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2025年12月27日 09:25 更新

[年末年始の防犯対策]帰省時、親と一緒に見直したい!今すぐできる「空き巣・強盗対策」4ステップ

トクリュウ型強盗の連続発生は世間に大きなショックを与え、住宅の防犯対策も進化を余儀なくされています。従来から多い空き巣だけでなく、トクリュウ型強盗対策にもなる防犯強化のためのチェックポイントを、専門家に取材・監修のうえで4つのステップにまとめました。自宅の防犯はもちろん、帰省時の実家の防犯強化にも役立ててくださいね。

トクリュウ型強盗にも空き巣にも有効な防犯対策が必要

画像提供:旭化成ホームズ ヘーベルハウス

2003年にピークを迎え、2022年には約1/12に激減していた住宅への侵入窃盗の認知件数。しかし、2023年には反転して増加しました。

2024年、郊外一戸建てを中心に「トクリュウ型強盗」が発生し、大きく報道されました。強盗の指示役が、闇バイトとして集めた実行犯に遠隔で指示して押し入らせ、金品のありかを聞き出すために暴行に及ぶ強盗です。

匿名性の高い通信手段を活用し、犯人同士のつながりも流動的であることから、「匿名・流動型」→「トクリュウ型」と呼ばれています。

トクリュウ型強盗は従来の防犯対策だけでは防げない!

住宅に侵入されて起こる犯罪で、従来から圧倒的に多いのは「空き巣」です。従って、これまでの防犯対策では、「空き巣」対策が重視されてきました。

しかし、2024年秋の「トクリュウ型強盗」の9割以上は、住民が在宅している夜間に発生しています。立地は、隣家がない一戸建て。寝ている状態のところに入って来られ、気づいたときには抵抗できない……というパターンが主流。

空き巣では、金銭の被害はあるものの、通常、住民本人の身に危険は及びません。しかし、「トクリュウ型強盗」は、住民の命がダイレクトに危険にさらされてしまいます。空き巣対策とは違う、命を守る対策が必要なのです。

空き巣にも強盗にも有効な強盗対策を

とはいえ、発生件数が多く、被害にあう可能性が高いのは空き巣のほう。空き巣も強盗も、どちらも対策する必要があります。

そこで、トクリュウ型強盗にも空き巣にも有効な防犯対策を、4つのステップに分けてまとめました。記事制作にあたっては、旭化成ホームズ株式会社 LONGLIFE総合研究所主任研究員であり、防犯設備士の山田恭司さんに取材し、監修を受けています。

ステップ① 狙われない
ステップ② 家の敷地に入らせない
ステップ③ 家の中に入らせない
ステップ④ 入られてしまった場合に備える


この防犯対策の最大のポイントは、「侵入するために時間がかかる家」をつくることです。

侵入しようとしても容易に侵入できず、侵入までにかかる時間を稼ぐことで、侵入犯があきらめる家を目指します。

①狙われない――隙のない外観&対応で、高い防犯意識を見せつける

侵入犯の心理としては、常に「入りやすい家」を狙っています。そのため、外観から隙を見せないことが、対策の最初のステップになります。家のまわりをぐるりとまわってチェックしてみましょう。

たとえば、留守時や就寝時はちゃんとシャッターを降ろしていますか? 格子がついているからといって、勝手口の通気窓を開けっ放しにしていませんか? 家の裏側にありがちな浴室の小さな窓も、きちんと閉めておきましょう。

見落としがちな、勝手口の格子越しの網戸。「人が入れるような場所じゃないし。大丈夫だろう」と侮るなかれ。網戸を切り窓を動かせば、勝手口の鍵に手が届いてしまうのだ。
浴室やトイレの小さな窓を開けることも、隙に繋がる。「こんなふうに室外機があったりものが置いてあると、それを足がかりに登って侵入してしまうことも」(山田さん)

隙がたくさんある家は、防犯意識の低い家だと見られ、侵入犯の侵入候補リストに入ってしまいます。防犯意識の高さをアピールしましょう。

夜になったら、寝る前にもうひと手間。一晩中、家の照明をつけておくことで「人の気配を演出する」のが防犯上はおすすめです。場所は道路側から見える2階の1室だけでOK。何日も留守にする場合は、タイマーなどで照明のオンオフができるグッズを活用するのも一案です。

