鼻にスイカ、タイキック…陣痛の痛みは実際どのくらい? 和らげる方法は?<知っておきたい妊娠と出産>#2
「赤ちゃんに早く会いたい! でも出産が怖い」それは、多くの妊婦さんが感じるジレンマですよね。
今回は、妊娠・出産にまつわる
・陣痛が乗り切れるか心配……
・無痛分娩はどんなもの?
などの悩み・疑問について、産婦人科専門医の遠藤周一郎先生の著書(『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心』KADOKAWA刊)より解説をお届けします。
陣痛、本当に乗り切れる?
「鼻にスイカを突っ込む」「腰と腹に定期的にタイキック」「おなかを引き裂かれる」「いつまでたっても出ないウ●チ」などなど。さまざまなたとえで表現される陣痛ですが、かなり痛いのは事実のようです(私は一生経験することはないので、これだ! という言葉は見つかりませんが……)。なかには野獣のように吠えまくっていた妊婦さんもいます。今まで妊婦さんにビシビシ厳しかった女医さんですら、自分が出産した後はどんな妊婦さんにもやさしくなってしまうくらい大きな転機となるようです。
さて、ひと口に陣痛といっても、ずっと同じ痛みが続くわけではありません。最初の陣痛は、生理痛程度の痛みのことが多いですし、一過性におなかが張って、その後消失してしまう前駆陣痛というものもあります。
陣痛の定義は、一応「10分以内の定期的な子宮収縮か1時間に6回の子宮収縮が、胎児娩出まで続く」となっているのですが、陣痛と前駆陣痛を見分けるのは難しいため、弱い陣痛の間は一時様子を見るか、どうしても不安であれば病院に問い合わせてみましょう。
では、陣痛中はどのように過ごせばよいのか……。これはもう人それぞれ、千差万別です。寝ころがる人、階段を上り下りする人、四つんばいで耐える人、テニスボールやゴルフボールをお尻に押しつける人、アクティブチェアを利用する人……、どんな方法でもよいのでだんだんと陣痛が強くなってくるのを待ちましょう。
陣痛中のお役立ちグッズ
ただ、ひとつだけ注意点が。子宮の出口が全開大になるまでは、どんなにおなかが痛くなっても、なるべくいきまないこと。「いきみを逃す」なんて表現をしますが、子宮口が開ききる前にいきんでしまうと、赤ちゃんに余計なストレスがかかってしまったり、子宮の出口が傷つく原因になってしまいます。
とてもツラいでしょうが、なるべく分娩台まではいきみを逃すことを心がけましょう。どうしても陣痛を乗り切る自信がない場合などは無痛分娩という選択肢も。医師に相談してみてください。
遠藤先生の伝えたいこと>>>
✅ 陣痛と前駆陣痛の判別はつきにくいので、最初は様子を見るべし
✅ 陣痛中の過ごし方は自由だが、子宮口全開大まではなるべくいきみを逃す
分娩の最初の時から緊張しすぎるといざお産の際に、体力がなくなる!! ってことも多いので、体力を温存しつつ、陣痛を乗り切りましょう。(遠藤先生)
無痛(和痛)分娩という選択肢
医療と痛みは、切っても切れない仲で、手術の時も、怪我した時も、がんになって体中に痛みが生じる時も、さまざまな方法でいかに痛みを取りのぞくかを考えて医療が発展してきました。誰でも痛いのはイヤですもんね……。それは医師だって同じです。
さて、医療の世界では、「マギールの疼痛スコア」という有名な表があるのですが(下図)、初産婦さんのお産の痛みは、なんと指の切断レベル!
産科医は指の切断レベルの痛みをともなうイベントを、常に目の当たりにしているのか? と思うとゾッとしますが、現在、日本でのお産の多くは無麻酔での出産です。とは言え時代も変わり、日本でもようやく無痛分娩が浸透してきたように思います。しかしながら、使用する麻酔の方法や、いつから、どこまで麻酔薬を使うのかは施設によって千差万別というのが正直なところです。安全性を重視して、陣痛発来前に産院に入院し、日勤帯のみ最低限の麻酔薬を使用しますよという施設も多いのです。
それが故に、せっかく無痛分娩ができる遠い施設を選んで高いお金も払ったのに、想像以上に痛かったなんて話(苦情)はよく耳にします(特に初産の方に多かったり……)。個人的には無痛分娩という名称が誤解のもとのように思うのですが、最近では痛みを和らげる分娩=和痛分娩なんて呼び方をする施設も増えてきましたね。
無痛分娩の麻酔
無痛(和痛)分娩を希望する際は、理想と現実のすり合わせをしておくことが満足度につながると思います。その施設が、どんな方法で麻酔をかけるのか、麻酔科医が常時待機しているのか、痛みが強くなった際に追加の麻酔を使用してくれるのかなどの情報は、あらかじめ集めておきましょう。施設によっては、事前に麻酔に関する説明会を受けることを条件としているところもあります。これもお互いの意見をすり合わせる工夫のひとつですね。
もちろん本音を言えば、麻酔科医が常に疼痛管理をしてくれる24時間対応の施設を選びたいところですが、日本の産科取り扱い施設は小〜中規模であることが多く、そこまでの体制を整えるのはなかなか難しいのが現状なのです。
遠藤先生の伝えたいこと>>>
✅ 無痛分娩は理想と現実のすり合わせが大切
✅ 希望する施設の麻酔方針を事前にチェックしよう
1853年、イギリスのヴィクトリア女王がクロロホルムを使用して無痛分娩に成功して以来、世界的に浸透しました。ただ、これは、今考えるとかなり危ない方法でした。(遠藤先生)
『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』(遠藤周一郎 著、KADOKAWA刊)より一部抜粋・再編集