中学受験の過去問対策はどう進めればいい?|中学受験塾のトリセツ#21
6年生の夏が終わった今、そろそろ過去問を始める時期になりました。我が子の進め方は合っているのか、このままで大丈夫なのか、不安は尽きません。そこでお話を伺うのは、受験生の親でもあり、塾講師としても活躍する天海ハルカさん!「過去問の進め方や注意点」について話してもらいました。
基本は塾の指示に従って
過去問の取り扱いについては、塾から指示があることが多いです。
たとえばスケジュールや提出法など、塾からの指示があればそれに沿って進めるのが効率的です。
一般的に夏以降、9月~10月から始めるというスケジュールを立てる塾が多いでしょう。
焦って勝手に先に進めてしまうと、志望校合格に向けてどこが何点不足しているかという分析がしにくくなるだけでなく、点数が取れないことで気持ちが下がってしまうというデメリットあります。
何らかの事情で塾が指示する方法が合わないと感じる場合も、まずは相談することをおすすめしたいですね。
特に塾から指示がない場合は、「秋から」「夏休み明けから」を目安にして、自分でスケジュールを決めて進めていきましょう。
過去問で見るべきは傾向と対策
過去問はただ解けばいいというものではありません。
入試本番に生かせるよう、学校ごとの傾向と対策を意識し、のぞみたいですね。
傾向と対策は、過去問が収められた本に書かれていますが、子どもが自分で実感することが重要です。
たとえば「選択肢が多い」「図形問題が多い」「記述の文字数が少ない」など、問題の特徴がなんとなく感じられればそれだけで役に立ちます。
本人が気づくことが大切なので、問題を解き終わった子どもに、感想として塾のテストや模試との違いを聞いてみてください。
選択肢が多いと気がつけば、授業で選択問題の選び方をしっかり聞くようになりますし、図形問題が多いなら時間をとって苦手な部分を克服しようという気になれます。
入試問題への意識が高まることで、有意義な勉強ができるようになるでしょう。
第一志望の過去問は5回分を目安に
過去問の進め方にはいろいろな説があるので、これが絶対とはいいませんが、私なりに現実的かつ効果的だと思う方法を紹介します。
過去問は何年分やればいい?
過去問を進めるペースは「1週間に1回分を解いてみる」というのがざっくりしたイメージです。
学校によってはひとつの年度に「第1回・第2回」と複数回、試験が実施されます。
同じ1年分でも回数がさまざまなので、1年分ではなく1回分で考えると良いですね。
どのくらい解くかについては、第一志望校を5回分、併願校は3回分、滑り止め校は1回分が目安としてちょうどいいのではないでしょうか。
第一志望校をたくさん解くに越したことはありませんが、その代償として別の勉強をする時間が削られてしまうことを考えると、5回分が現実的なラインだと考えます。
併願校が多い場合などは少し回数を減らしてもよいかもしれません。ただし、併願校も滑り止め校も、確実に1回分はやってください。
大問の数や解答用紙の全体図など、見たことがあるのと見たことがないのとでは大きく違いますからね。
過去問は4科目まとめて解かないとダメ?
過去問のやり方について、できるなら入試本番を想定して1日で4科目まとめてやってほしいのですが、スケジュールによっては1日1科目ずつでもいいと思っています。
というのも、6年生は通塾日が多く、夏以降は土日両方通塾日という塾もあるんですよね。
通塾と過去問4科目を同日に行うのはかなりハードです。
塾のクラス分けテストや模試などで半日潰れてしまうこともあるため、落ち着いて4科目できる日はそう多くありません。
できる週は1日に4科目まとめて、難しそうなら1科目ずつ4日に分けてというように、無理のない柔軟なスケジュールを組むことが受験期間を上手に乗りきるコツです。
過去問と解く順番は、新しいものから? 古いものから?
