……できない。

「ごめん……酒が入ってるせいかも」
「うん……大丈夫だよ。こんなこともあるよ。今日はもう休もっか」
「ああ」

責められはしなかったけれど、明らかに美咲もショックを受けていた。
それもそのはず、俺と美咲が不発で終わることなど、蓮がまだ生まれたばかりの頃に泣いて中断したたった1日だけだからだ。
「酒を飲みすぎたせいでできない」ということも一度もなかった。
むしろ飲んでいるときのほうが、調子がいいくらいだったんだ。
なんでだ?
一人でしたのは数日前。
たまってないはずがない。


だけど……なぜか美咲を目の前にして勃たないんだ。

誘うのも怖い

翌日、もう一度確かめようと思った。
「今日も、どうかな? ほら、今日は酒飲んでないし?」
帰宅するなり、俺は美咲を後ろから抱きしめて言った。
昨夜の失敗は、きっと酒のせいだ。
シラフの状態で、濃厚な「しよう」のキス、美咲は潤んだ瞳で見つめてくる……なのに、なぜなんだ?
今日もできそうになかった。

「ごめん。ちょっと疲れてるのかも。本当にごめんな」
「ううん。気にしないで。……私のせいかもしれないし」
美咲の言いたいことはわかっている。
美咲がこの間、キレたこと。それによって関係がギクシャクしたことが不発の原因になっているんじゃないかってことだ。
「それはない(笑)。美咲は何も悪くないよ」

とは言ったものの、美咲に対する気持ちが少しずつ、本当に少しずつ変わってきたのは事実だ。妊娠してから。出産してから。子育てが始まって、仕事にも復帰して。いろんなポイントで、美咲と俺との間にズレが生まれてたんじゃないか。

翌日もそのまた翌日も、誘えなかった。
もしも失敗したら、美咲をもっと傷つけてしまうし、男としての自信もなくなる。
どうすればいい? わからない。
ただ……一つだけ確かなことがある。
「一ノ瀬先輩! これってどうやるんですか?」
「これ? えーとね……」
中野亜美の香水がフワッと香ると、ムズムズする感じがした。
どうやら美咲じゃない女性には、反応するってことだ。
一人で果てることもできる。なのに美咲に対してだけは反応しなかった。

もしかして、これって“妻だけED”というやつか……?

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