画像提供:旭化成ホームズ ヘーベルハウス

もうひとつ、狙われないために意識すべきことがあります。

トクリュウ型強盗では、実際に強盗事件が発生する前に、不審な訪問があったケースが目立ちます。たとえば、水道業者やリフォーム業者などを装って、強盗の下見にやって来るのです。

このとき、決して家のなかに招き入れてはいけません。流されて犯罪者を家に入れてしまうと、さまざまな情報が指示役に伝わってしまい、そのまま押し入られる可能性もあるのです。

不審な訪問に対しては、絶対に玄関ドアを開けないことが大切。必ずインターホン越しに対応しましょう。インターホンは、できればカメラがついていて、モニターで訪問者の顔を確認できるものがベター。録画機能があれば、なお望ましいです。

インターホンを押すとモニターに写った映像が自動録画される(ライター宅)

なぜカメラや録画機能があるといいのかというと、犯人は顔が映ることを嫌うため。顔を撮られたと判断すれば、下見だけで強盗計画をあきらめてくれる確率が上がります。

防犯意識の高さをアピールするための本格的な対策としては、防犯カメラの設置を検討するのがいいでしょう。

指定した範囲で動きを感知すると、自動録画してアーカイブしてくれる防犯カメラの映像。夜間でも人物がはっきりわかる(ライター宅)

なお、防犯カメラは、動くものを捉える「モーションキャプチャー」という機能や、映像をスマホに飛ばしてくれる機能、カメラ越しに音声が出せるスピーカー機能など、高機能・多機能の商品がここ数年で急速に普及してきています。

設置場所としては、自宅前の道路から見える場所。広い敷地を持つ郊外の一戸建てなら、シャッターがついておらず防犯ガラスでもない、弱点となるような窓がついた面にも設置すると、なお効果的です。

山田さんに防犯カメラの選ぶ際のポイントをお聞きしました。最低500万画素程度は備わっている画質がよいもの、防水・防塵性能あり、夜間でも見えるものなど、多機能なものを選ぶと良いとのこと。

【チェックポイント】
□シャッターとすべての窓が閉まっているか[隙を見せない]
□インターホン対応を徹底しているか[家にあげない・接触しない]
□可能なら防犯カメラの設置も検討[防犯意識の高さをアピール]

②家の敷地に入らせない――自転車バリケードで経路をブロック、照明で敷地内を明るく

2つめのステップは「家の敷地に入らせない」ための対策。物理的・視覚的に、敷地内への侵入経路をブロックしましょう。再び家の外へ出て、今度は敷地の外からチェックしてみましょう。

お隣りの家との間に、狭い通路があったら、まずはここから着手しましょう。侵入犯が入っていきやすい経路だからです。

たとえば、水道メーターを見に来た業者や宅配業者のふりをしながら、誰もいない隙にすっと奥まで入っていけてしまう。そうさせないために、柵や仕切り戸を設置することで、進入禁止状態を作るのがおすすめです。

画像提供:旭化成ホームズ ヘーベルハウス

柵や仕切り戸がなければ、自転車をバリケード代わりに置くことも効果的。重要なのは、「ここから先に行ったら不自然だな」と思わせる状況を作ることです。

自転車でバリケードがあるだけでも、心理的に侵入しにくさが上がる

敷地内をよく見えるようにして、侵入犯が隠れる場所をなくすことも大切です。もし、敷地に雑草が生い茂っている場合は、草刈りをして、侵入リスクを減らしましょう。

しかし、きれいに草を刈り、植栽も剪定して、敷地内の見通しがクリアになったとしても、夜になると真っ暗になるようでは、対策としては不十分かも。夜間の侵入犯を目立たせるには、やはり照明の設置が効果大。

ここで注意したいのが、照明で明るくすべき場所。よくある威嚇目的の人感センサーつきのフラッシュライトは、侵入犯が隠れにくいようにという目的からは不適切なのです。

画像提供:旭化成ホームズ ヘーベルハウス

威嚇目的のフラッシュライトは、家から外側に向けて設置しがち。すると、敷地外から見ると逆光になり、敷地に侵入した犯人の姿は見えなくなってしまいます。

照明は、敷地の奥を照らすように設置しましょう。近隣や通行人から、家の中へと近づく侵入犯がよく見えることが重要です。

【チェックリスト】
□侵入経路を開けたまま放置していないか[奥に行かせない]
□敷地内の見通しはクリアか[みまもりを生かす]
□照明は敷地の奥を照らす方向に設置[侵入犯が見えるように]

③家の中に入らせない――戸締まりを習慣化して、開口部を強化する

3ステップめでやることは、開口部を徹底的に強化し、侵入するのに時間がかかる状況をつくること。

まず、窓の外にはシャッターです。ステップ1の狙われないための対策でも少し触れましたが、改めて、留守中や夜間はシャッターを閉めることを習慣化しましょう。

シャッターを開閉する手間が面倒なら、電動化の検討もアリ。既存のをシャッターを外して、電動式に替えることが可能

次に窓自体の防犯性能もアップしておきたいですね。防犯のためには、割れてもガラスが落ちず、穴が広がりにくい防犯ガラスがおすすめです。

ただし、防火規制の影響で、防犯ガラスを設置できない場合もあります。防犯ガラスに代えられないなら、今ある窓ガラスに防犯フィルムを張るだけでも効果はあります。ただし、フィルムは膨張率の違いにより熱割れすることがあるので、専門店に依頼してください。

後付けできる二重サッシ(防犯ガラス)を設置することでも、防犯対策を強化することができます。シンプルに鍵が2カ所になり、侵入犯にとっての障害が増えるメリットも。

なお、勘違いしている人も多いのですが、網入りの窓は防犯にはまったく役立ちません。火の熱でガラスが割れるとき、落ちてこないための防火ガラスであって、窓としての強度は通常のガラスとほぼ変わらないことに注意してください。

網が入った窓。たしかに「防火」と書かれている(ライター宅)

窓そのものの防犯性を上げるためにほかに有効な対策として、「サブロック」があります。

窓が防犯ガラスになっている場合、窓からの侵入者は、鍵付近に小さな穴を開け、そこから指や棒状のものを差し入れて鍵のレバーを動かすことで、窓を開けることが多いです。ですが、「サブロック」をかけているとレバーを動かすことができなくなり、鍵を壊すのにより時間がかかるのです。

ロックの手前の凸部がサブロック。写真はサブロックがかかっていない状態
サブロックが下にスライドし、鍵が二重にかかっている状態

また、高さのあるサッシには、下部に「サブロック」がついています。鍵を閉めるだけではなくサブロックすることで、やはり時間稼ぎになるのです。

高さのあるサッシには、下部にサブロックがついていることも。サブロックがかかっていない状態
サブロックがかかっている状態

また、「サブロック」がついていない場合は、後付けすることも可能です。

後付けできるサブロック。簡単に取り付けられ、ワンタッチでロックできる「突起タイプ」の補助錠

補助錠としては、突っ張り棒のような原理で窓の溝に差し込むタイプのものもありますが、力いっぱい窓を開けようとすると、開いてしまうことがあります。

また、窓と同様に、玄関や勝手口も「ダブルロック」を習慣化しましょう。2ヶ所カギをかけることで、侵入犯が開ける時間が2倍になり、侵入を試みる時間がどんどん長引く=諦める可能性が高くなる、からです。

ただし、ダブルロックをしていても、合鍵をつくられてしまうと意味がありません。警察庁の発表[*1]によると、集合住宅への侵入手段としては合鍵が20%あります。合鍵を作られて侵入されるケースは意外に多いのです。

実は、鍵ナンバーを把握されると、誰でも簡単に合鍵が作れてしまいます。鍵の番号は絶対に他人に見られないように気を付けてください。

画像提供:旭化成ホームズ ヘーベルハウス

【チェックリスト】
□留守中や夜間のシャッターやダブルロックは習慣になっているか[侵入をブロック]
□窓を防犯ガラスか二重サッシで強化できるか[窓からの侵入を困難に]
□窓のサブロックを使っているか・なければ補助錠を検討[窓からの侵入を困難に]
□鍵の番号を秘密にできているか[合鍵対策]

④侵入されてしまったときのために――いち早く通報できる環境をつくる

最後のステップとして、それでも入られてしまったとき、どうすればよいのか、ということを考えておきましょう。トクリュウ型強盗に侵入されれば、命の危険すらあるのです。

大事なのは、「少しでも早く侵入犯に気づき、少しでも早く警察に通報すること」でしょう。そのために、まずは夜、寝るときに、枕元にスマホを置いておく、といったことから始めましょう。

窓が割られたときにアラームが鳴る、防犯センサーの設置も検討の余地ありです。設置するのは、敷地奥など道路から見えにくい窓、シャッターがなく防犯ガラスでもない窓などを検討してください。

ただし、誤作動してしまうことがあり、近所迷惑になってしまったという例もあります。また、スイッチのオンオフを習慣化できなかったということも。

防犯センサーを自分ではうまく扱えない場合、お金はかかりますが、警備会社と契約するという選択肢もあります。

窓が割れるとセンサーが反応して自動的に警備会社に知らせがいく、同時に警察にも通報してくれるというサービスがあります。その上で、近隣の警備員をGPSで探し出し、現場に急行させてくれるケースも。お金はかかりますが、そこさえ目をつぶれば、手軽にできて安心感がある防犯対策といえますね。

あわせて、寝室に鍵をかけることも検討してください。夜間に侵入された場合でも寝室に入ってくるまでの時間稼ぎになります。

寝室のドアの多くは木製なので、鍵をつけたとしても安心とはいえず、数十秒あれば壊されてしまう可能性は高いです。けれど、その数十秒で110番通報ができれば、生きているうちに警察に救出される可能性は高まります。

【チェックリスト】
□防犯センサーの設置を検討[大きな音を鳴らす]
□警備会社との契約を検討[いちはやく通報&人が駆けつけるようにする]
□寝室に鍵かけることを検討[警察が到着するまで時間を稼ぐ]

自宅の親と一緒に見直せる!防犯チェックリスト

「①狙われない」から「②入られたときのために」までのチェックリストをまとめました。帰省時、実家の親と一緒に、ぜひ見直してみてくださいね。

ー狙われないー
□シャッターとすべての窓が閉まっているか[隙を見せない]
□インターホン対応を徹底しているか[家にあげない・接触しない]
□可能なら防犯カメラの設置も検討[防犯意識の高さをアピール]
ーー敷地に入らせないー
□侵入経路を開けたまま放置していないか[奥に行かせない]
□敷地内の見通しはクリアか[みまもりを生かす]
□照明は敷地の奥を照らす方向に設置[侵入犯が見えるように]
ーー家に入らせないー
□留守中や夜間のシャッターやダブルロックは習慣になっているか[侵入をブロック]
□窓を防犯ガラスか二重サッシで強化できるか[窓からの侵入を困難に2]
□窓のサブロックを使っているか・なければ補助錠を検討[窓からの侵入を困難に2]
□鍵の番号を秘密にできているか[合鍵対策]
ーー入られたときのためにー
□防犯センサーの設置を検討[大きな音を鳴らす]
□警備会社との契約を検討[いちはやく通報&人が駆けつけるようにする]
□寝室に鍵かけることを検討[警察が到着するまで時間を稼ぐ]

家の鍵をかけない親に、帰省時に伝えたいこと

自宅前の物や自転車が盗まれたり、自宅内に侵入されて窃盗被害に遭ったり……といった経験がないと、なかなか防犯に本腰を入れられない人もいるかもしれません。地域によっては「鍵を締めなくても大丈夫」という高齢者も多く、親元を離れて暮らす子世帯としては心配になることもありますよね。

最後に、山田さんにアドバイスをいただきました。

山田恭司さん「そういうときは、地域でどれくらい侵入窃盗被害が起きているのか、データや実例を一緒に見るのもおすすめです。地方だから少ない、ということは決してないんですよ。

都道府県別の戸建て侵入被害のリスク(侵入被害数/住宅在宅棟数)。こうしたデータを一緒に見ることで、侵入犯の存在を感じてもらう方法もある。画像提供:旭化成ホームズ ヘーベルハウス

警視庁の発表[*]によれば、住宅への侵入手段の第1位は「無締り」なんです。まずは鍵を確実に締めているか、外出時や就寝時はシャッターを閉めているか、通気のために開けている窓がないか。少なくともこれだけは確認して、習慣化を目指してほしいですね。そういった小さなことの積み重ねで、防犯意識を高めていただけたらと思います」

皆様が、いつもよりも、安心して新年が迎えられますように――。

(取材・文・撮影:有山千春、取材協力:東京都杉並区浜田山住宅展示場 ヘーベルハウス、編集:マイナビ子育て編集部)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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