過去問を進める順番は、第一志望校は古いほうから、併願校は新しいほうからを勧めています。
これは万が一、併願校の過去問対策が予定通りに終わらなかったときのための保険です。
過去問を進めていると、思ったより時間がかかってしまったり精神的に不安定で手が止まってしまったりすることがあります。
そんなときでも第一志望校は何とか5回分を終わらせたいもの。併願校は、1回分しかできなかったときのために、もっとも重要な直近の過去問から始めると安心ですね。
その他、過去問を解く際の注意点
過去問は解答用紙を原寸大にコピーし、制限時間をタイマーで計って取り組みます。
制限時間がきても終わらない場合は、別の色のペンに持ち替えて最後まで解いてください。
点数を出すのは時間内に解けたところだけですが、せっかくなのですべての問題を解き、知識の確認をしましょう。
過去問は合格者平均をとるのが目標
例外もありますが、だいたい各校6~7割が合格者平均になっていることが多いです。
多くの中学校が合格者平均や合格最低点などをホームページに載せていますし、過去問の教材でも分析されています。
見つからないときは塾に相談してみてくださいね。
初めて過去問を解くときは時間配分や形式に慣れてないため、30点程度しか取れないという子も少なくありません。
2回目以降は徐々に慣れて点数が上がっていくものなので、あまり気を落とさず進めてくださいね。
間違えた問題の直し作業(解き直しや確認)は、まずは正答率の高い問題のみ手を付ける……というスタイルで大丈夫です。
東京学参の過去問には「基本・重要・やや難」という難度の指標があります。
「やや難」は余裕があれば見るくらいで、「基本」と「重要」を中心に勉強すればいいですね。
指標がなければ、解答をざっと見て理解できるものだけしっかりと直していきます。
国語の難しい記述の場合は、半分取れるくらいにわかれば大丈夫です。
わかりそうだけど納得がいかない問題は、塾の先生に相談しましょう。
過去問については、「捨て問」「ここまでできれば十分」といわれることもあります。
その場合は、いわれた通り放っておいてOKです。
すべて完璧に覚えて備えたい気持ちはわかりますが、満点で合格する必要はありません。
無理して満点をとる勉強をするより「合格者平均をとる」ことにフォーカスしましょう。
できそうなら、見直しノートを作ってみてください。
見直しノートに書くのは、過去問の中で間違えた問題と正答です。
見直しノートを作ることで記憶として定着しやすくなるだけでなく、入試当日に持っていると気持ちが落ち着くという副次効果もあります。
自分が積み重ねた努力のノートを見れば、ぱっと復習ができ、自信にもつながりますよ。
過去問は塾の勉強と並行しよう
過去問は大事ですが、同じ問題が出題されるわけではありません。
出題傾向は必ずしも一定でなく、社会の一問一答問題が減って記述が増える、計算問題が減って図形問題が増えるなど、出題傾向が変わることも少なくないのです。
個人の志望校というピンポイントな勉強も大事ですが、過去問にこだわらない全体的な勉強も必要ですね。
進学塾では6年の冬には総合演習を増やして受験に備えるなど、入試に焦点を当てたカリキュラムを組んでいます。
志望校別、もしくは入試の傾向別のクラスを作るなど、志望校対策を重視した授業が組まれることも。
過去問でできるピンポイントな勉強を、塾のカリキュラムに従った全体的な勉強と並行するのが望ましいと考えます。
過去問で入試への気持ちを高めよう
過去問は入試の実践練習です。
しっかりスケジュールを立て、こつこつ取り組みたいものですね。
しかし、過去問だけに勉強時間の全てを振り分けるわけにもいきません。
塾の復習や課題をこなしつつ、適度な向き合い方をしていきましょう。
過去問に手を付けると、一層受験生としての意識が高まります。
過度なプレッシャーになっては困りますが、入試に向けて気持ちが高まるのは良いこと。
とくに受験生という自覚がない子にはいい刺激になるでしょう。
過去問を解くという作業を味方につけ、入試まで駆け抜けていってくださいね。