【医師監修】妊娠初期の便秘に試したい! 4つの対策
妊婦さんに限らず、女性の体の悩みの上位にあげられることが多い便秘ですが、妊娠初期には普段以上にがんこな便秘に悩まされる人もいるようです。妊娠中、なぜ便通が悪くなるのでしょうか? 症状は初期だけでしょうか? 便秘について知っておきたい知識とケア法をまとめます。
妊娠初期に便秘しやすい理由
妊娠初期には次の3つの理由で便秘が起こりやすいと考えられています。
ホルモンの影響
妊娠によって分泌量が増えるホルモン(プロゲステロン)の影響で、全身の筋肉が緩みます。大腸の動きを司る大腸平滑筋も緩むため、水分を吸収して便を形成し、直腸へ送る腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下するので、便秘が起こりやすくなります。
つわりによる食生活の影響
つわりの時期(一般的には妊娠5〜6週ごろから、12〜16週ごろまで)には「吐き気」「おう吐」「食欲不振」などの消化器症状が出るため、普段のような食生活が困難になる人が多くなります。食べられる量が少なかったり、便のカサを増す食物繊維などが十分にとれないと便通は悪くなります。
大きくなる子宮の影響も
妊娠初期とはいえ、赤ちゃんの宿った子宮はどんどん大きくなっているので、それは便通にも影響します。非妊娠時には鶏卵大だった子宮は、妊娠3ヶ月(8〜11週)には手拳大になり、腸を圧迫することで便通に影響します。
妊娠の兆候はPMSと似ている!?
妊娠すると便秘のほか、イライラや肩こり、疲労感などを感じる人が多くみられ、こうした症状がPMS(月経前症候群)と似ていて、区別が付きにくいでしょう。
PMSの時期と妊娠初期は、ホルモンバランスの状態がよく似ています。プロゲステロンやエストロゲンがたくさん分泌されていて、その影響によって起こる症状も類似するわけです。
しかし、PMSの症状は月経開始前の3〜10日程度に限られますが、妊娠していた場合はホルモンの影響が出産まで続くことになります(一般的にプロゲステロンやエストロゲンの分泌は産後急激に低下し、約1週間すると非妊娠時の状態に戻ります)。
つまり、10日以上PMSのような不調が続き、月経が遅れているようなら妊娠の可能性も考えられます。
妊娠初期だけではない、妊婦の便秘
便秘は妊娠中期や後期も起こりやすいと考えておきましょう。大きくなった子宮が腸を圧迫するため、初期以上に動きの悪くなった腸内に便が滞留しやすくなります。
「腹痛で受診する人には必ず便通を確認しています。それだけ腹痛を訴えるほど重い便秘の妊婦さんは多いということです。 妊娠前から便秘がちだった人も『いつものこと』とは思わず、妊娠全期間にわたり自分の排便のリズムが順調か気にとどめ、便秘のときはがまんせず、主治医に相談して早めに治療しましょう」
妊娠初期の便秘対策4つ
食物繊維の摂取
排便リズムを整えるには、規則正しい食生活が欠かせず、便を形成するために便のカサを増す食物繊維が必要になります。とはいえ妊娠初期はつわりもあるので、無理なく、食べられるものを食べられるだけ食べる中で、すこし気をつけてみましょう。
野菜をとるならよく煮込んだ野菜スープなどが少量でも食物繊維を多くとれ、効率的です。
十分な水分摂取
妊娠すると体に蓄えられる水分量は増えます。普段と変わらない水分摂取を心がけ、水分代謝を低下させないようにしましょう。
「妊婦さんの中にはむくみや頻尿を気にして脱水気味の人が見られます。しかし脱水にならないように気をつけることが、便秘のほか、血栓症や尿路感染症などの予防のためにも大切です。意識して、十分な水分をとってください。もしもつわりなどで水分や食事を受け付けない場合は主治医に相談しましょう」
適度に体を動かす
適度な活動が腸の蠕動運動を促す刺激になります。つわりの時期には体と心の安静が必要ですから、無理せず楽しめる活動の中で、体を動かしましょう。
医師による処方薬など
便秘が続くときは産科で薬を処方してもらい、排便リズムをつくっていく相談をしましょう。受診のタイミングは「3日以上出ない」「がんばらないと出ない」「出ていてもすっきり出ない」ときと松峯先生は話します。
「妊婦さんに多い『痔』の予防のためにも早めに受診し、便秘の重症化を防ぎましょう」
まとめ
妊娠初期のつわりの時期には食欲不振になる場合が多く、そのうえ便秘が重なると、心身ともにつらい体調になってしまうかもしれません。セルフケアの工夫をすることも大切ですが、症状がつらいときは早めに主治医に相談し、排便リズムを整えて、健やかにお過ごしください。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
松峯寿美「やさしく知る産前・産後ケア 」高橋書店,2019.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます