【医師監修】双子を授かる人の特徴とは?双子の確率とわかる時期
一度に2人を授かる双子(双生児)の妊娠はさまざまな面で、単胎妊娠の場合とは大きく異なります。今回は、双子の種類や妊娠できる確率、産み分け方法の有無など、双子の基礎知識を紹介します。
双子を妊娠するのはどんな人に多い?
一卵性の場合、自然妊娠で双子の確率を上げる素因は判明していません。
二卵性の双子では、
・遺伝
・妊娠年齢(30~40歳。とくに35歳以上)
・経産婦
・以前に二卵性の双子を妊娠したことがある
・身長・体重が平均より大きい
・生殖補助医療を受けている
・アフリカ系血統
といったことが報告されています。
しかしいずれも「二卵性の双子を妊娠した女性にこのような人が多かった」という傾向に過ぎず、双子を妊娠する方法はありません。
双子が生まれる確率はどのぐらい?
双子は100組に1組、一卵性は1000組に4組
直近の人口動態調査(2010年~2016年)によると、日本ではおよそ100組の出産に対して1組の双子が生まれています。
一卵性の双子が生まれる確率は1000組の出産に対して4組ほどです。一卵性では1つの受精卵が2つに分かれて双子になりますが、その原因はわかっていません。どのような人が一卵性の双子を妊娠しやすいのかといった傾向も不明です。
一方、二卵性の双子を妊娠するには、同時期に複数個の排卵が必要なので、排卵誘発剤の使用や体外受精といった生殖補助医療(不妊治療)は、双子も含めた多胎妊娠の発生率を高めることがわかっています。また二卵性ほど関連ははっきりしていないものの、一卵性の妊娠にも生殖補助医療が影響を与えているという報告もあります。日本では排卵誘発剤が保険適用になった1970年代後半から全分娩件数に対する双子分娩の割合が上昇しましたが、ここ10年ほどはほぼ横ばいになっています。
なお、膜性ごとの双胎妊娠の頻度は、2絨毛膜2羊膜双胎は 70~75%、1絨毛膜2羊膜双胎は25~30%、1絨毛膜1羊膜双胎は 1%以下となっています。
男女でそっくりな双子? 双子妊娠はハイリスク!?
2人以上の複数の赤ちゃんを同時に妊娠することを「多胎妊娠」といいます。多胎妊娠のほとんどは双胎妊娠、いわゆる「双子」です。ここでは、一卵性と二卵性の違いや双子妊娠のリスクについて解説します。
一卵性・二卵性|受精卵が一緒かどうか
双子には一卵性と二卵性があります。通常は1つの受精卵が1人の胎児になりますが、一卵性は1つの受精卵が偶然2つに分かれて、双子としてそれぞれに成長します。一卵性では2人が同じ遺伝子を持っているため、性別も血液型も一緒で、容姿などもそっくりになります。
一方、二卵性は、2組の別々の卵子と精子がそれぞれ受精してできた2つの受精卵が発育します。二卵性では2人の遺伝子は異なり、遺伝的には普通の兄弟姉妹の関係と変わりません。そのため、男の子と女の子の双子が生まれることもあるし、同性でも容姿などがあまり似ていないこともあります。
膜性|胎盤と羊膜の数は重要情報
一卵性と二卵性は遺伝子による分類ですが、妊娠中のリスク管理では、「膜」による分け方が重視されます。膜とは、胎児に臍帯(へその緒)を通して栄養を供給する「絨毛膜(胎盤)」と胎児を包む「羊膜」のこと。これらの膜の数によって、3つのタイプに分けることができます。
①2絨毛膜2羊膜双胎(DD双胎)
2人は別々の胎盤を持ち、双子間で血流が影響し合うことはほとんどありません。
胎児は、別々の羊膜で包まれたそれぞれの部屋で発育します。
②1絨毛膜2羊膜双胎(MD双胎)
2人で1つの胎盤を共有している状態です。胎児の血液は胎盤を通じて双子間を行き来しています。
胎児は1人ずつ羊膜に包まれ、独立した部屋で育ちます。
③1絨毛膜1羊膜双胎(MM双胎)
2人で1つの胎盤を共有し、血液は胎盤を通じて双子間を行き来しています。羊膜も1つだけで、1部屋の中で2人が発育します。
二卵性の双子は2個の受精卵から発生するので胎盤は2つ作られ、すべて①になります。一卵性は受精卵が2つに分かれる時期によって①②③のいずれかになりますが、③は極めて珍しく、双子妊娠の1%未満とされています。
