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2024年08月26日 16:29 更新

女性に多い「気象病」とは? 働くママでも自分でできる対処法<久手堅司先生インタビュー#1>

そういえば、私の体調は天気と連動しているかも……そんな方、いませんか?

Lazy dummy

お話をしてくださった方
久手堅 司 先生
(せたがや内科・神経内科クリニック院長)

『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社)の著者で、「自律神経失調症外来」「気象病・天気病外来」で5,000名を超える診察実績がある久手堅(くでけん)司先生に、女性に多い気象病についてうかがいました。

そもそも気象病って?

――今、増えている『気象病』とは、どんな病気なのでしょうか。

久手堅司先生(以下、久手堅) 正式な病名ではありませんが、気圧の変化によって心身の不調が現れる状態を「気象病」と呼んでいます。もっとも多くつらい症状は頭痛で、そのほか全身倦怠感や首肩こり、めまい、朝おきられない、低血圧などがよく見られます。吐き気やおう吐、耳がこもった感じ、神経痛が起きる人もいて、現れる症状やその程度は人それぞれです。

気象病かどうかは簡単にわかる?

――「気象病は女性に多い」と聞きますが、もし自分が気象病かも?と思ったら、まず何をすればいいでしょうか。

久手堅 下記のチェックリストの
①天候が悪いと体調が悪い
②体調の悪化で何となく天気の変化が分かる

の、どちらかひとつでも当てはまれば、ほぼ気象病といえるでしょう。

判定1 ①と②に該当する人は、高確率で気象病と考えて良いでしょう。どちらか1つでも当てはまると、気象病の可能性は約80%です。
判定2 ①②以外の項目は、該当する数が多いほど気象病になるリスクが高まります。特に③~⑪は気象病の方が訴える典型的な症状です。また、③~⑱のうち、5項目以上に当てはまると、気象病の不調が起きやすいです。ただし、該当する項目が多い場合でも、必ず気象病というわけではありません。
『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(久手堅司 著、誠文堂新光社)p.8より
マッサージ写真 撮影:もろだこずえ、モデル:杜野まこ

久手堅 この①②の項目に該当したら、「頭痛ーる」などのアプリを利用して、毎日の体調の記録をつけていただくことをおすすめします。これを1週間ほど続けていると、その中で天気が悪くなったりするし、気圧も下がってくるので、それと連動した気象病かどうかわかってくるでしょう。

――1週間くらいでわかるのですね。

久手堅 日本の天候では、1週間くらいで曇ったり雨が降ったりしますし、温度や湿度の差も出てくるので。すごく天気のいい週であればもう少し続けるべきかもしれませんが、ほぼ1週間でわかると思います。

気象病を予防するには?

――気象病の可能性があったとき、症状を予防するには、どんなことをすればいいでしょうか。

久手堅 『気象病ハンドブック』でも紹介した「耳のマッサージ」はいつでもできるのでおすすめです。デスクワーク中でもできるし、片方ずつでもできるので、まずこれをやっていただきたいです。

『気象病ハンドブック 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア』(久手堅司 著、誠文堂新光社)p.129より
マッサージ写真 撮影:もろだこずえ、モデル:杜野まこ

久手堅 次に「背筋をまっすぐ」にすること。人間は生活していく中で、どうしてもまっすぐ前を見るより下を見ることが多いので猫背になりやすいし、女性に多い反り腰にもつながります。ただ背筋を伸ばしたり、斜め上を向いたり、という動作をやっていただければ予防になります。

そして「パソコンやスマホの使用は控えめに」。これらを長時間使っているとその分不調が増えてしまいます。連続して使用するとしても1時間に1度は画面から目を離して、立ち上がったりするだけでもいいのでやってほしいですね。

久手堅 その次は、気づいたときに「軽い運動や体操をする」ことです。女性の自律神経系の不調で一番多いのは倦怠感。何かとだるいけど、貧血や甲状腺の検査をしても何も問題がないという。そのようなケースを実際に触診してみると、顎や肩、首、腰の周辺が背骨にそってガチガチになっています。これが全身のだるさのもとで、最終的に触っても感覚がなくなるんです。普通は痛みを感じるところで何も感じない。それが痛みを超えてだるさにつながっていることがあります。寝ているときでも寝返りをするように、体は時々動かすことが自然です。気づいたときに体を動かしておいた方が、楽になりやすいです。

あとは、可能であれば「睡眠と入浴をセットで考える」ことでしょうか。入浴している時間がない、という人もいるかもしれませんが、できればお湯につかって首まで温めて、深部体温を上げていただいて。そうしてお湯から出た後、20分くらいかけて深部体温が下がってくるので、そのタイミングで寝るといいとされています。子育て中で忙しいと難しいかもしれませんが、温めて寝ることで体はリセットされるので、無理のない範囲でやっていただけると。

――子育て中は睡眠やゆっくりお風呂に入ることは難しいですし、それを除いても全部やるのは難しいかもしれません。それでも上で教えていただいた順番の通りにやるといいんですね。

久手堅 そうですね。

自律神経と気象病の関係は?

――気象病には自律神経も関わっているのでしょうか?

久手堅 「自律神経が乱れているから気象病になる」という先生もいます。わたしとしては、「自律神経の乱れ=気象病」ではなく、自律神経はまず基本にあるもので、そこから人によって
「自律神経に不調があっても、天気の影響をまったく受けない人」
「自律神経の不調があって、天気の影響で悪化する人」
「天気の影響で不調が積み重なり、自律神経が乱れる人」

に分けられると考えています。

気象病の方の不調は、気圧・温度・湿度のいずれかに影響を受けているのですが、圧倒的に多いのは気圧です。温度が自律神経に関わってくるというのはわかりやすいですが、気圧はわかりにくいのではないでしょうか。気圧は体のどこで感じるかというと、耳の奥の内耳で感知していることがわかっています。そこから脳へ信号が伝わり、自律神経に伝えられる。このとき、自律神経は乱れていなかったのに、天気が悪くて不調になってそれが積み重なっていく人もいれば、もともと自律神経が乱れていて、そこに気圧の影響が加わってさらに悪くなる人もいるんです。結局、影響を受けやすい人が気象の影響を受けてしまうんですね。

確かに自律神経は気象病と関わってはいるけれど、自律神経系の不調と考えると、動悸や不眠、メンタル系の不調などいろいろなものを含むことになってきます。でもそんなに大きく捉える必要はなくて、自分の不調をミニマムにとらえられるなら、そちらの方が対処もしやすくなります。気象病で頭痛だけが問題になっている人は、頭痛が減ればいいわけです。

――症状にスポットをあててピンポイントに対応していくのがいいのですね。

次回は、自律神経のセルフケアについてうかがいます。

(解説:久手堅 司、取材・文:佐藤 華奈子)
※画像はイメージです

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