家族で楽しめる「知る旅」のヒント。世界遺産検定20周年イベントで見えた学びと旅の新しい関係
「知る」ことで旅はもっと豊かになる——。2026年6月21日、東京国立近代美術館講堂で開かれた世界遺産検定20周年記念トークイベントに、絶景プロデューサーの詩歩さんらが登壇。旅と世界遺産の魅力を語った当日をレポートします。
世界遺産検定20周年記念トークイベント「旅と世界遺産」が開催
NPO法人世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局は、2026年6月21日に東京国立近代美術館講堂にて、世界遺産検定20周年記念トークイベント「旅と世界遺産 —“知る”ことで広がる旅の楽しみ—」(協賛:株式会社JTB)を開催しました。
メインゲストは、累計66万部を突破した書籍『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』の著者であり、世界遺産検定1級を持つ絶景プロデューサーの詩歩さん。後半のグループトークからは、お笑い芸人で世界遺産アカデミー認定講師の畠山検定さん、タレント・リポーターで同じく世界遺産アカデミー認定講師の廣岡まりあさん、世界遺産アカデミーの宮澤光主任研究員も登場しました。チケットは発売後まもなく完売し、会場には全国から「旅」と「世界遺産」を愛する約140名の来場者が集まりました。
「この瞬間にしか見られない絶景」の魅力
イベント前半では、絶景プロデューサーの詩歩さんによるトークセッション「旅と世界遺産」が行われました。「世界遺産を訪れて感じたこと」をテーマに、世界中の絶景を訪ねてきた詩歩さんが、ご自身で撮影した写真を投影しながらこれまでの旅の経験を惜しみなく披露。聞き手は、世界遺産検定事務局スタッフの吉田渓介さんが務めました。
トークは、人生初の海外旅行となったイタリア周遊の思い出からスタート。そこから、ブラジルの「レンソイス・マラニャンセス国立公園」、ナミビアの「ナミブ砂漠」、アイスランドの「ヴァトナヨークトル国立公園」など、特に印象深かった世界遺産へと話題が広がっていきました。
なかでも参加者の反応が特に大きかったのが、レンソイス・マラニャンセス国立公園の絶景です。どこまでも続く白砂の丘陵と、その間に現れるエメラルドグリーンの湖が織りなす光景は、まさに息をのむ美しさ。また、ナミブ砂漠のデッドフレイについては、1,000年以上前に枯れた木々が生み出す幻想的な風景や、「この瞬間にしか見られない絶景」の魅力が語られ、会場は次々と投影される絶景に引き込まれていきました。
続いて、詩歩さんが「ぜひ訪れてほしい」と感じたおすすめの世界遺産を紹介。トルコの「カッパドキア」では、高所恐怖症でありながら気球に挑戦したそうで、会場からは驚きの声も上がりました。「青の都」として有名なサマルカンドがあるウズベキスタンでは、日本では苦手だった羊肉のあまりのおいしさに感動したそう。旅に欠かせない現地のグルメの思い出も披露されました。ベトナムの「ホイアン」のおすすめカフェや撮影スポット、日本の「小笠原諸島」と、話題は尽きることなく続いていきます。
「絶景を美しく撮影するコツ」についても、絶景を追い続けてきた詩歩さんならではの視点で実践的なアドバイスがありました。おすすめの方法のひとつは、早朝に出かけること。観光地では人が写り込みがちですが、早朝は人が少ないうえに、斜めから入ってくる日光のおかげでフォトジェニックな一枚が撮れるそうです。詩歩さんが撮影したイタリアの「アルベロベッロのトゥルッリ」の写真では、特徴的なとんがり屋根の家々がより一層引き立って見えました。各地で出会った人々と交流したあたたかなエピソードも披露され、会場は終始和やかな雰囲気に包まれていました。
トークセッションの最後には、「世界遺産検定の学習によって生まれた変化」についてもお話がありました。詩歩さんはトルコの世界遺産「イスタンブルの歴史地区」にあるアヤ・ソフィアを例に挙げ、かつては見ることができたイコン画が、モスクとなった現在は隠されていることを説明。イスタンブルを最初に訪れたときにはこの建物自体にあまり注目しておらず、訪問もしなかったそう。けれども、検定の勉強を通じて背景や歴史を知ったことで、二度目のイスタンブルでは迷うことなく訪れ、得た知識を確かめるようにじっくり見学したといいます。“知る”ことが旅を豊かにし、新たな発見へとつながる——そんなメッセージに、参加者は何度もうなずきながら聞き入っていました。
グループトーク「世界遺産検定と世界遺産の20年」
イベント後半では、詩歩さんに加えて、お笑い芸人で世界遺産アカデミー認定講師の畠山検定さん、タレント・リポーターで同じく世界遺産アカデミー認定講師の廣岡まりあさん、そして世界遺産アカデミーの宮澤光主任研究員が登壇。「世界遺産検定と世界遺産の20年」をテーマに、2006年の第1回検定から現在までの歩みを振り返りつつ、30周年に向けたこの先の10年間の展望が語られました。
トークの序盤では、登壇者それぞれが世界遺産検定との出会いを振り返りました。詩歩さんは、観光地の表面的な魅力だけでなく、その背景にある歴史や文化を伝えたいという思いから学びを深め、世界遺産検定1級を取得されたとのこと。畠山検定さんは、初めは芸人仲間から誘われて一緒に受検し、結果的に自分のほうがハマってしまった、というエピソードを披露。廣岡さんは、幼少期の海外在住経験や、先輩の俳優・鈴木亮平さんへの憧れから挑戦したことをお話しされました。
続いては、2006年の第1回検定から現在までの歴史を振り返るコーナーへ。当時800件あまりだった世界遺産登録件数が、現在では1,200件を超えていることが紹介されると、会場からは驚きの声が上がりました。
畠山検定さんは、ご自身の芸人デビュー年と世界遺産検定のスタートが同じ2006年であること、そして第1回検定日がご自身の誕生日と重なっていたことを明かし、「運命的なものを感じる」と会場を盛り上げます。また、2010年に1級へ合格した際のエピソードとして、試験直前の猛勉強の日々を回想。そのなかで奈良・東大寺を訪れた際に偶然出会った大仏蛍の幻想的な光景が、今でも忘れられない思い出になっているそうです。
2021年には累計受検者数が30万人を突破。コロナ禍の影響で、世界遺産委員会は初の完全オンラインでの開催となりました。詩歩さんは、自由に旅ができない時期だからこそ、過去に訪れた世界遺産を思い返しながら学べたことが印象深かった、と振り返ります。一方、同年に1級に合格した廣岡さんは、お父さま・お母さまとともに家族3人で受検したエピソードを披露。週に一度の家族内での「世界遺産クイズ大会」を通じて、「学びを共有し、語り合うことで家族との共通点が増えた」というあたたかな思い出が語られました。
トークの終盤では、世界遺産検定や「世界遺産の学び」のこれからについても話題にのぼりました。宮澤主任研究員は「座学から行動へ!」がこの先の10年間の重要テーマだとして、今後予定しているイベントや取り組みを紹介。詩歩さんは「絶景には絶景たる理由がある。その背景にある素晴らしさを、絶景を入り口に伝えていきたい」と、今後の展望を語りました。
畠山検定さんは、野球選手時代のジャイアント馬場さんがかつて姫路城敷地内にあった球場で活躍したという豆知識を披露しつつ、ご自身の雑学が歴史や文化への興味の入口になればうれしい、と熱を込めて語ります。廣岡まりあさんは、ご自身が同行する凱旋門賞とパリの世界遺産を巡る旅行ツアーを紹介。世界遺産とスポーツに造詣が深い廣岡さんならではの、これからのご活躍が楽しみです。
また、グループトーク後には、今回のイベントに特別協賛した株式会社JTBより、地域住民や顧客と連携して行う世界遺産の保全活動など、同社が推進する「交流創造事業」についての紹介がありました。
「世界遺産を学ぶことが当たり前の世界にしたい」
イベントの締めくくりには、宮澤光主任研究員から次のようなメッセージが寄せられました。
「2006年のスタート当初、『世界遺産』は旅行や観光の対象として捉えられることが一般的でした。しかし20年にわたる世界遺産検定の取り組みを通じて、『世界遺産を学ぶ』という文化は着実に広がっています」
この数年、「世界遺産を学ぶことが当たり前の世界にしたい!」をスローガンに歩んできた世界遺産検定。宮澤主任研究員は「学んだことを行動につなげることの大切さ」に触れ、こう語りました。
「世界遺産を知ることは、過去を学ぶだけではなく、未来の行動を考えるきっかけにもなります。次の10年も、世界遺産検定の取り組みにご期待ください」(宮澤さん)
(マイナビ子育て編集部)