合併症|双子の妊娠はリスクが大きい
双子の妊娠では1人のときよりも、赤ちゃん・ママ双方リスクがあり
・早産
・妊娠糖尿病
・妊娠高血圧症候群
・子宮内胎児発育遅延
・胎児形態異常
・子宮内胎児死亡
といったさまざまな合併症が起こりやすくなります。
また、1絨毛膜双胎(MD双胎、MM双胎)に特有のリスクとして、「双胎間輸血症候群」が知られています。1 絨毛膜双胎では1つの胎盤を2人で共有し血管がつながっているので、どちらかの胎児に血液が多く流れるなど循環血液量のバランスが崩れてしまうのです。
さらに1絨毛膜双胎の中でも1羊膜で両児を隔てる羊膜がない場合(MM双胎)には、へその緒が絡みつく臍帯相互巻絡(さいたいそうごけんらく)が起こりやすく、突然の胎児機能不全や死亡のリスクが高くなります。
双胎妊娠では、1人を妊娠するときよりも手厚い妊娠管理が不可欠ですが、膜性のタイプによってはさらに慎重な管理が必要になります。妊娠初期に超音波(エコー)検査をし、膜性を判断して、リスクに応じた適切な病院で妊婦健診を行うことが大事です。
双子を妊娠したらいつごろわかる?
1. 初期症状|つわりが強くなることも
双子を妊娠すると、つわりの症状が強く現れる傾向があるといわれています。ただし、つわりの現れ方には個人差があるので、双子の妊娠時特有の症状とはいえません。
2. 検査と診断|病院のエコーで確認
双子かどうかは、超音波(エコー)検査で確認します。1絨毛膜か2絨毛膜かによって妊娠中や分娩時のリスクが異なり、管理方法も違うため、膜性を確認する必要があります。
まず、妊娠初期に2つの胎囊が確認できれば 二絨毛膜です。それぞれの胎嚢の中に1人ずつの赤ちゃんが大きくなっていけば、2絨毛膜2羊膜双胎と診断されます。
胎囊が1つなら1絨毛膜であり、多くの場合はその中に赤ちゃんが1人だけ大きくなっていきます。これが双胎の場合には妊娠7週(月経予定日から3週間後)ごろに、2人の赤ちゃんが見えてきます。
胎芽や羊膜の数が確認して、赤ちゃんが別々の羊膜に包まれている1絨毛膜2羊膜双胎か、1つの羊膜の中に共存している1絨毛膜1羊膜双胎かどうかを判別します。妊娠10週を越えると、胎嚢同士あるいは羊膜同士がくっつき、わかりづらくなるので、その前に膜性を診断することが重要となります。
バニシング・ツインとは
超音波画像で双子の妊娠が確認できても、妊娠初期に1児だけ成長が止まってしまうことがあります。片方だけが成長して大きくなっていって、成長の止まった方は、そのうち見えなくなってしまうので「バニシング・ツイン(vanishing:消える、twin:双子)」と呼ばれ、10~15%に見られます。成長が止まったのが妊娠初期であれば、残った1児のほとんどは元気に発育し、出産を迎えることができます。
まとめ
妊娠や出産は当たり前のことと考えがちですが、実はさまざまなタイミングが積み重なった結果です。双子を妊娠するのはその中でも1%ほどです。双子は妊娠中や出産時のリスクが通常よりも大きく、妊娠初期の診断がとても大事です。月経が遅れたら市販の妊娠反応検査薬を使って妊娠しているかを確認してから、産科に行きましょう。現代では、以前に比べればずっと安全に出産することができるようになっています。ちゃんと病院に通って、無事に元気な子どもを産みましょう。
※画像はイメージです
「多胎育児支援ハンドブック」
改田沙代 他, コーホート法による多胎児出生率の検証, 南山大学2009
人口動態調査 人口動態統計(都道府県別にみた単産-複産(複産の種類)別分娩件数 )
大阪大学大学院医学系研究科附属ツインリサーチセンター「ふたごの確率」
産婦人科診療ガイドライン 産科編2017
国立成育医療研究センター 多胎妊娠外来
大場隆, 多胎妊娠の診断と管理(第68回日本産科婦人科学会学術講演会). 2016.
中井章人, 周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理(東京医学社). 2008.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます