
助産師解説!卒乳の仕方のポイントは?|時期・やり方・トラブル解決のコツ<体験談>
夜中たびたび起こされたり、おっぱいが痛くなったり……いろいろ大変な赤ちゃんの授乳ですが、成長とともに「卒乳」の時期も近づいてきます。でも、「やり方がわからない」「合っているか不安……」という人も多いのでは。今回は、始め方から具体的な方法、トラブル対処法まで、助産師の坂田先生に解説してもらいます。
卒乳は大変だった?

まずは、先輩ママに卒乳の時大変だったことと、自分なりに工夫した対処法を聞いてみました。
<体験談>うちの卒乳エピソード
※マイナビ子育て調べ 調査期間:2021年10月28日~2021年11月12日 調査人数:150人(21歳~40歳以上の女性)の回答より抜粋
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
後悔しない!卒乳時期の決め方


授乳は負担が大きいお世話ですが、いざ「これで終わり」となると、赤ちゃんの成長はうれしい反面、なんだか寂しい気持ちにもなるものです。
「もしかして早すぎた?」「もっとあげていてもよかったかも……」とあとで後悔しないためには、卒乳の時期はどうやって決めれば良いのでしょうか。
卒乳は焦らなくていい
そもそも卒乳は「〇歳までにしなければいけない」というものではありません。
昔は母子手帳の「1歳健診」「1歳6ヶ月健診」の箇所に「断乳の完了」について確認する欄がありました。そのため、1歳を過ぎても授乳している場合は断乳を指導されることが多かったようなのです。
ただ、現在では、1歳以降に母乳を続けていてもまったく問題はなく、むしろ赤ちゃんやママにさまざまなメリットがあると考えられています。

卒乳の時期に決まりはありません。
授乳が終わると、しんみり寂しい気持ちになることもありますが、またひとつ成長したお子様と授乳以外でのコミュニケーションの方法がもっと増えます。
これから卒乳を迎える方も、今は夜間の授乳が辛かったりすることもあると思いますが、期間限定の赤ちゃんとのコミュニケーションを味わってくださいね。
卒乳する赤ちゃんに必要なこと
卒乳するタイミングかどうか考えるとき大事なことは、「赤ちゃんが離乳食から十分に栄養を摂れているかどうか」です。
離乳食はだいたい生後5、6ヶ月から開始しますが、最初はまず「乳汁以外のものを飲み込む」「味や舌ざわりに慣れる」ことから始めます。回数も1日1回から。
そのあと半年~1年ほどかけて「食品を舌でつぶせる」ようになったり、「歯ぐきでつぶせる」ようになったりし、いろいろな食品をうまく食べられるようになっていきます。
なお、赤ちゃんが身体に必要な栄養の大部分を母乳やミルク以外の食品から摂れるようになるのは、個人差がありますが「1歳~1歳半くらい」と言われています[*1]。
育児用ミルクは0~12ヶ月が対象
なお、ミルクの場合は「育児用ミルク」の対象年齢も参考になるかもしれません。育児用ミルク(乳児用調製粉乳)は「母乳の代わりにできる」製品で、対象年齢は「生後0~12ヶ月」です。
離乳食にもだいぶ慣れている1歳ごろには、育児用ミルクはお役御免になることを想定して作られているのですね。
ちなみに、「フォローアップミルク」は「生後9ヶ月~3歳以降」が対象で、「母乳の代わりにはなりません」。
これは、離乳期以降に不足しがちな「たんぱく質」や「鉄」などの栄養素をバランスよく補うためのもので、離乳食が十分に食べられている子はとくに摂取しなくても問題ありません[*2]。
いつごろ卒乳している子が多いの?
「焦らなくていい」「個人差がある」と言われても、ほかの赤ちゃんはどのくらいの時期に卒乳しているのか気になりますよね。
1歳6ヶ月健診を受診した保護者348人に行ったあるアンケート調査では、「1歳6ヶ月時点で、すでに卒乳していた子は67.2%、まだ授乳中だった子は32.8%」だったと報告しています[*3]。なお、授乳中の子114人は、母乳83人、ミルク26人、母乳とミルクの混合5人という内訳でした。
やはり1歳半ごろまでに卒乳している子は多そうですが、そのころに必ず卒乳していなくてはいけないということではありません。
卒乳のやり方・進め方


時期の決め方のポイントがわかったら、具体的にどうやって進めていけば良いかも確認していきましょう。
自然に飲まなくなるのを待つ方法
赤ちゃんが自然に母乳を飲まなくなるまで授乳を続ける方法です。
「そんなことを言っていたら永遠に卒乳できないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、離乳食が始まると、赤ちゃんが母乳を求める回数はだんだん減ってきます。
また、自分で自由に動き回れるようになれば遊びが楽しく、つかみ食べできると離乳食もますます進むなど、成長とともにおっぱいへの興味は自然と薄れていくようです。
実際、さきほども紹介したアンケート調査では、「どのように卒乳したか」という質問では「自然に卒乳した」が57.4%で最多、「がまんさせた」の31.8%より多かったそうです。また、「卒乳した理由」で2番目に多かったのが「子供が欲しがらなくなった」(19.6%)でした[*3]。
計画的に徐々に減らす方法
母乳は赤ちゃんにとって大切なものですが、いろいろな理由でママがもう止めたいと強く思ったなら、それも立派な卒乳のきっかけです。そんなときの卒乳法が「計画的卒乳」です。
計画的卒乳のやり方
ポイントと注意点
・食間に空腹でねだられそうなときは、ねだられる前に月齢に合ったおやつをあげる
・絵本を読む・公園に行くなど、授乳以外に興味を持ちそうなことで遊んであげる
・お気に入りの授乳場所に誘われても行かない
・言葉である程度意思疎通できるようになったら、「待ってね」「少しにしようね」「ごはんを食べたらね」「そろそろおっぱいはやめようか」などの声掛けをする
「夜間だけ」など部分的に卒乳する方法
授乳の一部だけを止める方法です(部分的卒乳)。「ママの職場復帰で昼間の授乳はやめる」「睡眠を十分とるために夜間だけ授乳しない」などの場合があります。
この場合も「赤ちゃんが離乳食をしっかり食べられているか」は大切です。また、ほ乳瓶やストロー、コップなどを使って、のどが渇いたとき「母乳以外の水分が摂れるようになっている」必要もあります。
部分的卒乳のやり方
部分的卒乳前の授乳の回数が多かった場合は、乳房の状態によって、職場での搾乳が必要なこともある
・「夜間だけ授乳しない」
事前に赤ちゃんに声かけをして、夜間の授乳をやめることを伝えておく。夜間にお腹が空かないように、寝る前にたっぷり授乳をしておくと良い
ポイントと注意点
・職場復帰する際に、きついブラジャーを着けたり、疲労やストレス・睡眠不足などが重なると、乳汁うっ滞を起こしやすく、乳腺炎になることも
・胸が過度に張るようなら、適度な搾乳が必要
質問!おしえてようこ先生

Q 昼間は仕事でいないので諦めているようですが、夜はまだおっぱいおっぱいの日々です。
部分的に卒乳することでかえって執着しないでしょうか?

職場復帰をされて、日中の授乳をやめられたのですね。ママもお子様も頑張っていらっしゃいますね。
今は、ママから離れて、お子様も新しい環境に挑戦しているとき。お友達と遊んで、楽しい時間もあるけれど、疲れたり、不安になったり、ママに甘えて安心したくなるんだと思います。授乳を通して、ママの愛情を感じ、安心感を得ることで、お子様の情緒は安定します。
確かに、一時期は、おっぱいに執着して、授乳の回数が増えることもあるかもしれませんが、長期的に見れば、お子様の自立や心の安定につながるように思います!
急いでやめる方法(断乳)
ママの健康上の理由など、急いで母乳を止める必要があるときの方法です。
断乳のやり方
・乳房が強く張らない程度に搾乳する
初日~3日目まで <授乳回数が1日2回程度の場合> |
2日目の夜に軽く搾る程度 |
初日~3日目まで <授乳回数が1日7〜8回程度の場合> |
よりこまめな圧抜きが必要(ただし、あまりたびたび搾乳しすぎると母乳の分泌が減らなくなる) |
4日目~1週間後 | 張りを感じたときに搾る |
1週間後以降 | ママが辛さを感じなくなったら搾乳しないでOK |
ポイントと注意点
・おっぱいが張ったらあまり我慢せず、ひどくならないうちに対処する(乳腺炎に注意)
・助産院などでのおっぱいマッサージは受けなければうまく行かないというものではない。でも不安の解消やリラックスなどのために受けるのはOK
乳房が張る、ねだられる……よくあるトラブル対処法


それまで普通にあげていた母乳を急に卒業するとなると、ママ側・赤ちゃん側ともに困った事態になることもあります。
おっぱいケアのポイントは
卒乳でママがとくに気になるのが、「乳腺炎」にならないかということではないでしょうか。
断乳の項で解説したとおり、授乳を急にやめると乳汁はまだ作られ続けているので、胸が張ることがあります。これをほうっておくと、乳房が腫れ「痛み」や「しこり」「発赤」「熱感」などの症状がある乳腺炎になることもあります。
ただ、「胸が張る=乳腺炎になる」ということではなく、多くは適度な授乳・搾乳で避けられるものです。
卒乳時のおっぱいケアについて、くわしくは下記の記事を参照してください。
促さず・拒まず・気をそらす!
「計画的卒乳|ポイントと注意点」でも解説したとおり、おっぱい大好きな赤ちゃんがぐずって困る場合は、上手に気をそらしてあげることが大切です。
つかまり立ちや伝い歩きも上手になってくる1歳前後の赤ちゃん。どんどん動きもダイナミックになってくるこのころにおすすめの遊びを紹介しているので、下記の記事も参照してみてくださいね。
まとめ

ここでは「卒乳の仕方」について、時期の決め方から具体的な方法、トラブルへの対処法を助産師の坂田先生に解説してもらいました。
赤ちゃんから幼児へのステップとしてみんなが通る卒乳ですが、はじめてだと具体的にどうしたらよいのかとまどう人も多いはず。でも、後で振り返ったときに、ママ・赤ちゃんともにできれば幸せな記憶として残る経験にしたいものです。ここで解説した方法を参考に、わが子とママ自身にとって合う方法で焦らずに進めてくださいね。
(文:坂田陽子 先生/編集・構成:マイナビ子育て編集部)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省:授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)
[*2]日本乳業協会 「乳児用調整粉乳」と「フォローアップミルク」の違いは何ですか?
[*3]井出正道ら:「卒乳に関する保護者の意識調査」小児歯科学雑誌54(4): 462−469 2016
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます