【医師監修】妊娠検査薬が陰性だと双子の可能性!? その他の原因や生理が来ない時の対処法
妊娠検査薬の判定は陰性なのに、生理が来ないので産婦人科へ。すると妊娠が判明したうえ、赤ちゃんは双子! そんな経験をした先輩ママも中にはいるようです。今回は、検査薬が陰性でも生理が来ないとき、双子の妊娠やそのほかの可能性について解説します。
双子だと妊娠検査薬は陰性になる?
妊娠すると、女性の体内では「hCG(ヒト絨毛性性ゴナドトロピン)」というホルモンが作られるようになります。hCGは分泌量が増えると尿の中にも排出されるようになるため、それを検出することで妊娠しているかどうかがわかるのが妊娠検査薬です。
その可能性もある!
市販されている妊娠検査薬は、妊娠していて尿中にhCGが一定以上含まれていれば、「99%以上の高確率で陽性」になります。
ただ、尿中にhCGが含まれていても、何らかの原因で検査薬の判定が陰性となってしまうことがあります。その原因の一つとして可能性のあるのが、「双子などの多胎妊娠」です。
でも「陰性=双子妊娠」ではない
双子などの多胎妊娠では、妊娠検査薬が陰性になる可能性はあります。ただし、妊娠検査薬が陰性になる原因はもちろんそれだけではありません。
妊娠検査薬の期限が切れていたり使用方法が間違っていたりした場合や、フライング検査など、いろいろな原因が考えられます。くわしくはこの記事の後半で解説します。
双子妊娠の確率
なお、双子を妊娠する可能性はどのくらいあるのでしょうか。
日本では、人口の変動を把握するために厚生労働省が「人口動態調査」を行っています。赤ちゃんの場合、出生届が提出された数や1回の出産でお母さんが何人の赤ちゃんを産んだかなど、出産に関するさまざまな統計を取っています。
2000年~2019年の人口動態調査の結果を見ると、1年間に生まれる赤ちゃんの総数によって双子の赤ちゃんの数は多少違ってきますが、 双子が生まれる割合はほぼ毎年同じくらいの「約1%」です[*1]。つまり、100例の出産につき1例くらいの割合で、毎年双子が生まれていることがわかります。
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双子が生まれる確率について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
双子の場合、妊娠検査薬はどう反応する?
双子などの多胎妊娠では、妊娠しているのに妊娠検査薬で陰性となる可能性があるのはいったいなぜなのでしょうか。また他にも、妊娠検査薬の反応に何か特徴はあるのでしょうか。
双子だと妊娠しているのに陰性の可能性もある理由
通常の妊娠検査薬は、尿中のhCG濃度が「50IU/L(尿1L中にhCGが50IU)以上」あると、陽性の判定が出るようになっています。これよりhCG濃度が低いと陰性になります。一方で、hCGの分泌量がかなり多く濃度が高くなりすぎても、陰性となる可能性があります。
多くの妊娠検査薬の説明書にも、「生理開始予定日を過ぎても生理が始まらないのに妊娠検査薬の判定が陰性となる例」として、「妊娠によるhCGが非常に多く分泌した場合」「尿中hCGが多くなりすぎた場合」などという記述があります。
hCGの分泌量が多くなりすぎる状況はいくつか考えられますが、そのうちの1つが、「双子などの多胎妊娠」です。たとえば赤ちゃんが双子だと、hCGの分泌量は妊娠初期の終わりには1人を妊娠している場合の1.93倍も多かったという報告もあります[*2]。
通常より早く陽性反応が出ることも
hCGは受精卵が子宮に着床するとすぐに分泌され始めますが、最初は微量です。それが妊娠4週(生理予定日の週)ごろになるとかなり増え、尿にも出てくるようになります。妊娠5週になると、多くの場合、妊娠検査薬が反応するのに十分な量が尿に出てくるので、通常タイプの妊娠検査薬は「生理予定日の1週間後以降」の使用を勧めています。
ただ、双子などの多胎妊娠では、hCGの分泌量の増え方が1人を妊娠しているときに比べて早いペースになる可能性があります。そのため、フライング検査でも、hCG濃度がすでに50IU/Lに達していて陽性になることはあるでしょう。
普通に陽性となることも
hCGの分泌量や増加ペースは個人差が大きいので、赤ちゃんが双子でも妊娠検査薬陽性になることはもちろん多いです。
妊娠しているのに陰性になるケース
妊娠しているのに妊娠検査薬が陰性になるのは、双子など多胎妊娠のほかにも次のような原因が考えられます。
フライング検査だった
検査の時期が早すぎると、hCG濃度が薬剤の検知できる50IU/Lにまだ達していないため、妊娠しているのに陰性となってしまうことはよくあります。
一般的には、妊娠すると生理開始予定日(妊娠4週)ごろからhCGの分泌量が急激に増えていき、生理開始予定日の1週間後(妊娠5週)ごろになるとhCG濃度は50IU/Lを超えます。妊娠検査薬の使用推奨時期が「生理開始予定日の1週間後以降」となっているのは、こうした理由からなのですね。
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フライング検査について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
使い方が間違っていた
妊娠検査薬を正しく使用しなかったときにも、妊娠しているのに陰性と判定される可能性はあります。
保管方法が不適切だった
たとえば、使用期限が切れていたり、適切な保管状態でなかった検査薬を使った場合です。古い妊娠検査薬や、温度が極端に高いまたは低い場所に置いておいたり外箱や個包装の袋から出したままにしていた妊娠検査薬は、薬剤が変化・劣化してしまい、正しい判定が出なくなることがあるのです。
時間が経った尿を使った
採取した尿を時間が経ってから使うことも、陰性の判定が出る原因の1つになります。長時間放置しておいた尿は雑菌が繁殖するので、薬剤がhCGを正しく検知できなくなるからです。
また、検査薬によって尿にひたす時間(判定が出るまでの時間)に違いがあったり、「尿をかけた妊娠検査薬は水平にした状態で判定を待つ」など使い方に注意が必要な検査薬もあります。それらが守られていないことも、陰性になる原因となります。
妊娠検査薬で正確な判定結果を得るには、何より正しく使うことが大前提です。まずは、説明書をよく読みましょう。そのうえで、適切な場所に保管する、採尿後にできるだけ早く検査を行う、使い方の注意事項はしっかり守る、などのことが大切です。妊娠検査薬の正しい使い方については、以下の記事も参考にしてください。
胞状奇胎という病気の場合も
hCGの分泌量が多すぎるために陰性になるケースとして、双子などの多胎妊娠以外で考えられるものに「胞状奇胎」という病気もあります。
胞状奇胎とは異常妊娠の一種で、胎盤を作る絨毛細胞が異常に増えてしまい、水ぶくれ状に変化してぶどうの房のようになって子宮内に充満してしまいます。胞状奇胎になったときにも、hCGの分泌量が通常の妊娠時に比べてかなり多くなることがわかっています。
ただ、多胎妊娠のときと同じく、陰性=胞状奇胎というわけではありません。胞状奇胎は産婦人科でエコー検査などをしないと診断がつかないので、 陰性だったからといってむやみに心配しないでくださいね。
「陰性」だけど生理が来ないときはどうすれば良い?
検査の結果が陰性なのに、生理開始予定日が過ぎてもなかなか生理が来ないときは、次のような対処をすると良いでしょう。
1週間後に再検査
まずは、hCG濃度が検査薬の検知できる値に達していなかったことを疑い、「1週間後に再検査」をしてみましょう。排卵日はストレスなどで容易にずれるので、生理予定日の1週間後に検査したつもりでも、実は時期が早すぎた可能性もあります。
再検査で「陰性」なら婦人科へ
生理が来ないのに再検査でも陰性という場合、妊娠ではなく「続発性無月経」になっていることも考えられます。
続発性無月経とは、3ヶ月以上生理が来ない状態が続くことで、女性には決して珍しくない病気です。原因は、ストレスや過度なダイエットのほか、婦人科系をはじめとする病気など、さまざま考えられます。
いずれにしても、再検査の結果が陰性で生理が来ない状態が続いている場合は、あまり放っておかずに受診して医師に相談しましょう。
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生理不順について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
再検査で「陽性」なら産婦人科へ
妊娠検査薬はhCGを検知しないと陽性の判定が出ませんから、明らかに陽性とわかる判定線が出たなら、妊娠している可能性が高いです。陽性が出たらできるだけ早く産婦人科を受診して、超音波検査で妊娠していることを確認してもらいましょう。
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妊娠検査薬が陽性で初めて産婦人科に行く時期について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
まとめ
たしかに妊娠しているのに、何らかの原因で妊娠検査薬が陰性となることもあります。双子などの多胎妊娠でもそうなる可能性はあります。
ただ、生理が来ないのに陰性になることがあるのは、多胎妊娠の場合だけではありません。いくつかの原因が考えられますが、いずれにしてもそんなときにはまず、1週間後に再検査をしてみてください。市販の妊娠検査薬は、正しい使い方をすれば高い精度で妊娠の可能性がわかりますが、使い方が間違っていると実際とは異なる結果が出てしまうことも。
コツを押さえて上手に使用するとともに、陽性の時はもちろん、陰性でも生理が来ない場合は、医療機関を受診してよく調べてもらいましょう。
(文:村田弥生/監修:窪麻由美 先生)
※画像はイメージです
[*1]e-stat 統計で見る日本 人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生「単産-複産(複産の種類・出生-死産の組合せ)別にみた年次別分娩件数 」
[*2]日本産科婦人科学会「多胎妊娠中期の管理と注意点」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます