「幼稚園に宝石を持ってきているのですが…」平野レミさんが息子に理由を聞くと、返ってきたのは思わぬ答え |おいしい子育て #5
レミさんが大切にしていたアクセサリーを、息子が幼稚園に持って行ってしまった。その理由とは……?
主婦として料理を作り続けた経験を生かし、料理愛好家としてテレビ・雑誌などで活躍する平野レミさん。
料理愛好家、妻、母、とさまざまな顔を持つレミさんが、2人の息子さんの子育てと料理について綴ったエッセイ集『おいしい子育て』(ポプラ社)より一部をお届け。
今回は、卒園式を控えた次男のほっこりエピソード。レミさんが思わず「嬉しいような寂しいような……」複雑な感情になったワケとは?
いちばん大事なものをあげる人
もうすぐ卒園式という日、次男の幼稚園の先生から電話がありました。「あのー、息子さんがとっても高そうなアクセサリーを持ってきているのですが」と少し口ごもりながら言います。慌てて幼稚園にかけつけると、先生がイヤリングとネックレスを手に待っていました。両方とも、私が大事にしているものです。「これ、どうするつもりだったの?」ときくと、「Kちゃんにあげるの」と息子が答えました。Kちゃんは息子と同じクラスの、えくぼがかわいい女の子です。そうか、これは息子の初恋なんだ! お別れの前に、大好きな女の子にプレゼントしたかったんだ!
「でもね、これは、お母さんのいちばん大事なものなのよ」
「それじゃあ、ぼくのいちばん大事なものをお母さんにあげる」
「いちばん大事なものって、なに?」
「ラーメンマンのキンケシ」
ラーメンマンというのは、そのころ子どもに人気があったアニメの登場人物。キンケシとはその番組のキャラクターの小さな消しゴム人形のこと。子どもにとっては、お母さんのいちばん大事な宝石と、自分のいちばん大事な消しゴム人形は同じ価値だったんです。ただし、その消しゴム人形では女の子は喜ばないと思ったのでしょう。
子どもっぽい行動だけど、いちばん大事なものをあげたくなる人がいるなんて、息子を見直しました。
ついこのあいだまで、タオルのはじっこをしゃぶってないと寝られなかったのに、「火の用心」の声をこわがって、私のふとんにもぐりこんできたのに、もう「お母さんがいちばん」ではないんです。ちょっと嬉しいけど、ちょっとさびしい気分。
本当にいちばん大事なものを大事な人とプレゼントしあうような、素敵な大人になってほしいと願っています。
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この続きは、書籍でお楽しみください。
平野レミさん/料理愛好家、シャンソン歌手
料理愛好家、シャンソン歌手。主婦として料理を作り続けた経験を生かし、NHK「平野レミの早わざレシピ! 」などテレビや雑誌などを通じて数々のアイデア料理を発信。また、レミパンやエプロンなどのキッチングッズの開発も手がける。2022年、『おいしい子育て』(ポプラ社)で第9 回料理レシピ本大賞エッセイ賞受賞。エッセイに『家族の味』『エプロン手帖』(以上、ポプラ社)、『ド・レミの子守歌』( 中央公論新社)など、レシピ本に『平野レミのオールスターレシピ』( 主婦の友社)、『平野レミの自炊ごはん』(ダイヤモンド社)など多数。最新刊、自身の人生哲学が詰まった言葉集『私のまんまで生きてきた。』(ポプラ社)好評発売中!
X(旧Twitter):@Remi_Hirano
(写真:レミックス提供 構成:マイナビ子育て編集部)
※本記事は、『おいしい子育て』著:平野 レミ、イラスト:和田 誠/ポプラ社 より抜粋・再編集して作成しました。