【医師監修】妊娠検査薬で陰性から陽性へ!陰性でも妊娠してた体験談と原因を解説
生理が遅れているので妊娠検査薬を使ったら、判定は陰性……。でも、再検査をしたら陽性反応に変わって妊娠していた! というケースもあるようです。今回は、検査薬の判定結果が陰性から陽性になる原因や、妊娠の可能性について解説します。
妊娠検査薬で陰性から陽性になることはあるの?
インターネットのブログやSNSなどでは、「妊娠検査薬で検査をしたら陰性だったのに、何日後かには陽性に変わった!」などという人をときどき見かけます。このように最初は「陰性」だった判定が、後から「陽性」に変わる可能性はあるのでしょうか。
可能性は「あり」
妊娠の初期には、妊娠を維持するために受精卵から「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンが分泌され、尿中にも出てくるようになります。このhCGを感知して、妊娠しているかどうかを判定するのが妊娠検査薬です。
妊娠検査薬はhCGにだけ反応するように作られていますが、のちほど解説するような原因があると、「最初は陰性」でも「後で陽性」になる可能性は十分あります。
妊娠検査薬の精度に問題?
日本で市販されている妊娠検査薬の精度は非常に高く、多くの製品で妊娠している場合には、99%以上の確率で陽性の反応が出ると言われています。ただし、この高い精度で正しい判定結果を得るには、検査薬の「注意事項を守って正しく使う」という大前提があります。
判定が陰性だと妊娠していない可能性が高いのですが、何らかの原因によっては、妊娠しているのに陰性となることもあるということです。次項では、そうなる可能性がある状況について解説します。
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妊娠検査薬の正しい使い方について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
妊娠検査薬で陰性から陽性になる原因
市販の妊娠検査薬の精度はかなり高いので、「陽性」の判定線が出た場合には高確率で妊娠していると考えられます。ただ、ときには妊娠しているのに「陰性」となることもあります。その場合に考えられる原因はおもに以下のようなものです。
(1)最初の検査が早すぎた
妊活中、フライング中のフライングなんですけど、排卵日あたりに性行為をしたら、その日から生理が来るまで何度も妊娠検査薬を使っていました。どうしても気持ちが落ち着かないときは朝夕で2回という日も。
陰性反応ばかりのまま生理予定日が近づいて胸も張り出したので、今月もリセットかーと思ってたら、検査でうすーいラインが!!
気が早いとは思いつつ旦那と密かにお祝いして、翌日改めて検査したら今度ははっきりと陽性のラインがでました。
妊娠検査薬も安くないので、たくさん使ってもったいないですが、あのころの精神状態を考えると仕方がなかったなと思います。
(38歳/IT情報系/会社員)
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
妊娠検査薬は、hCGの分泌量が増え、尿中にも一定以上出てくるようになってはじめて、薬剤が反応し正しい判定が出ます。
通常タイプの妊娠検査薬では、尿中hCGの濃度が「50IU/L(尿1L中にhCGが50IU)になると陽性の判定が出るようになっていますが、「検査の時期が早すぎる」とhCGの濃度がまだ50IU/Lに達していないために、妊娠しているのに陰性となってしまうことがあります。
妊娠している場合には、生理開始予定日(妊娠4週)ごろからhCGの分泌量は急激に増加してきます。そのため、一度は陰性でも数日後に再検査をしたときに、陽性となることはあります。
こうした心配があるので、一般的な妊娠検査薬は使用推奨時期を「生理開始予定日の1週間後以降」としています(早期妊娠検査薬では生理開始予定日当日から)。これより早くフライング検査をすると、まだhCGの分泌量が少なすぎて正しい判定が出ないことがあるのです。
また、「生理開始予定日の1週間後以降」に検査したと思っていても、生理不順だったり、体調やストレスなどで排卵がズレることは十分起こり得るので、それによって妊娠成立が遅れた場合にも同様のことは起こります。
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フライング検査について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
(2)尿中のホルモン濃度が低かった
妊娠検査薬を使う前に、たくさんの水分を飲んだ場合には尿が薄くなってしまいます。すると、尿中に含まれるhCG濃度も低くなるので、実際には妊娠していても薬剤が反応せずに陰性となったり、判定線が出ても薄くてわかりにくい、といった状態になることもあります。
(3)双子の妊娠が影響していた
一般的な妊娠検査薬のほとんどは、尿中のhCG濃度が50IU/Lより低いと正しい判定が出にくいのですが、「hCGの濃度が高すぎても」検査薬が正しく反応しなくなることがあります。その場合も、実際は妊娠しているのに陰性となることがあります。
妊娠検査薬の説明書をよく読むと、「生理開始予定日を過ぎても生理が来ないのに検査結果が陰性となる例」として、「妊娠によるhCGが非常に多く分泌した場合」「尿中hCGが多くなりすぎた場合」などと記載されています。
妊娠している場合でhCGがかなり多く分泌される原因のひとつに、「双子などの多胎妊娠」があります。
関連記事 ▶︎双子を授かる人の特徴とは?
(4)胞状奇胎などの異常が関係していた
hCGの分泌量は、「胞状奇胎」を起こしているときにも通常の妊娠時に比べて多くなります。胞状奇胎とは、胎盤を作る絨毛細胞が異常に増えてしまい、水ぶくれ状に変化してぶどうの房のようになり、子宮内に充満してしまう異常妊娠のことです。
異所性妊娠も関係あるの?
なお、「妊娠していても陰性になるのは、子宮外妊娠(異所性妊娠)の疑いがある」などとSNSやネットの掲示板などで言われることもあるようです。
異所性妊娠とは、受精卵が子宮内膜の適切な箇所以外に着床してしまった状態のことですが、この場合もhCGは分泌されるので、妊娠検査薬の判定は陽性となります。
ただ、異所性妊娠の場合、hCGの増加量が正常な妊娠に比べてゆっくりであったり、一度hCGが分泌されるようになったあとで減少していく人もいるようです[*1]。そのため、妊娠検査薬が反応する時期であっても、最初は陰性でのちほど陽性に変わる可能性もあります。
ただし、さきほど解説したように、正常妊娠でも単に検査時期が早すぎた場合などにこうしたことが起こる可能性はあるので、陰性のあと陽性になった=異所性妊娠ということではありません。
胞状奇胎も異所性妊娠も、受診して超音波検査を受けないと確かな診断はつきません。いずれも妊娠検査薬の判定結果だけではわからないので、妊娠検査薬で陽性が出たら放っておかずに受診することが大切です。
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陽性後の初診の時期について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
(5)妊娠検査薬が正しく使えていなかった
妊娠検査薬で正確な判定結果を得るには、何より「正しく使う」ことが第一ですから、まずは事前に説明書をしっかり読みましょう。
採尿しておいた尿を長時間経ってから使うと、正しい判定が出にくくなります。尿は長時間放置しておくと雑菌が繁殖してしまうので、採尿後はできるだけ早く検査をしましょう。
尿にひたす時間(判定が出るまでの時間)が製品によって多少異なったり、「尿をかけた妊娠検査薬は水平にした状態で判定を待つ」といった条件付きの場合もあります。
また、保管方法が不適切だった場合にも、正しい判定が出なくなってしまいます。温度が極端に高かったり低かったりする場所に検査薬を放置しておいたり、外箱や個包装の袋から出したままにしておいたりすると、薬剤が変化・劣化してしまうからです。
いずれにしても、説明書の注意事項は必ず守って使用してくださいね。
(6)妊娠検査薬の使用期限が切れていた
妊娠検査薬は、使用期限が切れていると薬剤が変化したり劣化している可能性があります。そのため、妊娠していても陰性となったり、薄い線が出るなど判断に迷うような結果が出る場合もあります。
一般的な妊娠検査薬の使用期限は、製品の外箱に記載されているか、個包装の場合は袋に記載されているでしょう。市販の妊娠検査薬の多くが、使用期限を「36ヶ月(3年)以内」としているのですが、中には「25ヶ月」「30ヶ月」などの製品もあります。
メーカーや製品ごとに多少の違いがあるので、必ず事前に確認し、使用期限内のものを使いましょう。
妊娠初期にみられる可能性がある症状
妊娠検査薬は正しい使い方をしていれば非常に高い精度で妊娠の可能性を判定できますが、さきほど解説したような要因がある場合は、実は妊娠しているのに陰性と判定されることもあります。ここでは、妊娠すると早い時期からみられることがある症状についても紹介しておきます。
吐き気が続く
妊娠しているとき、一番わかりやすい初期症状が「つわり」です。つわりでは、吐き気がある、ムカムカして気持ちが悪い、実際に吐いてしまう、唾液がたくさん出る……などの症状が見られます。
つわりの有無や程度は人によって違いますが、妊娠5〜6週から始まって、8~10週ごろにピークを迎え、12週過ぎるとだんだん軽くなっていくのが一般的です。
妊娠週数は最後にあった生理の開始日を起点に数えるので、妊娠検査薬の使用推奨時期である「生理開始予定日の1週間後」は、妊娠していれば妊娠5週ごろということになります。もし妊娠していたら、妊娠検査薬の使用時、すでにつわりが始まっている人もいるということです。
微熱がある
妊娠初期には、風邪と思われるような症状が見られることもよくあります。これは、体がだるくなったり、高温期が続くことで体が熱っぽく感じたりするためです。
妊娠15週ごろ(妊娠中期のはじめ)になると、体温は高温期から低温期に入るので、熱っぽさが抜けてだるさもなくなってくることが多いでしょう。
下腹部の痛みや、胸の張りなどがある
妊娠すると、どんどん大きくなっていく子宮への血流が増えて筋肉が伸び、子宮を支えているじん帯や広間膜という部分が引っ張られるために、下腹部に生理痛のような鈍い痛みを感じることがあります。
関連記事 ▶︎妊娠超初期は下腹部痛が起こる?
また妊娠により、女性ホルモンの分泌量が増えることで腸の機能が低下したり、大きくなっていく子宮が腸を圧迫するため、便秘気味になりやすいのです。そうしたことが原因で、下腹部痛が起こることもあります。
関連記事 ▶︎妊娠初期の便秘
妊娠するとプロゲステロン、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が増えますが、これらには乳房に作用して母乳をつくる「乳腺の小葉」を増殖させる作用や母乳を乳首に運ぶ「乳管」を増殖させる作用があります。そのため、胸が張ったり痛くなったりすることもあります。
関連記事 ▶︎胸の張りは妊娠超初期だから?
高温期が続いている
生理周期ごとに排卵が起こっている人では、妊娠していなければ基礎体温のグラフは排卵を境に低温期と高温期の二層にはっきりわかれます。生理周期が28日間の人の場合、生理が始まって排卵が起こるまでの約2週間は低温期で、排卵から約2週間は高温期となり、低温期より0.3~0.5℃[*2]くらい基礎体温の高い時期が続きます。
生理開始予定日を過ぎても生理が来ないうえ、高温期が17日以上続いているときには、妊娠している可能性が高くなります。自分の体調を把握して妊娠したときに早く気づくためにも、日ごろから基礎体温をつけておきましょう。
関連記事 ▶︎高温期が何日続けば妊娠の可能性?
なお、ここで紹介した「基礎体温の高温期が続く」以外の症状については、妊娠していないとき「PMS(月経前症候群)」が原因で起こる症状ともよく似ています。また、妊娠するとこうした症状が必ず現れるというわけでもありません。
これらの症状は参考程度に考えて、一度陰性が出たけどやはり生理が来ない場合は、数日後に再検査をしてみましょう。それで陽性が出たら受診します。再度陰性が出た場合も、生理が来ない状態が続いていたり、何か気になる症状があるなら、早めに受診して医師に相談することをおすすめします。
まとめ
実際は妊娠しているのに、妊娠検査薬の判定が陰性となることはあります。特に、検査薬を使うタイミングが早かったり、正しく使えていなかった場合などでは、一度は陰性が出たあと再検査で陽性に変わってもおかしくはありません。
妊娠検査薬の判定が陰性でも、生理が遅れているときには、数日たってから再検査をしてみましょう。その結果、陽性ならもちろんですが、陰性でも気になるときには早めに受診して、何か心配なところはないか、体の状態を確かめてもらいましょう。
(文:村田弥生/監修:直林奈月先生)
※画像はイメージです
[*1]First Trimester Pregnancy Emergencies: Recognition and Management, Emerg Med Pract. 2019 Jan 1;21(Suppl 1):1-2
[*2]厚生労働省 ヘルスケアラボ 基礎体温
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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