【医師監修】陣痛の間隔がバラバラで不規則…これは前駆陣痛?本当の陣痛?
分娩につながる陣痛だと思ったら、妊娠後期につきものの前駆陣痛(ぜんくじんつう)だったということは珍しくありません。落ち着いて分娩の日を迎えるためにも、前駆陣痛と本当の陣痛の違いについて知っておきましょう。
基本的な陣痛の変化とお産の経過
陣痛とは、自分では止めることのできない繰り返し起こる子宮筋の収縮です。陣痛が起こることで、赤ちゃんはお腹の外に押し出されます。まずは陣痛について解説します。
分娩は始まってから終わるまでは、第1~3期に分けられます。
・第1期:<開口期>規則的な陣痛がきてから、子宮口が全開になるまで
・第2期:<娩出期>子宮口が全開になってから、産道を降りてきた赤ちゃんが出てくるまで
・第3期:<後産期>赤ちゃんが出てから、胎盤などが出てくるまで
第1〜2期では「痛みが起こる収縮」と「痛みが落ち着く休止」を規則的に繰り返すことになります。これが陣痛です。ではそれぞれの期の陣痛の変化を紹介します。
分娩第1期前半
分娩第1期は陣痛の始まりです。
はっきりとした境目があるわけではありませんが、分娩第1期は「潜伏期(緩徐期)」と「活動期」に分かれるため、潜伏期(緩徐期)のあたりを前半、活動期のあたりを後半として説明します。
分娩第1期は、1時間に6回以上、10分以内ごとに起こる規則的な陣痛から始まります。なお、陣痛間隔を把握するには以下のように「陣痛のピークからピークまで」もしくは「陣痛の始まりから次の陣痛の始まりまで」を測ります。
小鼻くらいの硬さだった子宮頸部(子宮の出口)は、分娩が始まると徐々に柔らかくなっていきます。
分娩第1期後半
分娩第1期後半では徐々に陣痛の痛みが強くなり、陣痛の時間は短くなっていきます。
このころになると、子宮頸部は唇ほどの硬さまで柔らかくなります。そのため赤ちゃんの頭はさらに下に降りていき、子宮口は急速に開いていきます。
楽な姿勢を取ったり、水をとったりしながら体力を維持しておくように心がけましょう。
分娩第2期
子宮口が全開大になり、いよいよ赤ちゃんがお腹から生まれる準備が整います。
このころの陣痛は1~2分おきに。赤ちゃんを押し出すために子宮が最も強く収縮するため、痛みも最大になります。
赤ちゃんが生まれると、陣痛はいったん落ち着きます。
分娩第3期
赤ちゃんが生まれ出ても、お腹の中には胎盤や卵膜、臍帯が残っています。分娩第3期には赤ちゃんが生まれた後に再び陣痛(後産期陣痛)が起きて、この胎盤や卵膜、臍帯を体外に出します。
この時の陣痛は、第2期ほどの強さや痛みはありません。
陣痛の間隔がバラバラなのは前駆陣痛の可能性
出産の時期が近づいてくると、分娩につながる陣痛ではなく、お腹の痛みや張りを感じることがあります。ここでは「陣痛かな?」と迷いがちな前駆陣痛について説明します。
前駆陣痛とは
「前駆陣痛」とは、分娩がまだ始まっていないタイミングで起こる不規則な子宮収縮です。下腹部に痛みや張りを感じたり、腰痛が起こったりすることもあります。
なお、ほとんどの前駆陣痛は様子を見るうちに落ち着いていって、なくなります。
前駆陣痛の痛みや間隔の特徴
前駆陣痛が陣痛はどんなことが違うのでしょうか。
まず、前駆陣痛は痛みや張りが不規則に起こりますが、陣痛は「●分おき」など規則的な痛みでだんだん周期が短くなります。また、前駆陣痛の場合は時間が経つと痛みや張りが弱くなっていきます。一方、陣痛の場合は張りや痛みが強くなり、分娩が進んでいきます。
なお、前駆陣痛は陣痛に比べて弱めですが、痛みや張りから前駆陣痛かどうかを見分けるのは難しいものです。結果的に分娩になれば陣痛と呼びます。医師が陣痛と判断して入院しても、陣痛が弱くなってしまえば前駆陣痛だったとして退院になります。プロであっても、正確には判断できないということです。
本当の陣痛? 前駆陣痛? と迷ったら
最初に痛みや張りを感じた時点では、すぐに陣痛か前駆陣痛かを見分けることは困難です。
ここでは、陣痛か前駆陣痛かを見分けるおおまかな目安を説明します。
まずは痛みが規則的かチェック
まずは落ち着いて、痛みや張りが「1時間に6回以上、または10分以内ごとに規則的に起こっているか」を確認しましょう。不規則に起こっているのであれば、前駆陣痛だと考えられます。
陣痛アプリを入れておくと便利
陣痛かどうかをチェックするお手伝いをしてくれるアプリもあります。
妊娠後期になったらスマートフォンに入れておくといいですね。
・「陣痛きたかも」カラダノート
・「陣痛タイマーbyぴよログ」ぴよログ
・「Babyプラス」日本産科婦人科学会
出産に向けた心の準備をする
本当の陣痛かどうかはすぐにはわからないので、痛みや張りを感じただけで慌てて入院する必要はありません。本当の陣痛の場合は、痛みが強くて眠れないくらいです。お産の直前には、しゃべることもできないくらいです。眠ってしまうくらいの痛みであれば、お産になることはありません。
とくに初めての出産の場合、陣痛が始まってから子宮口が全開になるまでには時間がかかることが多いです。そのためあまりにも早く入院し過ぎてしまうと、分娩まで時間がかかり、入院費用がかさんでしまうこともあるのです。一方で、強い痛みをがまんしすぎると、自宅でお産になってしまうこともあります。話すのが嫌になるくらいの強い痛みの場合は、出産予定の産院へ行きましょう。
痛みや張りを感じても、産院に行くのを迷うようなら、本当の陣痛である可能性は低いです。気長に陣痛が来る時を待ちましょう。入院準備品をもう一度見直しておくのもおすすめです。
まとめ
分娩が始まると、1時間に6回以上の規則的な痛みが起こります。陣痛は徐々に強くなり頻度も増していき、赤ちゃんをお腹の中から押し出す力となります。陣痛ではなく、陣痛間隔がバラバラで不規則な痛みが起こる場合には、分娩につながらない陣痛(前駆陣痛)だと考えられます。
お腹の張りや痛みを感じたら、まずは規則的に起こっているかどうか、出血量はどのくらいか、赤ちゃんは元気に動いているかをチェックしましょう。痛みが10分以内おきになるまでは、まだ入院を焦らなくても大丈夫。
体が出産の準備をしているのだと思って、入院準備を見直しながら楽しみにゆったりと過ごしてくださいね。
(文:大崎典子/監修:太田寛 先生)
※画像はイメージです
病気が見える vol.10 産科(メディックメディア)
NEWエッセンシャル 産科学・婦人科学 第3版(医歯薬出版株式会社)
産科麻酔の疑問Q&A60(中外医学社)
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます